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月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

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God Downer

ぽーん

 ボールをつくような、

ぽーん

 時報のような、

ぽーん

 時計の抜けた鐘のような、

ぽーん

 そんな音が近付いてきて、ふと目を開けると、そこは夕暮れに染まる見知らぬ街だった。




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足して4で割ると

「…………」
「あの、先生が呼んでたんだけど……」

 目の前にいる同級生が困っている。

「あー、えっと、」
「…………」

 それは、私のことを誰も私だとはわからないから。

「ぁ」
              あいか    さいか
「――――――君から見て右が愛歌、左が彩歌だよ」

 ただし、幼なじみを除いては。




「お前らも教えてやれよな~、可哀相じゃん」
「失礼な。教えようとしたところにキョースケが来たんじゃない」
「第一、分からないほうも分からないほうで酷いんじゃないの?」
「彩歌、お前今から愛歌連れてトイレ行って鏡を見てこい。鏡に映った像入れて数えれば、お前が4人いるから」

 俺の目の前には幼なじみの女の子が2人いる。
 彼女たちは、双子だ。

「そんなに似てる?私たち」
「う~ん、双子だから他の兄弟に比べれば似てるんじゃないの?」
「似てるどころのレベルじゃねーよ」

 顔、髪型、身長、体重といった容姿を始め、声、しゃべり方も同じ。ここまでは他の双子にもあることだろう。だが、それだけじゃない。
 性格、趣味、好きなもの、嫌いなもの、得意な教科、嫌いな教科、視力、体力。果ては体育なんかで計る徒競走や水泳のタイム、テストの点数なんかも毎回同じ。全てが同じ。要するにこの2人は違うところがどこにもないのだ。
 そう、

「じゃあなんでキョースケにはわかるのよ」
「そりゃー……、幼なじみだからだろ」
「えー、母さんや父さんだって見分けがつかなくて四苦八苦してるのに」
「どうせ野性の勘かなにかよ」
「あ~、それが一番説得力ある!」
「お前ら俺を何だと思ってんの?!」

 ただ一点を除いては――――――。

「先生たちも見分けがつかないなら私たちを別々のクラスにすればよかったのに」
「そこがよくわからないわよね~」
「ところでさ、明後日の休みにみんなで水族館行かね?」
「あー、知ってる!シャチの子どもが生まれたんだよね!いいじゃん、行こうよ!」
「えー、人多いじゃん。シャチ見に行ったのか人見に行ったのかわかんないじゃない。動物はまだしも、人なんてお呼びじゃないんだから」
「何言ってるのよ、シャチも人も見れて一石二鳥じゃないの」
「一石二鳥って、もう何が目的の水族館かわからないじゃない」
「相変わらずだな、お前たちは」

 姉の愛歌は博愛主義者で妹の彩歌は極端な人嫌い。
 この点だけが、唯一この2人を分けている。
              すこぶ
 かと言って仲が悪くはなく、頗る仲がいい。喧嘩しているところを見たことがないくらいだ。

「なぁ、何で彩歌はそんなに人間嫌いなんだ?」
「だって人間なんて碌なもんじゃないじゃない。どいつもこいつも自分のことしか考えてない利己的な醜い生き物。それをどう好きになれっていうのよ」
「そんなことないわよ、彩歌。どんな人にだっていいところはあるし、誰だって根っこはいい人なんだから」
「じゃあ何で彩歌は俺とはよく一緒にいるんだよ?あ、まさかお前、俺のことは特べ――――――」
「キョースケも人間じゃないの。だから嫌い、大嫌い」
「あ、傷ついた。ものすごく」
「それはよかったわ」
「………。じ、じゃあ、愛歌は?俺のことはどう思う?」
「うん、好きだよ?」
「……何で?」
「それは……人間、だから?」
「あ、こっちは地味に傷つくわ」
「それはよかったわ」
「………」

 かくいう俺は腐れ縁だと思ってる。幼稚園・小・中・高と今まで同じクラスでいたのが半数を占めている。もうこれは腐れ縁だとしか言いようがないのではないだろうか。

「まったく、2人を足して2で割ればちょうどいいのにな」
「何言ってるのよキョースケ」
「1人で生まれて来るはずだったのが、2人に割れたからこうなったんじゃない」
「私たちを足して2で割ったところで同じことよ」
「――――――あ、いたいた。お待たせ」

