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月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

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さようなら、

「どうしよう……どうしよう……」

 歩みを止めて後ろを見る。男がいる。今朝、教会に来た男がいる。男はこちらの視線に気が付いたのだろう。ニッコリと笑って手を振ている。引き攣った笑いを返し、バッと前を向き直す。歩みを再開しならがチラリと後ろを盗み見れば、男も何食わぬ顔で一定の距離を保ってついて来た。内心溜め息を吐きつつ手にした携帯に視線を落とす。

「どうしよう……」

 そのディスプレイが映すのは、一人のアドレス帳。

「……アリス」





※流血表現あり


*          *          *


 私の住む村は山奥にあり、都市からは離れた隔絶された村です。その村では、毎年ある儀式が行われます。それは今日、行われます。

「レオネ、時間だ」
「……はい」
「……とても綺麗だ」
「……ありがとう、お父さん」

 私は今日、神に捧げられる"生贄"になるのです。

 白いワンピースドレスに身を包み、顔にはベール。首には首輪。足には足枷。レオネと呼ばれた少女は立ち上がり、部屋から出た。そして父の後に続いて家を出る。そこには村の大人達が松明を手に集まっていた。合流した村人達は、レオネを囲み一本道の先にある森へと向かった。

 "生贄"とは名ばかりで、都心部へ出稼ぎに出る子どもを送り出す儀式を指します。そして閉鎖的なこの村から解き放たれるという意味で、足枷が付けられています。でも"生贄"は儀式の後、村に戻って来ることがないことから子ども達の間では、お金に困った親が子どもを売っているんだという噂もあります。
 それでも、その方がまだマシだったのに――――――。

 森へ向かう中、家の中にいる子ども達が窓から一行を見詰めている。レオネは俯いたまま、大人に囲まれたまま、子ども達の視線を集めたまま、夜の村に鎖を引きずる音を響かせていた。

 去年、私の親友が"生贄"に選ばれました。儀式が行われるのは夜。その前に私たち子どもはお別れを済ませなければなりません。儀式に参加できるのは20歳を越えた大人のみ。子ども達は儀式が行われる夜は一歩も外へ出てはいけないことになっています。それでも私は、親友を見送りたかったんです。だから私は大人達の、"生贄"の親友の後をこっそりついて行きました。
 それで、知ったのです。出稼ぎに行くというのも売られるというのも表向きの理由だったということを。

 森の中を誰ひとりとして一言も発することなく進む。進んでいくと、暗い緑の中に白と青が浮かび上がった。それは大きな湖とその中心に建つ神殿のような建造物だった。その神殿は大理石で出来ており、中央には子どもが寝れるぐらいの大きさの台が備え付けられている。そして、その台には拘束具が付いていた。そこに足を踏み入れると、湖と小さな孤島を繋いでいた橋が外された。

 辿り着いた先には大きな湖と神殿を思わせる建物がありました。そこに行くために湖には橋が架けられていましたが、みんなが渡りきると片付けてしまいました。孤島と化した神殿にあった寝台のような大きさの大理石でできた台。そこに親友は寝かせられ手足が動かないように台についていたベルトで拘束されました。その寝台を大人達が取り囲み、その内の二人が一歩前に出て親友が横になっている寝台に近付きました。それは、その前の年に"生贄"に選ばれた子の両親でした。その人達の手には――――――

「そこに横になりなさい」
「……はい」
「今から儀式の準備のために手足を拘束させてもらうから」
「……わかりました」

 レオネの足枷が外され台に横になると、今度は手足を寝台に拘束された。そして大人達全員が寝台を取り囲む。その中の一人の男が前に進みでて、もう一人女が遅れて前に進み出てレオネに近付いた。男の手には斧、女の手にはナイフが握られていた。

