忍者ブログ

月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

[1]  [2]  [3]  [4

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

似た者同士の邂逅

「ぅ……」
「痛……ッ」
『………』
「チ、クショー……」

 薄暗い路地裏。地に沈む男達と、それを無言で冷たく見下ろす人物が一人。唯一立っていたその人物は、ふいと踵を返し男に背を向けて路地を出る。そんな小さな背中に一人の男が吐き捨てた。

「キ、キョ……ウ……ッ!!」
PR

教科書カモフラージュ

無様にも、久方振りに学校で倒れ。
 その翌日は念のためにと過保護な姉的ポジションの奴に勝手に学校を休みにされ。
 さらに土日を挟んで。
 月曜日。

 つまりは、今日。

 日にちが経つに連れて行き辛さが増して、今ここにいる。
 まあ、行き辛いのはそれだけじゃない。どちらかと言うと、今日一日油断が許されないのはそっちが理由。
 気を引き締め、俺は校門を潜った。

完治したのに痛む傷痕

授業中。
事件は、起こった。




※チラッと血の表現が出てきます。




粉々バレンタインデー

バレンタイン。
 それはチョコレート会社の陰謀から始まり、その日は男女共にそわそわする。
 というのは昔の話か漫画の中の話。いや、昔のことなんて知らないけども、少なくとも俺のクラスにそんなそわそわという空気はない。

「何でそわそわしないんだろ?」
『貰えないことがはっきりしてるからだろ』
「酷ッ!!ちょ、僅かな希望砕くのやめてくんね!?」

 机に頬杖をついて後ろの席に座る嵐に意見を求めた。が、一蹴。溜息を吐きクラスを見渡すと、女子が女子同士チョコを渡している。
 家の学校は、割りと校則がゆるい。お菓子の持ち込みは禁止されているが、バレンタインぐらいはいいだろうということで、先生達は見て見ぬ振りをしている。
 お陰でクラスの雰囲気は、そわそわというかキャピキャピ?してる。

「友チョコってやつだろ?そのチョコのせいで、俺達男子がチョコを貰える機会は完全に逸したわけだ」
『さっき僅かな希望は俺が砕いたと言ってなかったか?』
「あ~、チョコが欲しい!チョコが欲しい!!チョコが欲しい!!!」
『何回言うんだ』
「大事なことなので3回言いました」

 愛情たっぷりのチョコは美味いんだろうな~。まあ、家に帰れば少なくとも母さんがくれるけどさ。毎年。市販のやつだけど。それでもやっぱり、女の子から欲しい……、健全な男子として。

「チョコ~」
『さっきからチョコチョコ五月蝿い奴だな~』
「そういう嵐だってもらってないだろ?」
『いらねェよ、興味ねェし。それに、渡す奴の方が今時珍しいんじゃねェの?知らねェけど』
「お前、幾つよ。そして相変わらずクール」

 それにしても、嵐にチョコか~。豚に真珠の組み合わせ並に似合うよな~。

『オイ、どういう意味だそれ。喧嘩売ってんのかァ?買うぞコラ』
「すみません、心の中を勝手に読まないでください。因みに、諺で言われる組み合わせと同じくらいお似合いの組み合わせだな~って意味デス。"嵐にチョコ"みたいな」
『わけわかんねェこと考えてんじゃねェよバカ』
「ハイ、スミマセンデシタ」

 ……モテそうだもんな~、むっちゃ口悪いけど。
 ……嵐にチョコか。そういや嵐って料理美味いよな~。嵐が作ったチョコか。美味いんだろうな~、うん。
 ………。

「嵐様僕にチョコをください~!!」
『はぁ?!ちょ、何だいきなり!離れろ!!』

 泣き付けば、嵐には顔面押さえ付けられるわ、周りからの視線が痛いわ、チョコもらえないわで踏んだり蹴ったり……。そんな視線を向けられるのは、お前らが嵐の料理の美味さを知らないからだぞ!!

「嵐料理めっちゃ上手いじゃん!めっちゃ美味いじゃん!チョコもどーせ美味いんだろ?もー嵐でいいから俺にくれよ~!ギブミーチョコ!」
『どーせって何だ、どーせって!俺でいいからって何だァ!チョコなんて市販の板チョコ溶かして固めてるだけなんだから、誰が作ろうが同じだろ?お前が作ったって台所の有様は酷いだろうが、味は普通に美味いだろうよ!』
「同じじゃないだろー!愛情の違いがあるだろー!俺が美味いの作れたとしても、自分に愛情なんて込められるわけないだろー!だったら嵐に作ってもらった方がいいじゃん!どうせむっちゃ凝った作り方するんだろ?なら普通のより美味いに決まってんじゃん!食ってみたいじゃん!」
『知るかー!気持ち悪いわお前はァ!!俺は男だッ!!』
「痛ーッ!!」

 脳天グーで殴られたー!

