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月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

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只今、真剣勝負中!

『ルールはどうする?』
「無用でいいだろ」
『あら珍しい。そんなに本気なの?』
「当然。今回も俺が勝つ」
『今回"は"の間違いじゃないの?』
「言ってろ。今日こそ……泣かす!!」
『女の武器をそう簡単に見せるわけないでしょ?絶対負かす……今回も!』
          みやしろあつき
「それじゃあ、まあ。宮城 篤稀――――――」
『水成詩夢――――――』

黒と赤紫のジャケットが舞う中、

『「参る!!」』

竹刀を手に水成詩夢と宮城篤稀が対峙した。




時間を遡ること一時間。

『ん~、暇だ~』

 特使捜査課にて、水成詩夢は暇を持て余していた。

「暇なら少しは片付けてください!」

 と言う人間はいない。唯一の部下である秋木竜志は非番で特使課には捜査資料に囲まれた彼女一人だ。
 この特使捜査課は資料で溢れている。彼女が関わった事件や解決に要した資料等、本棚を飛び出し部屋を侵食していた。この部屋の惨状を見れば秋木に限らず誰でも片付けろと言う有様なのだが、彼女はどの資料が何処にあるのか把握している。そのため、この状態が彼女にとっての"片付いている"なのだ。部屋が片付いている上、書類整理を終えた今、彼女が暇を持て余すのは必然だった。

『事件も特になくて平和だし、本は……ノらないし~、トランプタワーもノらないな~』

 発想力や思考力、想像力を養うための読書も集中力を鍛えるためのトランプタワーも今日は気分がノらない。

『体、動かしたいね……』

 目付きの悪い猫の縫いぐるみを目の高さに掲げて話し掛ける辺り、本当に暇なようだ。そして秋木がいれば、間違いなく子ども扱いされていただろう。

『誰か相手になりそうなのは……あ、アイツにしよう』

 そして白羽の矢が立ったのが、

「――――――はぁ?!稽古の相手になれだァ?」

 捜査一課刑事、宮城篤稀だった。

「お前の相手をしてるほど暇じゃないんだよ、ウチは。お前と違って」
『なによ、アンタだって今日は中じゃない。人のこと言えた口?』

 捜査一課は班が作られ、現場に出向く班と待機組とに分かれている。宮城は後者らしい。
 そんな彼の物言いにぷうっとむくれるがここは引けない。何故なら暇を持て余してるから。

『いいじゃない、別に。遊ぶわけじゃないんだし』
「なら秋木に相手してもらえよ。お前の唯一の部下だろ」
『うっさい。今日は非番でいないのよ。だからわざわざ来たんでしょ?それに秋木くんだと相手してもらうんじゃなくて、相手になる側だからね。私も』
「それは失礼。さっさと帰れ」
『わかった!私に負けるのが恐いんだ~』
「……何言ってんだ、そんなわけあるか!大体、俺が負けるっつう前提自体間違ってんだよ!証明したらァ!」

 といくのが以前の宮城篤稀という男だったのだが、

「ハッ、そんな見え透いた挑発に乗るか」
『……昔はガンガン乗ってきてたくせに。成長したね、篤稀。なんだかお母さん寂しい』
「当たり前だ。お前も見習え。つうか誰が誰の子どもか。お前が母親ならグレるわ」
『もうグレてるじゃない』
「うるさいわ。ほら、もう十分遊んでやったろ。帰れ」
『……はぁ、わかった。帰るわよ。邪魔して悪かったわねー』
「?」

くるりと背中を見せる詩夢の行動に、妙にあっさり引くなと訝しむ。ご察しの通り、水成という人間がここで折れるわけがない。

『私の相手が出来て、かつ、私の稽古になり得るのは篤稀だけだと思ったのに……しょうがないわね』
「………ぅ」

 ピクッ
 チラリ
 かかった。もう一押し。

『篤稀がそこまで帰れって言うなら仕方ないわね』
「…………」
『篤稀とならいい勝負になると思ったのに……』

 散々蔑ろにした相手に誉められ、そのままさよならという状況は、人間誰しも居心地が悪くなるもので。そして宮城は基本的にはいい人間である。何だかんだで面倒見がよく、放っておけない質なのだ。

