月灯りの下
闇の世界に差し込む光を追い求めて
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God Downer
ぽーん
ボールをつくような、
ぽーん
時報のような、
ぽーん
時計の抜けた鐘のような、
ぽーん
そんな音が近付いてきて、ふと目を開けると、そこは夕暮れに染まる見知らぬ街だった。
ボールをつくような、
ぽーん
時報のような、
ぽーん
時計の抜けた鐘のような、
ぽーん
そんな音が近付いてきて、ふと目を開けると、そこは夕暮れに染まる見知らぬ街だった。
「………」
何度か目をしばたたかせ、辺りを見回してみても風景は変わらない。
「………」
学ランのポケットから携帯を取り出して見ると表示は圏外。見たところここは住宅街で、電波がないようには思えない。
「……チッ、油断した。リミッターかかってるのに何で――――――」
そう言いながら耳に手を持って行く。そこにはガラス玉が埋め込まれたピアスがある。それに触れて思い出した。
「あ、片方壊れたんだったわ」
反対の耳にも同じものが付いているが、ガラス玉は光っている。
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴ
暗くなった住宅街に電子音が鳴り響いた。携帯は相変わらず圏外。それを仕舞い、違うポケットからボタンのない携帯の液晶画面のみの機械――端末を取り出した。
画面をタッチすると電子音は止み、代わりに人の声がした。
『よかった、出た……大丈夫?無事かい?』
「ああ、問題ない。気が付いたら飛ばされてただけ」
『無事で何より。急に"隠される"から焦ったよ』
「リミッター壊れてるの忘れて気ィ抜いてた」
『いつ壊したのさ』
「今日。体育の授業でドッチボールが当たったんだ」
『まったく……気をつけなよ。世界に引き付けられ、また世界を引き寄せる力が強いんだからね、君は』
この世界は1つではなく、複数の世界が絡み合って存在している。
もしもの世界――パラレルワールド。
たまにその世界に迷い込んでしまう人間がいる。引き寄せられる人間も。そして何の前触れもなく突然消えて、何の前触れもなく戻って来る。
人はそれを"神隠し"と呼ぶ。
「取り敢えず、こっちのマップとそっちの位置情報送ってくれ。時差ボケしそうだ」
『今やってるからちょっと待ってて。危険な世界?』
「いや、人っ子一人いないし危険性はなさそうだけど、さっきから1日のサイクルが早い。来た時は夕方だったのに、もう朝だ」
地平線の向こうに太陽の光がゆっくり姿を現すのが確認できる。
『それは急いだ方がいいね。そっちの世界は太陽の公転速度が早い、もしくは地球の時点が早い世界なのかな』
「もしも太陽か地球の回転サイクルが狂ったら人間が生きていけないっていうのも頷ける」
『それは理由が違うけどね。……マップ出た。送るよ』
ピロリン
短い電子音の後に《マップ・位置情報確認、表示しますか》という機械音声が流れる。
「出せ」
《了解しました。表示します》
声に反応し、端末の上にホログラムとなって今いる世界の地図とさっきまでいた世界の地図が浮かび上がった。
『お互いの世界が一番近いのは、その道の先にある公園かな。そこからなら、こっちのこの空き地に出られる』
「りょーかい」
声に従ってそれぞれの地図の上を赤い点が点滅する。神隠しに遭った少年はその場所に向けて歩を進めた。
世界と世界は始終重なっているわけではない。太陽と月が極稀に重なり合うように、重なっている時間は限られているし場所も刻々と変化する。故に、世界を行き来するために必要なのはタイミング。
「……そっちに人は?」
『いないみたい。大丈夫、見られる心配はない……時間も時間だしね。迎えに行こうか?』
「ガキ扱いすんな」
『子どもだろ?それに出入口作るような繊細な作業苦手じゃん』
「つーか出口作るつもりないし」
少年は目的地である公園の地を踏んだ。公園は思ったよりも小さかった。ブランコに滑り台、鉄棒しかない。人は、もちろんいない。
『はい?』
「壊す」
『ちょ、そんな無理くり……!』
「どうせ勝手に隠されるほどエネルギー有り余ってんだ。ここで発散させといた方がいいだろ。人もいないんだし」
『まあ……うん。エネルギーの発散は、必要だよね……』
「んじゃ、けってー」
『へぁ?!ちょ、ちょっと待ってシ――――――!』
「もう遅いね」
少年はニヤリと嗤うと端末を宙へ投げた。
「コードSIO、リミッター解除。世界から離脱する」
《音声認識。コードSIO、リミッター――――――》
ピアスのガラス玉から光が消え、少年の周りを一陣の風が吹き抜けた。
《解除》
「んじゃあまー、一丁派手に」
肩幅に足を開き、片手を振り上げた。
「行きますかァ!!」
手刀で宙を十字に切り、手の平を広げて腕を突き出した。