 その人達の手には、ナイフと拳銃が握られていました。そして、それらは親友に向けられました。それを見た親友は命乞いをしていましたが、そんなものはないかのように、ナイフは振り下ろされ引き金は引かれました。ナイフは何度も振り下ろされ、何発もの銃弾が打ち込まれました。天蓋や柱、寝台、寝台を伝った床、そして取り囲む人達を親友の血が赤く染めていきます。静かな森に男女の奇声と親友の悲鳴が森にこだましました。でも村からはかなり離れているから村にいる子ども達には聞こえないんだろうなと冷静な頭で思いました。私は今まで聞いたことがなかったから。それなのに、親友の悲鳴は聞こえなくなったのに、奇声とパンパンという破裂音とザクザクという刺す音は聞こえ続けました。
 そこから先は記憶がありません。気が付いたら家にいて、自分の部屋のベッドの上に座っていました。ただただ涙が流れました。そしてさっきまでいた神殿という名の地獄がフラッシュバックしました。みんな、笑っていたんです。笑って、止めることなく笑っていたんです。父も、隣のおじさんも、いつも優しい一人暮らしのおばあちゃんも、みんな、みんな。親友を殺した2人は笑っているのか怒っているのか泣いているのか、よくわからない顔をしていました。

 ――――――狂ってる。

 朝早い時間に父は帰ってきました。私は父に飛び付いて問い詰めました。最初は白を切っていましたが私が見たことを話すと、見てしまったのなら仕方がないと少しずつ話してくれました。
 "生贄"は、やっぱり"生贄"だったのです。
 何故始まったのか、いつから始められるようになったのかはわからない。しかし、父が幼い頃からこの儀式はあったそうで。クジで村の中から子どもを一人選び、"生贄"を決める。前の年に"生贄"として選ばれた子の親が、その年の"生贄"を好きな方法で神の下へ召す。ちなみにそのクジを引くのも、前の年の"生贄"の両親らしいです。そして、"生贄"が神に召されるのを村の大人全員で見守るのだそうです。そう話す父の口は歪んでいました。

「去年、俺達の娘はここで"生贄"になった。それから今日まで、ずっとどうやって次の"生贄"を神の下へと召すか考えていたんだ。君を引き当てた時は興奮したね。なんたって娘の親友だったんだからなぁ!」
「………」

――――――狂ってる。こんなの、

「"狂ってる"、か……」
「ああ。何も知らなかった子ども達にはそう見えるかもしれねーな。でもこれがこの村の伝統だ。この村の儀式だ。お前が召されれば娘も寂しくないはずだ。これで少しは浮かばれるはずだ。大人になって参加できなくて残念だったな」

 憎い憎い憎い……!!親友を殺した前"生贄"の両親が。止めることなく、歓喜さえしている村の人達が。この儀式を容認している村長が。そして、何もできずに見ていた自分が……どうしようもなく憎いんです。
 だからお願いです。
 どうか、みんなを――――――

「さ~てと。まずは腕を落としてやるよ」

 男は徐に斧を振り上げ、

「安心しろよ……腕が無くなってもすぐには死なないから……まあかな~り痛いだろうけどよォッ!!」

 勢いよく振り下ろそうとした。

 ――――――殺して。

「え?」

 瞬間、男の両腕がパックリ割れて血が噴き出した。

「あああああああああああああああ」

 何が起きたかわからなかった男は傷を確認すると斧を打ち捨てて絶叫した。傷は大きく深かった。傷口はパックリと割れ、骨がチラリと顔を覗かせていた。
 その場にいた誰もが何が起きたのか理解できない中、寝台のような大理石の上で拘束されていたはずのレオネは上体を起こして座っていた。手には鈍く光るナイフが握られていた。

「……オイ……"生贄"が"神具"を持っているぞ!!」
「何でだ!?持つことを許されているのは"神の使い"だけだぞ!」
「ねえ、どうして自由に動けているのよ!?」
「拘束具はどうした!」
「"神具"……ああ、ナイフのことですか。なるほど。"生贄"をなぶり殺しにするための道具だから"神具"なんですね。そして"神の使い"は"生贄"をなぶり殺しにする方たちのことですか。随分と悪趣味な儀式ですね。拘束具の方は下見に来た際、細工をしておきました」
「だ、誰だ貴様は!!」

