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月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

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ようするに

今日はとってもいい天気だ。
いつも暗い場所にいるためか、眩しさをより感じる気がする。
最近涼しくなってきたため上着を持ってきたが、どうやら邪魔になってしまったようだ。
今は腕に掛けているが、どこかに置き去りにしたいぐらい邪魔だ。
職業柄、邪魔なものはすぐにでも切り捨てたくなるのが私の悪い癖。

「あ~、こっちこっち!」

私は声がした方へと顔を向ける。
瞳に映るのは、私を呼び出した友人が手を振って呼んでいる姿。
少し足早に、通り沿いにあるカフェのパラソルの下へと歩み寄った。

『お待たせ。待ちました?』
「んーん、大丈夫大丈夫。第一私が急に呼び出したんだから、気にしない気にしない」

私が椅子に腰掛けると、笑顔で女性店員が注文を取りに来る。
私はエスプレッソとケーキを注文し、去っていく店員の背中を見送ってから友人に視線を向ける。

『で?話しっていうのは何ですか?』

この友人とは昔からの付き合いだが、最近は全く会っていない。
まぁ、電話ではよく話す……おそらく、私の生存確認も含めてだと思うのだが。
昨日も電話がかかってきたのまではいつもと同じ。
しかし、会いたいと言ってきたのはいつもと違った。

「じ、実は……」
『実は?』

神妙な顔で口にしていたコーヒーカップを皿に戻す友人を見て、こちらも少しばかり緊張する。
ひょっとすると、依頼だろうか?

「実は、



私の彼が浮気してるかもしれないのよッ!!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

……は?
「だ・か・ら~!私の彼がね、浮気してるのかもしれないの!!この間―――――」


友人によると、2年間付き合っていた彼が、この間知らない女性と歩いているところをたまたま偶然うっかり見てしまったらしい。
何だそんなことかと溜息が出てしまう。
さっきまでの私のほのかな緊張を返してほしい。
よくよく考えれば、彼女が私に依頼してくるのはありえないことだ。
だって彼女は私が怪我をしたと知ると、いつも仕事を辞めるよう説得してくるんだから。

ここでようやく私のケーキとコーヒーがやってきた。
彼女の愚痴は止まらない。
まだ彼氏の愚痴をケーキをつつきながらも続けている。

嗚呼、気付かなかった私がバカなのか、とまたも溜息が出てくる。
今日は依頼は無かったから、昨日使った弾薬やら新しいナイフやらを見て回りたかったのに。
……あ、毒ももう少しでなくなりそうだったんだ。
まぁ、そういった専門店は1日中やってるし、私なら融通利くから何とかなるかな。
そんな物騒なことを考えながら、私はコーヒーを口に運んだ。

「―――――それで……って、ねえ、私の話聴いてる?」
『聴いてますよ。ようするに―――――』



殺してしまえばいいんでしょう?

(しょうがないんで、ここのケーキとコーヒー代+友達割引で報酬は―――)
(違う、違うから!!何でそうなるのよ!?)
(あの話の流れからすればそれしかないなと)
(私はただ、彼が本当に浮気してるか確かめて欲しいだけなの!!それに、そういう事を真顔で言わない!)
(いや、私は真面目に言ってるんですが。それに、私の職業は"殺し屋"です。そういう事は"探偵屋"にでも頼んでください)
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