 げ、嫌な奴が来た。

「お前なんか待ってねーよ」
「こっちだって、お前を待たせた気はないね」
「何を~……!」
「お疲れ、リョースケ」
「生徒会終わった?」
「うん、やっとね」

 愛歌と彩歌にはにこやかに話しかけるこの男。俺はコイツが気に食わない。とてつもなく。

「こっちは愛歌と彩歌と一緒に待っててやったんだろうが。何その言い草。礼の一つも言
         りょうすけ
えねーの?副会長の綾 佑様はよぉ」
            きょうすけ
「最初に喧嘩腰だったのは京 佑だった気がするけど?それに、待つのが嫌なら先に帰ればいいだろ?待っててほしいなんて言った覚えも頼んだ覚えもないよ」
「こっちは善意で待っててやったんだぞ。それに対して頼んでないとか、そんな言い方ないだろ!」
「善意なら、こちらに礼を求めるのはどうかと思うけどね。ほんっと、心が狭いな」
「ンだと~!」
「何さ!」
「ほんと、仲悪いわね。アンタ達」
「仲良くしなきゃダメでしょーが。双子なんだから」

 そう。俺と綾佑も双子だ。
 ただし、愛歌・彩歌とは全く真逆で全てが対極同士、仲が凄まじく悪い双子。
 身長、体重は微々たる違いだが、顔、髪型、声、しゃべり方も全然違う。性格、趣味、好きなもの、嫌いなもの、得意な教科、嫌いな教科も全部真逆。視力、体力、テストの点数なんかも、どちらかが高ければどちらかが低いという対極振り。
 周りからも本当に双子か怪しまれているぐらいだ。
 そう、

「こんな奴と双子だなんて、好きでなったんじゃないね!そもそも双子じゃなたって兄弟でも嫌だし」
「こっちだって、お前が弟だなんて今でもショックを隠しきれないよ」
「双子に兄も弟もないだろ!!」
「実際あるんだから仕方ないだろ?」

 ただ一点を除いては――――――。

「もう、やめなさいよ!」
「あんまし喧嘩してると、私たちだけで先帰っちゃうからね!」
「な、何でだよ!俺が最初に、というかずっと一緒にいただろ!一緒に帰るために!」
「喧嘩売ってきたのは京佑が先だよ!」
「キョースケ、」
「リョースケ、」
『喧嘩両成敗!!』
「………チッ」
「………フン」

 そう、この幼なじみ達が絡むと俺達は唯一同じ方向を向くことができる。
 逆に言うと、コイツらがいなければ、こんなふうに一緒に帰ることは絶対にないのだ。

「だいたい、なんで僕だけ違うクラスなんだ」
「言われてみれば、私たちは同じクラスになることが多いけど、2人は同じクラスになることなんて稀よね」
「まあこれだけ仲が悪ければ同じクラスにしたくない先生達の気持ちも分かるけどね」
「で、俺か綾佑のどちらかを愛歌たちと同じクラスにさせて、先生をサポートさせてたりしてな」
「なら愛歌と彩歌だって別々のクラスにすればいいだろ?わざわさそんなことする必要がないじゃないか。本当に単純だな」
「だ~か~ら~!させてたりしてって言っただろ!本気でそんなこと思ってるわけねーだろ!耳悪くなったんじゃねーの?耳鼻科行け!今すぐ!」
「なら、お前はその弱い頭をマシにしてもらうために、脳の研究してる施設に幽閉してもらえ!今すぐ!」
「俺のどこが頭弱いって言うんですか~」
「全体的にだよ」
「まーたやってるし」
「ほんっとに仲悪いわね」
「私たちを少しは見習えばいいのに」
『断る!!』
『ぷ、アハハハ!揃った!』
「そっちもな」「そっちもね」
「あ、そうだ」
「どうしたの?愛歌」
「いいこと思いついちゃった」
「何?」
「私たち4人を足して4で割ればちょうどいいのにね」

足して4で割ると


「あはは、それは名案」
『名案じゃない!コイツと足されるなんてぜーったいに嫌だ!!』



+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


ご無沙汰しています、渡月です。
ようやく話を上げることができました……!
仕事中にふと思い浮かんだ産物ですが(笑)

急に頭に浮かんでものっそい書きたくなった双子の話。
どっちがどっちかわからなくするために、敢えていつもの鉤括弧の使い分けはしませんでした。
結果自分でもどっちがどっちかわからないという罠に嵌りましたがorz

あともう一つ、仕事中にふと思い浮かんだ設定の話があります。
これは長編でやりたいなあと思いつつも、恐らく短編でやってからになると思います。
取り敢えず、書きたい思っていますので、その時はまた付き合ってもらえると嬉しい限りです。

自己責任でお願いします

『――――――ねぇ』
「……ああ?」
『何でアンタはこんなところに来てまでこんなことしてんの?』
「ここに来たのは俺の勝手だが、こういう状態にしたのはお前だろ」
『まあ、否定はしないけどね』