 村人達がざわめく中、一人で納得しているレオネを父親が指を指して叫んだ。村人は何を言っているんだと父親を見た。

「何を言っているんですか、"お父さん"。あなたの娘、レオネですよ。あなたと一緒に家を出てきたじゃないですか」
「違う!貴様は誰だ!俺は貴様なんて知らない!」
「家から一緒に出て、ベールで顔が見えないにも拘わらず娘じゃないと疑うなんて……普通こう言うんじゃないですか?"何をしているんだ、どうしたんだ、レオネ"って。もしかして他に心当たりでもあるんですか?あなたの娘じゃない誰かに」
「~~~ッ!」
「まあ私はレオネさんじゃないんですけどね」

 そう言いながらベールを取ったレオネは短い黒い髪をしていた。ベールには先程までの赤茶色の長い髪が付いている。俯いて目に指先を持って行き、顔を上げたレオネの瞳は蒼色だった。父親が付き添ってレオネの家から出て来た娘はレオネだと思い込んでいた村人達は目を見開いて驚いた。

「レオネじゃない……?!」
「レオネじゃないぞ!」
「何でだ!?今年の"生贄"はあの子だったはずだ!」
「誰だ……誰なんだお前はぁ!」
『名乗る程の者ではありません。まあ一言で解りやすく言うと……死神でしょうか』
「お前えええええぇぇぇぇぇ」

 ナイフを持っていた女が両手でナイフを握り締め絶叫しながら突進してきた。寝台からヒラリと飛び、女の頭上を越えて背後に降り立った死神・アイリスは寝台に激突した女の背中から心臓をナイフで一突きにした。

「おおおおおおおおおお」

 腕を切られた男が再度、斧を手に取り振り上げた。

『家事場の馬鹿力ってやつですね』

 斧を振り上げて無防備な男の心臓を、抜き出した拳銃で撃ち抜いた。男の体が後ろに倒れ、斧がけたたましい音を発てて転がった。

「キャーーー」

 周りの人間は漸く状況を理解したらしい。逃げようと橋があった場所に殺到した。罵詈雑言が飛び交う中、外されていた橋が架けられた。人々が我先に渡ろうと押し合いを始めた最中。

『結構重いですね、コレ』

 アイリスは斧を拾い上げると、

『はっ』

 放り投げた。斧は放物線を描き橋の中央に着地し橋を破壊した。橋に殺到していた人々は壊れた橋を見、壊した人物を見、また壊れた橋を見た。

「…………」
『言ったじゃないですか、私は死神だって。ここから生きて逃げるなんて出来ると思ってるんですか?それに――――――』

 武器を手にした人々がアイリスを取り囲む。

『「殺し屋を素人が簡単に殺せるなんて思わないで下さいね』




『とは言いましたが…………もう、みなさんデタラメ過ぎです。でも単調で分かりやすかったですよ』

 アイリスの賛辞に誰も返事をすることはなかった。
 儀式に参列した人間は全員、地に伏していた。大理石は赤く染まっていて、最初からその色だったような錯覚をさせる。この小島を取り囲む湖にも人が浮き、透き通った水を赤が浸食している。泳いで逃げようとした人達の背中には全員穴が開いていた。

『さて』

 そんな赤く染まった世界の中、一人の男だけが腰を抜かして動けずにいた。

『後は貴方だけですね……村長さん』
「な、何なんだ……何なんだよお前は!!」
『先程も言いましたが、殺し屋です』
「何で……そんなモンがここに……ッ、ワシが見付けてきたのは、普通の……ッ」
『その方ならもう村を出られた頃だと思いますよ』
「誰が……誰が一体こんなことを……誰がお前を、お前なんかを寄越したぁ!!」
『まだ分かりませんか』

 一歩、男の方に踏み出した。

『儀式が行われるこの場所を知っていて』
「そんなの、この村に住む全員が知っている!」
『儀式の全貌を知っていて』
「そんなの、ここにいた人間全員じゃないか!!」
『貴方が身代わりを用意したことを知っていた人物』
「そんなの、ここにいた者たちと、後は――――――」