「砕けろ!」
十字に切られた宙がピシピシと音を発て始め、そして
パァン
耐え兼ねた宙は砕け散りパラパラと見えない破片が降り注ぐ。先程はなかった大穴ができた。向こう側は夜のように暗い。
《リンク確認。リミッター稼動》
『あーあ、やっちゃった。……ま、しょうがないか』
少年は暗い世界に足を進めた。落ちてきた端末を手の平に収め、
しお
『おかえり、蒔生――――――』
大穴を潜った。
「――――――君の世界に」
ゆう
「ハッ、ただいま。優宇」
もしもの世界、パラレルワールド。
たまにその世界に迷い込んでしまう人間がいる。引き寄せられる人間も。そして何の前触れもなく突然消えて、何の前触れもなく戻って来る。
人はそれを"神隠し"と呼ぶ。
しかし、迷い込んでしまった人間に自ら戻って来る力はない。そんな人達を元の世界に戻す役目を担っているのが、世界に引き寄せられる力を持ち、世界を行き来することができる力を持つ者達――つまり彼等である。
「つーか何でいるんだよ。迎えはいらねーって言ったろ?」
「戻って来ることに対しての心配はまあしてないけど、中学生がこんな時間に出歩いてたら補導されるよ?」
「……お前、自分の格好見てから言えよ。ブレザー着た人間が来て意味あるか?」
「あ、うっかりしてた」
「この天然め。いい加減見た目年齢慣れろよ」
「あははー。ささ、中学生と見た目高校生が揃って補導される前に帰ろうか」
「って、その手にある物はなんだ」
「え?車のキーだけど?じゃなきゃこんなに早く来れるわけないじゃない」
「平然と言うな!!」
「まあまあ、捕まらなきゃいいんだよ。捕まらなきゃ」
「はぁ~。俺は知らねー」
「一緒に乗る時点で共犯だけどね~、相棒?」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
仕事中に思いつき、無性に書きたくなって勢いだけで挙げた短編でした。
珍しく本当に短く終わりました。
いつも携帯で打ってメールでパソコンに送って、清書して挙げているんですが、
携帯で打っている時点で平均10000字(のつもりが20000字行くことが多かったり;)なんですが、
この話は5000字いってません。
短編らしい短編を初めて書いたかもしれません。
内容が皆様に届いているか怪しいですが;
これが今年最後の小説モドキとなりました。
今年は全然話を書けませんでしたが、お付き合いいただき本当にありがとうございました。
来年もどうなるかわかりませんが、それでも少しずつは書いていきますので
その時はお付き合いいただければ幸いです。
本当にありがとうございました。
何度か目をしばたたかせ、辺りを見回してみても風景は変わらない。
「………」
学ランのポケットから携帯を取り出して見ると表示は圏外。見たところここは住宅街で、電波がないようには思えない。
「……チッ、油断した。リミッターかかってるのに何で――――――」
そう言いながら耳に手を持って行く。そこにはガラス玉が埋め込まれたピアスがある。それに触れて思い出した。
「あ、片方壊れたんだったわ」
反対の耳にも同じものが付いているが、ガラス玉は光っている。
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴ
暗くなった住宅街に電子音が鳴り響いた。携帯は相変わらず圏外。それを仕舞い、違うポケットからボタンのない携帯の液晶画面のみの機械――端末を取り出した。
画面をタッチすると電子音は止み、代わりに人の声がした。
『よかった、出た……大丈夫?無事かい?』
「ああ、問題ない。気が付いたら飛ばされてただけ」
『無事で何より。急に"隠される"から焦ったよ』
「リミッター壊れてるの忘れて気ィ抜いてた」
『いつ壊したのさ』
「今日。体育の授業でドッチボールが当たったんだ」
『まったく……気をつけなよ。世界に引き付けられ、また世界を引き寄せる力が強いんだからね、君は』
この世界は1つではなく、複数の世界が絡み合って存在している。
もしもの世界――パラレルワールド。
たまにその世界に迷い込んでしまう人間がいる。引き寄せられる人間も。そして何の前触れもなく突然消えて、何の前触れもなく戻って来る。
人はそれを"神隠し"と呼ぶ。
「取り敢えず、こっちのマップとそっちの位置情報送ってくれ。時差ボケしそうだ」
『今やってるからちょっと待ってて。危険な世界?』
「いや、人っ子一人いないし危険性はなさそうだけど、さっきから1日のサイクルが早い。来た時は夕方だったのに、もう朝だ」
地平線の向こうに太陽の光がゆっくり姿を現すのが確認できる。
『それは急いだ方がいいね。そっちの世界は太陽の公転速度が早い、もしくは地球の時点が早い世界なのかな』
「もしも太陽か地球の回転サイクルが狂ったら人間が生きていけないっていうのも頷ける」