「~~~ったく、わかったよ!ただし一回だけだからな!」
『やった。ありがとう、篤稀!』

 渋々席を立つ宮城に、水成はにやりと笑う。
 だからこそ、詩夢にはそこを利用され上手く回されてしまうのだ。

『まったく、そういうお人好なところは全然変わらないんだから』
「ん?何か言ったか?」
『何にも~?』

 嬉しそうに言う水成を見て、何となく悔しくなる。手の平の上で躍らされた気分だ。

「(チクショー、何か悔しい……あ)オイ、水成」
『ん~?』

 何を思ったのか、前を歩く水成に声をかけた。宮城が悪そうな顔をする。宮城はいい人間だ、基本的には。

「折角なんだ。賭けようぜ」
『賭け?』
「ああ。負けた奴が勝った奴の言うことを何でも聞く」
『んなベタな……おまけに幼稚』
「るせェ!で、乗るのか?乗らないのか?」
『あなたがそういうこと言い出すってことは、何か私にきかせたい事があるってことね』
「察しが良くて話が早い。俺が勝ったら金輪際、俺達の捜査に首突っ込んで邪魔するな」
『…………』
「…………」
『邪魔してないけど?』
「お前……」

 確かに水成が首を突っ込んできた事件は、水成によって解決されている。されてはいるが。

「俺達の仕事を取るなって言ってんだよ!何のための縦割り社会だよ!」
『その対抗勢力が私たち特使じゃない』
「いや、それは違うだろ」
『まあいいや。とにかくそれは私が負けた時の話しだものね。いいわよ、乗ってあげる。稽古に付き合ってくれるお礼』
「の割には上からの承諾だな」
『じゃあ私が勝ったら~……ん~、そうね~……あ、Sweet Partyのオリジナルパフェ、奢ってもらおっかな』
「Sweet Partyって、あのバカみたいに高いっていう……?」
『あら、よく知ってるわね。甘いもの嫌いじゃなかった?』
「知ってるもなにも……」

 仕事中、隣で雑誌を開きSweet Partyのオリジナルパフェが食べたい食べたいでも高いと言い続け、彼の記憶にその名を刻んだのは何を隠そう水成だ。
 
「で?高いってどれぐらいなんだ?」
『このぐらい』

 ピッと5本指を立て、その手の平に人差し指をあてた。

「600円もすんのか?」

 甘いものには興味がない分、金額を聞いたもののあまりピンと来ない。が、コンビニアイスに比べればかなり高いことはわかる。

『違う違う、0が足んない。それじゃあバカ高いなんて言わないでしょ~?ズバリ6千円なり』
「6……ハァッ?!!何でそないすんねや!?」
『素出てますよー、篤稀さん。フフフッ。何故なら、パフェに使われているアイスは31やハーゲンダッツと並ぶブランドものの高級品、トッピングには高級カカオを使い丁寧に湯煎で溶かしたチョコレートをかけ、フランス人シェフが腕によりをかけて作ったミニケーキやマカロンを筆頭にしたお菓子達と厳選に厳選を重ね選び抜かれた新鮮な果物が飾られ――――――』
「ああもういいわ。聞いてるだけで胸やけする」
『ということで、私が勝ったら篤稀の奢りv』
「ちょ、おま、それは高すぎ……!」
『勝てばいいんでしょ?勝・て・ば。ま、勝・て・れ・ば、だけど』

 挑発的に笑う水成に宮城の血管が浮かんだ。

「いいだろう、やったらーーーッ」

 ここで冒頭に戻る。
 両者相手を窺い、睨み合う。稽古に来ていた他の人間も、2人の雰囲気に呑まれ静謐が生まれた。瞬間、2人は同時に踏み出すと竹刀が激しい音を立ててぶつかり合った。それを皮切りに竹刀が烈しくぶつかり合う。二人の力が拮抗し、鍔迫り合った。