 アイリスは村長の目の前で立ち止まった。村長はゆっくりとアイリスを見上げた。驚愕の色に染まった瞳を見つめたまま、持っていたナイフを振り上げる。そして。

『後は、貴方の娘さんだけですね』

 ナイフを振り下ろした。

「エレナ……?」

 村長の額にナイフは深々と突き立てられた。



『ふー。素人とはいえあの人数、流石に骨が折れました』

 神殿の屋根の上、アイリスの頬を風が撫でた。ふと、視界の隅に何かが入った。茂る森に隠れるように人型の像あった。

『……今年の"生贄"は若くはありませんが、これだけいれば問題ありませんよね』

 屋根から跳躍し、湖のほとりに着地する。緑色の草が音を発てて潰れた。去っていくアイリスの背中を蔦が蔓延った人型の像だけが見詰めていた。

*          *          *


 村の入口の反対側、そこに神殿と村を繋ぐ入口がある。そこに落ち着きなく歩いている少女の姿があった。少女はアイリスの姿に気が付くと走り寄ってきた。が、近くでその様子を見ると瞬間的に立ち止まり一本足を引いた。

『レオネさん』
「ぁ……父に、連れてこられた、身代わりの人は無事逃がしました。それで……あの……村長は……みんなは……?」
『仕事は完遂しました』
「そう、ですか……」
『すみません、』
「え?」
『お風呂お借りできますか?これでは帰れませんので』

 アイリスは返り血で髪を汚し、着ていたドレスは赤が主色で白が斑にある服になっていた。

「あ……ええ。そう……です、よね……。どうぞ」
『ありがとうございます』
「………」

 エレナの家へ帰り、浴室に案内される。アイリスは礼を言い、持参した小振りのトランクの中から袋を出すと服を突っ込みシャワーを借りた。

『ふぅ……さて、どう出てきますか……』

 頭は避けてシャワーを浴びるアイリスの足元を赤味を帯びた水が流れた。
 体を洗い終わり、アイリスはシャワーを止めタオルで体を巻いた。ところで扉が勝手に開いた。そこには、

『……何を、されようとしてるんですか。エレナさん』
「あなたを、殺そうとしています……私」

 包丁を握りしめてたエレナが立っていた。

『理由をお聞かせ願えますか』
「……父を、殺されたからです。あなたに」
『それがご依頼だったはずですが』
「私は"村長"を殺して欲しかったんです。憎かったのは"村長"なんです!でも"父"には、死んでほしくなかった……!」
『それは無理な話です。だって貴女のお父様は――――――』
「わかっています!自分だって矛盾してるってことは……!でも、それでも……父は、本当は優しい人だったんです……。母が亡くなってから男手一つで育ててくれて……大切に、してくれて……私が"生贄"に選ばれた時だって、必死に身代わりを探して私を助けてくれようとして……」

 ポタリと、包丁を握る手に透明な雫が落ちた。

「どんなことしてても……私の、たった一人の……お父さんだったんです……ッ」
『…………』
「無茶苦茶なこと言っているっていうのは分かっています……!それでも……やっぱり、あなたのことが許せないから……」
『なるほど。……殺し屋にそういったものを向けるということの意味はわかりますね?』
「はい……だからこそ、少しでも成功する可能性が高い今を選んだんです」
『確かに。一番無防備になり、かつ何も身に纏っておらず武器を手にすることができない状況である入浴時を選んだのは才能があると思いますよ』
「ぅ、ああああああ!!」
『しかし、』

 包丁を前にアイリスに突進するエレナ。アイリスの右手が下から上へ、左から右へと2回走った。甲高い金属音を響かせ包丁が弾け飛び、エレナの喉から鮮血が噴き出した。

「ぁ」
『暗器術を心得ている可能性も考慮に入れた方がいいですよ』

 床に崩れ落ちたエレナの口は笑っていた。
 アイリスは床に血が落ちないよう拝借してきたシーツでエレナを包み、ベッドルームへと連れて行った。シーツをそのままベッドに広げエレナの体を横たえさせる。そしてエレナが握っていた包丁で首の傷をなぞるとエレナに包丁を握らせた。
 自殺したように見えるか確認した後、再びシャワーを浴びた。今度は頭からシャワーを浴びるアイリスの足元を赤と黒の水が流れていった。