「気持ち悪いとか酷くない?!脳天殴るとか酷くない?!」
『落ち着いて普通に考えてみろ!俺ァ男だぞ!?愛情とか気持ち悪ィんだよ!』
「何が気持ち悪いだ!お友達にそんなこと言うなんて、お母さんそんな子に育てた覚えないわよ、嵐ちゃん!俺達の間で愛情と言えば友情だろうが!」
『いつそんな事決めたよ!初耳だわ!つうか、お前が母親なら俺ァグレる!』
「分かれや友達なら!半グレてるくせに!」
『半グレてるって何だ!お前となんてわかり合いたくないわ!!』
「そこまで言う?!」
「あ、あの……!」
『あぁ?!』「あぁ?!」

 声をかけられた方を勢いよく見れば、女子がビックリしたように肩を揺らして立っていた。

「あ、取り込み中ごめんなさい……?」
『ぁ?君は家庭科の授業で一緒の班だった――――――』
 のはし
「野橋さん、どったの?」
「あ、あの、夜凪くんに……これ……」
『え、俺……?』
「……ッ」

 コクリと頷いた野橋さん。差し出されたのは四方形の可愛らしいクローバー柄の緑と黄緑色の箱。

「これは……まさか……!」
「あの時、卵焼き作るの助けてくれたから……その、お礼、です」
『別にたいしたことはしていない』
「でも、夜凪くんのお陰で上手く出来たから……」
『……じゃあ、有り難く貰っとく。ありがとう』
「こ、こちらこそ……!」

 嵐にチョコを渡した野橋さんは、教室の端に走り去った。後ろでひっそりと見守っていた女子たちが、野橋さんを囲んでキャピキャピはしゃいでいる。
くっそ~

「この裏切り者めーッ!!」
『何が裏切りだ!』
「裏切りだろ!?チョコ欲しがってる親友の前でチョコ受け取るか~?!」
『くれたんだから受け取らなきゃ悪ィだろうが』
「だって~、だってさ~」

 俺は嵐の机に突っ伏した。
 もういいよ、何だよチクショー。いいよ、母さんがくれるからー。親父が会社で貰ってきたやつ貰うからー。別に……惨めな気分とか、そんなんないし~…………――――――

「ぅ……」
『泣くか、普通』
「うるへー。貰った奴に俺の気持ちがわかるかー」
『大袈裟だろ。礼で貰っただけじゃねェか』
「貰ったことに変わりねぇよ……ぅ」
『……ハァ。ったく、しょうがねェなァ……ほらよ』

 コトン。
 机と何かがぶつかる音に目を向ける。そこにはピンク色の箱が置かれていた。

「ん?へ、え、これは……!」
『お望みのチョコだ、多分』
「ら、嵐様ーッ!!」
『だー!泣き付くんじゃねェ!!』
                                   い ぼ
「さすがは嵐様!ただ単純に俺を地獄に叩き落とすだけじゃなくて、ちゃんと揖保の糸も用意して下さっていたんですね!」
『何でそうめんを地獄に垂らさにゃならんのだ。蜘蛛、蜘蛛の糸だ!それに、それは俺が用意したも
          しおん
のじゃねェ。こないだ詩夢から預かった』
「し、詩夢さんから!?」

 そう言われて改めて箱をよく見ると、小さなカードがリボンに挟まっている。カードを開くと、そこには綺麗な字が並んでいた。

「オイ見ろよ。夜凪の奴、秋木にチョコ渡してるぜ」
『………』
「やっぱ気になるんじゃねーの、こういうイベント」
『…………』
「好きだもんな~、"女子"はよ」
『だァれェがァ……女だァッ!!』

《海くんへ
 いつも嵐と仲良くしてくれて、ありがとう。ささやかですが、お礼です。これからも嵐をよろしくね。
詩夢》

「ぅわ、テメ、夜凪!!」
「いきなり何を……!」
『なァにがいきなりだ!喧嘩売ってきたのはテメェらだろーがよォ。高価買い取りしてやるから有り難く思いなァ!!』
「し、詩夢さん……!俺、大切にいただきます……!」

 詩夢さんがくれたチョコと手紙に感動していた俺は、嵐が喧嘩をおっぱじめていたことに気付かなかった。

『粉々にしたらァ!!』

Q.今年の抱負はなんですか?-study!編-

「はいは~い!!俺の抱負は、週一1ゲーム消化!!」

『……具体的には?』

「一つのゲームを一週間でクリアするか1周するかする!!」

『それって今までとやってること、変わらなくね?』

「いやいや~、ちょっとハードになってます。今まではクリアに期限は付けてなかったんだよ。ゲームは一日4,5時間だった」

新年早々ダメさが増してんじゃねェか

「新年早々毒を受けた!そういう嵐は?俺としては、もう少し吐く毒の量を減らすーとかだと嬉しいんだけど」

『俺の抱負は、毒は去年の3倍UP(海限定)』

「え、いきなり3倍?しかも何そのカッコ書き?そこいるの?なくちゃダメ?」

『俺は毒を吐いてるつもりはねェけど、誰かさんがいっつも言うから今年は意識してみようかと。まぁ、誰彼構わず毒吐くわけじゃないからカッコは俺としてはいらないが、当事者には分かりやすくしておいたほうがいいかと思って』

「わー、親切ー」

『だろ?』

「その親切ついでに、意識して毒を3割減に――――――」

するわけないだろ。新年早々ダメ抱負を掲げた男が何甘いとこ言ってんだ

「ですよね~……(即答デスカ)」

世の中ンなに甘くねェんだよ

「す、スミマセンデシタ……!」

わかったらバカやってないで、冬休み中にちゃんと宿題済ませとけや。俺に迷惑かけねェようになァ

「わかりました、ボス」

新年早々3倍になった毒を受けて、HPが限りなく0に近くなってしまった。
これって3倍?それ以上じゃね?
俺に嵐の毒は負えない、抱"負"だけに……心折れそう……。
……あ、抱負変えよう。
今年一年、毒に耐えられますように。
よし、これにしよう!これがいいや!うん!

最早抱負じゃねェよ





+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


やっぱりギャグは難しい!
もう少しギャグ漫画とか読もうかな?
嵐は毒を吐くというか、口が悪いだけになってしまった気が……;

HOME 次のページ


忍者ブログ [PR]
template by repe