「どうやら、あれから人の仕事邪魔してるだけじゃなかったようだな」
『私は特使だぞ?舐めてもらっては困る』

「――――――すげーな、あの2人」
「つうか最早剣道じゃねえ」
「てか、宮城警部って4段だろ?女で2段の水成警部が勝てんのかよ?」
「宮城さん、ああみえて紳士なところあるからな~。手加減してるんだろ?」
「――――――君たちの目は節穴か?宮城くんに手加減している余裕はないよ。なんたって、あの水成さんが相手だからね」
      すのはら
「まあまあ春原くん。2人の段しか知らない彼らから見ればそんな見解になるさ」

宮城贔屓な観客の背後から現れたのは、

「二森警部、春原警部!」

         にもりひろすけ                             すのはらみさと
 刑事部捜査一課の二森博輔警部と刑事部組織犯罪対策局薬物銃器対策課の春原深聡警部補だった。

「確かに宮城くんは強い。しかし、水成さんは型に収まり切らない程強い」

 春原は打ち合いを続けている2人を、主に水成を見詰めながら静かに力説した。

「あの、それはどういう意味で?」
「確かに段にしてみれば宮城くんの方が強いが、実力から見れば五分五分なんだよ。水成くんは、昇段試験を受けていないだけだから」
「え、受けていないんですか?」
「受けろとは言われているだろうけど、拒否だね」
「彼女は肩書というものが嫌いですから。まあ、そんな型に嵌まらないところが魅力的なんですけどね」
「ハハハ、相変わらず君は見事な水成くん贔屓だな」
「贔屓だなんて……正当な評価ですよ。宮城くんの強さは自明のようですから弁護しないだけで。それに――――――」

 2人から目線をずらし、二森にニッコリと笑顔を向けた。

「あの優秀な同期2人が僕の自慢ですから」

 外野が話し込んでいる間に、当事者2人の勝負は激しさを増していた。

(相変わらず、速いッ!しかも際どいとこ攻めてきやがって、ほんと弱点ねーなコイツは!)

 水成は持ち前の観察眼を活かし、相手の動きを読んでは小柄な体を活かし素早く動き回り、容赦なく切り込んで攻撃を仕掛ける。

(斬撃が前よりも重くなってる!そして相変わらずの隙を狙う慎重派。一秒も気が抜けないな)

 宮城は流すところは流し、受けるところは受け、突くべきところは確実に突いてくる。少しでも気を抜けば、確実に一本持って行かれるだろう。
 
(ほんま、やりづれー奴ッ)

 宮城は突きを放った。これを水成が受ければ力任せに竹刀を吹き飛ばし、決める。しかし、水成は受ることも流すこともなく、躱した。ニヤリと笑う。

『胴ががら空きだ!』
「チッ」

 胴目掛けて横薙に振られた竹刀をギリギリのところで後ろに跳んで避ける。しかし、

『足元も!』

 言うが速いかしゃがみ込んだ水成に足払いを受け、

「しま……っ」

 バタン
 バランスを崩し尻餅をついた。竹刀が手から転がる。顔を上げると竹刀の切っ先が映る。

『私の勝ち、だな。篤稀。大人しく負けを認めてもらおうか』
「……はぁ、わーたよ。俺の負けだ」
『お前が素直だと気味悪いな』
「おま、言うに事欠いて気味悪いとか……!」

 いつものじゃれ合いに気を抜いた一瞬だった。
 宮城は向けられていた竹刀を掴むと自分の方に引き寄せた。

『なっ、』

 水成は咄嗟に竹刀を離す。しかし宮城はそのまま竹刀を投げ捨てると同時に、

『わっ』

 水成の手首を掴み引き寄せた。水成はそのまま畳に投げ出され倒れ込む。体に圧が掛けられた。すぐさま肘をついて上体を起こすと、後頭部にコツンと何かが当たった。首を捻って振り向くと指先が。宮城の親指は上げられ、人差し指は今は水成のこめかみに向けられている。

『……拳銃の携行許可は取ったのか?』
「取ってある設定だ」
『稽古で飛び道具出すなんて出鱈目だ』
「お前に言われたくない。打ち込みが出鱈目過ぎだ馬鹿」
『型にはまるのは性に合わなくてな。というか、負けを認めたじゃないか。卑怯だぞ』
                       わっぱ
「だから言っただろ?"ルール無用"だって。それに手錠を掛けても油断はするなって教えられただろうが。現場離れてボケたんじゃねェか?」
『現場を離れた記憶はないが……なるほど。甘く見たことは認めよう。ルール無用とはそういうのもありだったのか』
「あ?」