『それは理由が違うけどね。……マップ出た。送るよ』
ピロリン
短い電子音の後に《マップ・位置情報確認、表示しますか》という機械音声が流れる。
「出せ」
《了解しました。表示します》
声に反応し、端末の上にホログラムとなって今いる世界の地図とさっきまでいた世界の地図が浮かび上がった。
『お互いの世界が一番近いのは、その道の先にある公園かな。そこからなら、こっちのこの空き地に出られる』
「りょーかい」
声に従ってそれぞれの地図の上を赤い点が点滅する。神隠しに遭った少年はその場所に向けて歩を進めた。
世界と世界は始終重なっているわけではない。太陽と月が極稀に重なり合うように、重なっている時間は限られているし場所も刻々と変化する。故に、世界を行き来するために必要なのはタイミング。
「……そっちに人は?」
『いないみたい。大丈夫、見られる心配はない……時間も時間だしね。迎えに行こうか?』
「ガキ扱いすんな」
『子どもだろ?それに出入口作るような繊細な作業苦手じゃん』
「つーか出口作るつもりないし」
少年は目的地である公園の地を踏んだ。公園は思ったよりも小さかった。ブランコに滑り台、鉄棒しかない。人は、もちろんいない。
『はい?』
「壊す」
『ちょ、そんな無理くり……!』
「どうせ勝手に隠されるほどエネルギー有り余ってんだ。ここで発散させといた方がいいだろ。人もいないんだし」
『まあ……うん。エネルギーの発散は、必要だよね……』
「んじゃ、けってー」
『へぁ?!ちょ、ちょっと待ってシ――――――!』
「もう遅いね」
少年はニヤリと嗤うと端末を宙へ投げた。
「コードSIO、リミッター解除。世界から離脱する」
《音声認識。コードSIO、リミッター――――――》
ピアスのガラス玉から光が消え、少年の周りを一陣の風が吹き抜けた。
《解除》
「んじゃあまー、一丁派手に」
肩幅に足を開き、片手を振り上げた。
「行きますかァ!!」
手刀で宙を十字に切り、手の平を広げて腕を突き出した。
「砕けろ!」
十字に切られた宙がピシピシと音を発て始め、そして
パァン
耐え兼ねた宙は砕け散りパラパラと見えない破片が降り注ぐ。先程はなかった大穴ができた。向こう側は夜のように暗い。
《リンク確認。リミッター稼動》
『あーあ、やっちゃった。……ま、しょうがないか』
少年は暗い世界に足を進めた。落ちてきた端末を手の平に収め、
しお
『おかえり、蒔生――――――』
大穴を潜った。
「――――――君の世界に」
ゆう
「ハッ、ただいま。優宇」
もしもの世界、パラレルワールド。
たまにその世界に迷い込んでしまう人間がいる。引き寄せられる人間も。そして何の前触れもなく突然消えて、何の前触れもなく戻って来る。
人はそれを"神隠し"と呼ぶ。
しかし、迷い込んでしまった人間に自ら戻って来る力はない。そんな人達を元の世界に戻す役目を担っているのが、世界に引き寄せられる力を持ち、世界を行き来することができる力を持つ者達――つまり彼等である。
God Downer
「つーか何でいるんだよ。迎えはいらねーって言ったろ?」
「戻って来ることに対しての心配はまあしてないけど、中学生がこんな時間に出歩いてたら補導されるよ?」
「……お前、自分の格好見てから言えよ。ブレザー着た人間が来て意味あるか?」
「あ、うっかりしてた」
「この天然め。いい加減見た目年齢慣れろよ」
「あははー。ささ、中学生と見た目高校生が揃って補導される前に帰ろうか」
「って、その手にある物はなんだ」
「え?車のキーだけど?じゃなきゃこんなに早く来れるわけないじゃない」
「平然と言うな!!」
「まあまあ、捕まらなきゃいいんだよ。捕まらなきゃ」
「はぁ~。俺は知らねー」
「一緒に乗る時点で共犯だけどね~、相棒?」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
仕事中に思いつき、無性に書きたくなって勢いだけで挙げた短編でした。
珍しく本当に短く終わりました。
いつも携帯で打ってメールでパソコンに送って、清書して挙げているんですが、
携帯で打っている時点で平均10000字(のつもりが20000字行くことが多かったり;)なんですが、
この話は5000字いってません。
短編らしい短編を初めて書いたかもしれません。
内容が皆様に届いているか怪しいですが;
これが今年最後の小説モドキとなりました。
今年は全然話を書けませんでしたが、お付き合いいただき本当にありがとうございました。
来年もどうなるかわかりませんが、それでも少しずつは書いていきますので
その時はお付き合いいただければ幸いです。
本当にありがとうございました。
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