*          *          *

「この度は助けていただき、ありがとうございました」
『いえ、私は何もしていません』

 アリスは小さなトランクを持って村から一番近い駅にいた。一緒に赤茶色の髪と瞳の少女もいる。

「でも、私は何も知らないまま殺されていたかもしれないんですから。まさかお祭りで行われる劇のお姫様役を頼まれてきたら、本当は"生贄"にされそうだったなんて……。このご時世にまだあるんですね、そういうの」
『閉鎖的な所ですから、そういうものが残りやすいんでしょう』
「そうかもしれないですね。……あの、私に真実を教えて逃げるように言ってくださった方は?」
『やり残したことがあるとかで、まだ村に残っています』
「そうですか……。もう一度お礼を言いたかったのですが……」
『私が伝えておきましょう』
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
『はい。それでは列車が来ますね。お気をつけて帰ってください』
「はい」

 少女が乗った列車を見送って、しばらくして反対方向へと進む列車がやってきた。
 そろそろ子ども達が起きる時間だろうか。今、あの村はどうなっているのだろうか。大人がいなくなり、いなくなるはずだった人間は家の中で死んでいる。まあ20歳に満たない子どもといっても、最高年齢は19歳。全く知恵も知識もない子どもじゃない。警察には一応連絡したし、閉鎖的な村だ。お互いが助け合って生きていくことには長けているだろう。
 列車へ乗り込もうとした瞬間、風が強く吹いてアリスの銀灰色の髪を揺らした。足を止め、村がある方へと視線をやる。ふと、最期に見た彼女の顔が頭を過ぎった。裁かせるのではなく命を持って償わせることを選び、生ではなく死を選んだ少女の笑顔。

『さようなら、』

神様


 列車に乗り、走り行く景色を眺めていると上着の中で何が震えた。それらをポケットから取り出す。それは黒と白の携帯だった。2つを見比べると、白い携帯の一角がチカチカと点滅している。それを見ただけで誰からの連絡か大体察しがついた。黒は仕事用。白はプライベート用で登録されているアドレスは3つ。その内、連絡率が高いのは1人のみ。
 黒い携帯は仕舞い、白い携帯を手に取り開けるとディスプレイにはシエナの名前と着信とメールを知らせるメッセージが表示された。しかしをそれ見てアリスは訝しんだ。

(着信が5件もあるのに、メッセージはなし……?)

 シエナはいつも電話をかけて出なかった場合、何かしらのメッセージを残している。しかし、今回は着信のみでメッセージは残されてはいない。しかも着信は全て、かけては直ぐに切ったようだ。嫌な予感を覚えつつ、2日前に来ていたメールを開いた。

《昨日アイリスのことが知りたいという人が訪ねてきました。アリスから言われた通り知らないって言ったんだけど、後をずっとついて来ます。放っておけば諦めると思ったんだけどダメみたいで……どうしよう……》

 本文を読み終わると、天を仰ぎながら溜め息を吐いた。
 この間の立て篭もり事件。あれから彼女に行き着いたとしても不思議じゃない。情報を得るために、それだけの情報を与えてしまった自覚はある。急いでいたとはいえ、あの男を使ったのはやはり間違いだった。
 天を仰いだまま、すぅと薄く目を開く。

『やはりさっさと片付けておくべきだったか』


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


この話は大分前に出来ていたんですが、次に上げる『特使課』を書いていたら
こちらに上げるのが遅くなってしまいました;

今回はアイリスに宛てられた依頼の手紙と現在状況を交互に書いたので、
分かりづらかったかもしれません。文才なくて、すみません(土下座)
そしてアイリスの存在を隠したくて、正体を明かす前までは『』ではなく「」を使いました。

前回から伏線を張って張って来ましたが、次の話で回収したいです。
……上手くできるかわかりませんが、頑張ります……。
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