 ふむふむと言いながら立てていた肘を倒し、完全に俯せになった。

「さあ、おとなしく負けを認めてもらおうか」
『はぁ……、認め――――――』

 ガッと、水成の手が馬乗りになっている宮城の肩を掴んだ。と同時に上体を捻り、

『るわけないだろがーーーッ』
「ぉわ」

 力任せに押した。
 元々水成にはあまり体重をかけていなかった宮城だ。急な反抗にふらつき、水成の横にまたも尻餅をつく。水成の狙い通りなくなった体の圧をこれ幸いにと足を蹴るように振り上げる。

「あぶ……ッ」

 それを避けようと後ろにのけ反る宮城の目の前を水成の足が掠める。それに構わず水成は、そのまま宮城の手首を掴み両足を腕に絡めた。宮城が顔を赤くする。

「おま、何やって……!女がそないなこと――――――」

 ガチャン
 独特な、しかし聞き慣れた金属音と手首に重み。

「おま、そないな物どこから出して……!!」
『手錠をかけても油断はするな、か。ならまだ勝ち誇れんな』
「ちょ、まさかこの態勢……!!」

 ニッコリと笑う水成を見て、顔を赤くしていた宮城の表情が一変、青に染まった。

『今更気付いたか。私を欺いたこと、心の底から後悔するんだな!篤稀!』
「待て、詩夢――――――」
『問答無用!!』
「ああああああああああぁぁぁぁぁッ!!!」

 水成は完全な腕ひしぎを決めた。
 その後、宮城が堪らずギブアップを宣言したが信用されず、しばらく苦痛を味わうこととなった。

「クソッ……負けた」
『ハッ、私に卑怯な真似をするからだ』
「女のクセに腕ひしぎなんて使うんじゃねェよ」

 手錠から解放された手首を摩りながら恨めしそうに軽く伸びをする水成を睨む。しかし、それは彼女には通用しない。そこはシラッと返される。

『真剣勝負に男女関係あるか。……さ~て、Sweet Partyには何時連れていって貰おうかな~』
「……ハァッ?!」
『何よ』

 スイッチをオフにし悪戯っ子のように笑いながら罰ゲームの遂行をちらつかせる水成に対し、宮城が大きな反応を示した。

「連れていって貰うって何だ!一緒に行くのかよ?!」
『そうだけど?』
「何でだよ!金だけ渡して終わりでいいだろうが!」
『何そのつまんない感じ。一人で食べても美味しくないじゃない。だからちゃんと責任持って付き合いなさいよ。ま、あなた甘いもの嫌いだからコーヒーだけで許してあげる』
「…………」

 そんなことを言われて顔を逸らす宮城の顔は、どことなく赤い。

『ああ、秋木くんの分まで奢らせるつもりはないから安心して。彼には適当な物を食べてもらうから』
「………は?」
『彼も私ほどじゃないけど甘いもの食べるから問題ないだろうし』

 そのことに気付いていない水成は、平気で宮城にとっての核爆弾を投下し続けた。

「ちょっと待て。秋木もいるのか?そこに」
『へ?』
「…………」
『…………』
「………………」
『………………』
「…………………はぁぁぁ」

 目をぱちぱちさせて疑問符を浮かべている水成に、宮城は盛大な溜息を吐いた。水成をジトリと睨むが、本人は不思議そうな顔をしている。何も分かってない。

『何よ?』
「……随分嫌がっていた割りには、一緒にいることが板についてきたみたいじゃねェか」

 部下。
 宮城が意地悪で吐いた言葉に目を見開き固まる水成。それを見て、しまったと眉を顰めた。まだ地雷は健在で意地悪が過ぎたらしい、と。俯いたまま一言も発しない水成に頭を掻いた。