 私の言う"こんなこと"と彼の言う"こういう状態"とは、端から見れば私を彼が後ろから抱きしめている状態を指している。
 と言えばロマンチックなのだろうが、実際はちょっと異なっている。
 両膝を立てて座っていた彼に、私が背中を預けて座っている。要するに、私が彼を椅子にしているのだ。全体重を預けているという点がポイント。

「つうか重めェ」
『で、何で来たのよ。こんなところに』
「無視か。……だから、俺の勝手だと言ったはずだ。俺がどこにいようと、何をしようとな」
『…………』

 チラリと彼を窺ってから視線を前へ戻す。意識がどこかふわふわしていて、今の現状が現実味を帯びていないように感じる。

「たとえ俺が男共と一緒にいるお前をたまたま見つけて後を追ったとしても」

 コンクリートの壁に囲まれた暗い倉庫の中。直にコンクリートに座っているためお尻がちょっと冷たいが、そんなことはあまり気にならない。彼の声だけが私の脳髄を刺激する。そのせいなのか。

「テメェに手ェ出そうとした連中殺したとしても、それは全部俺の勝手だ」

 目の前に広がる赤と、そこに伏したる人たちが、どこか趣味の悪い絵画に見えるのは。

『俺の勝手俺の勝手って、相変わらずの俺様ぶりだね』
「うるせェ。第一、人のモノに手ェだそうとしたコイツらの自業自得だ」
『誰が誰のモノだって?』
「言ったはずだ。俺の勝手だとな」
『何が勝手?』
「全部言わねェとわかんねェってか?」
『言って欲しいの』
「ったく、しゃあねェなァ。――――――俺が誰を好きでいようが、俺が誰を守ろうが、俺の勝手だ。そしてその誰かさんは、たった一人だけだ」
『……そっか。じゃあ、私も。私がこうやってアンタを椅子にしてるのも私の勝手だけど、こんなことするのは一人だけだよ』
「真似すんじゃねェよバカ」
『あいた』

 預けていた背中を離して頭だけを彼に向けて台詞を真似すると、額を軽く小突かれた。地味な痛みに軽く頬を膨らまして、再び背中を預けた。
 そうすると、嫌でもまた視界に映る趣味の悪い絵画たち。もう考えることがめんどくさくなってきた。このままふわふわしている意識を本当の意味でふわふわさせてやろうか。

『――――――ねぇ』
「ああ?」
『眠くなって来ちゃった。このまま寝てもいい?』
「こんなところでかよ。神経図太いな。狗どもが来たらどうするつもりだ」
『それはアンタに任せるよ。この人たちを殺っちゃったのはアンタの勝手なんでしょ?じゃあ責任は自分で取らないと』
「チッ。助けるんじゃなかった」
『あはは、もう遅いよ』
「ハッ、違ェねェ。俺がお前を好きになった時点で終わってる」
『何かその物言い、すっごい失礼……』
「うるせェよ。俺に任せるんなら黙ってろ」
『……ん』

 頭を撫でる手が、前髪を梳く手が気持ちよくて、私のふわふわしていた意識は眠気へと変わりピークを迎えた。
 完全に意識を飛ばす前に、意識だけではなく体もふわりと浮いたのを感じた。


自己責任でお願いします


「これが惚れた弱みってやつかねェ。ハッ、俺も焼きが回ったもんだ」



+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


何かを無性に書きたくなって生まれた産物がこれです。
相手は『銀魂』の高杉のつもりです。一応。
襲われそうになっていた男たちから守ってくれた後という設定です。一応。

今『特使捜査課』を書いてますが、時間をかけすぎているせいか、
だんだんまとまりがなくなってきてしまいましたorz
それでも頑張って書き上げたいと思います。

DarkNumber-暗数-

生きることはあんなにも難しかったのに、死ぬことはとても簡単だ。そして、生かすことも難しく、殺すことも簡単だ。だから、あの殺す方の薬も事が起こってすぐに出来たんだろう。……まったく、脆いなァ人間は。そのくせ変に頑丈で。ほんと、嫌になる。
 確かにあの男が言ったように、俺は生きている。何をしても法で裁かれない、道徳にも縛られない、そんな存在になって。何にも縛られない、柵のない自由な世界に俺達はいる。俺自身は満足している。……それでも。俺は"アイツ"がいたから在るのに。"アイツ"を犠牲にして、こうして在る。"アイツ"はこの世界にいたくなくて。普通の世界にいたかった。それなのに俺は、この道を選んだ。………………ごめん。

             
 遠くで彼がそんなことを伝った。仕方のない、ことなのに。優しいね、って云ったら、馬鹿かって伝われた。






第三人格   和歌

DarkNumber-暗数-

息が切れる。

 辺りは闇が支配して。

 聞こえるのは、自分の荒い呼吸と心音だけ。






第二人格   荒夜

※流血シーンあり

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