「あー……なんだ、その……」

 言い淀みながら立ち上がり、水成の頭に手を乗せる。

「今度の水曜、お前の都合がいい時間に連絡しろ。その日に連れていってやる。どうせ俺とお前の都合が合う日なんてそうそうないだろうしな。お前は非番じゃないんだ。すぐ帰ってくるんだから、秋木は留守番に置いとけ」
『それって……』
「今度の俺の非番、丸々お前にやる」
『篤稀……』

ぶっきら棒な物言いに顔を上げ、宮城の顔を見上げる。目線を逸らしたその顔は赤い。

(慣れないことを言うから……)

 昔から変わらない友人に小さく笑い、小指を立てた。

『じゃあ……約束』

 その気まぐれのように見せる優しさに、甘えたくなるから。
 少しくらい、甘えてもいいだろうか。

「ハッ、餓鬼か」
『った』

 鼻で笑いながらコツンと水成の額を軽く小突くと、宮城は背中を向けた。

「そんなことしなくたってちゃんと連れてってやらァ」
『……ほんっと』

 そういうところは敵わないな。
 小突かれた額を抑えながら苦笑した。切られることのなかった小指は宙をさ迷い、小さな呟きは風に流され誰に届くことなく散っていった。

只今、真剣勝負中!


「――――――やあ、宮城くん。お疲れ様」
「あ?……って春原」

 更衣室で着替えていると、背後から声を掛けられた。そこにいたのは春原だった。

「久し振りだな。お前も稽古に来てたのか?」
「うん。腕大丈夫?」
「まだ痛ェ。腕ひしぎとか女じゃねェよアイツ」
「それは水成さんに失礼だよ。それに、最初に卑怯なことをしたのは宮城くんだった気がするけど?」
「うるせー」
「あはは。でもまさか宮城くんと水成さんの勝負が見られるとは思ってなかったから、ラッキーだったよ」
「嫌味か」
「そんな……事実さ。それにしても、二人とも相変わらず仲いいね。相変わらず強いし」
「仲良くねぇよ。つうか最後のは嫌味だろ」
「もー、なんでそうなるかなー。褒めてるのに。それにデートの約束までしてたじゃないか」
「デ、デートじゃねェよバカ!!アレは賭けをしててだなッ」
「はいはい」
「テメーしばくぞ」

 厭に突っ掛かって来る宮城に春原は苦笑し、流す。機嫌が悪い宮城の扱いには慣れているようだ。

「……僕も水成さんに稽古つけてもらいたいな」
「死にたいのか?!」
「君は水成さんを何だと思ってるの」
「化け物」
「知られたら残った片腕も腕ひしぎかな?」
「おまっ、売るなよ?!絶対売るなよ!俺を!」
「それは保証できないな~」
「チックショー。裏切り者め」
「まだ裏切ってないだろ?」

 着替えを済ませ、ロッカーを閉める。

「……別に、」
「へ?」
「別に相手してほしいなら、そう言やいいだろ。アイツなら喜んで付き合うだろ」
「……僕はダメだよ。弱いし」
「そんなん関係ねーよ。アイツにとってはな」
「……そうだね、水成さん優しいし」
「バカ、優しい奴は腕ひしぎなんかしねェよ」
「まだ言ってるし」


「それじゃあ宮城くん、仕事気を付けてね」
「お前もな。また前みたいに飲みに行こうぜ」
「そうだね、楽しみにしてるよ」

 二人は更衣室を出て挨拶も適当に別れた。

「ほんと、憧れちゃうな。宮城くん……」

 小さな呟きは風に流され誰に届くことなく散っていった。





+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


純情半端ない宮城くんとそんなの関係ねー案外鈍感水成さんが何だかんだで仲良しさんだ
ということが書きたかっただけのお話でした。
新しい人はまた出す予定です。……いつになるのかは未定ですが^^;

2人の剣道の段は、剣道を全く知らないため適当に付けてしまいました。
剣道って段を取るのに修行する期間があって、その期間中は昇段試験を
受けられないらしいですね。大変だ……!
取り敢えず、宮城くんは水成さんより段は上でもちろん強いんだけど、
水成さんは段なんて関係なく強いということが言いたかったのです、ハイ。
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