月灯りの下
闇の世界に差し込む光を追い求めて
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DarkNumber-暗数-
生きることはあんなにも難しかったのに、死ぬことはとても簡単だ。そして、生かすことも難しく、殺すことも簡単だ。だから、あの殺す方の薬も事が起こってすぐに出来たんだろう。……まったく、脆いなァ人間は。そのくせ変に頑丈で。ほんと、嫌になる。
確かにあの男が言ったように、俺は生きている。何をしても法で裁かれない、道徳にも縛られない、そんな存在になって。何にも縛られない、柵のない自由な世界に俺達はいる。俺自身は満足している。……それでも。俺は"アイツ"がいたから在るのに。"アイツ"を犠牲にして、こうして在る。"アイツ"はこの世界にいたくなくて。普通の世界にいたかった。それなのに俺は、この道を選んだ。………………ごめん。
い
遠くで彼がそんなことを伝った。仕方のない、ことなのに。優しいね、って云ったら、馬鹿かって伝われた。
第三人格 和歌
確かにあの男が言ったように、俺は生きている。何をしても法で裁かれない、道徳にも縛られない、そんな存在になって。何にも縛られない、柵のない自由な世界に俺達はいる。俺自身は満足している。……それでも。俺は"アイツ"がいたから在るのに。"アイツ"を犠牲にして、こうして在る。"アイツ"はこの世界にいたくなくて。普通の世界にいたかった。それなのに俺は、この道を選んだ。………………ごめん。
い
遠くで彼がそんなことを伝った。仕方のない、ことなのに。優しいね、って云ったら、馬鹿かって伝われた。
第三人格 和歌
こうや
私たちが"こう"なってからしばらくして、荒夜はおかしくなった。
"おかしくなった"というと語弊があるかもしれない。どちらかというと、"我慢の限界が来た"という方が正しいのかもしれない。
先程の荒夜が殺した男性の別人格同様、彼にも殺人衝動が現れた。この衝動は暴力と同
いざな
じ。一方的に荒夜を世界の暗部へと誘った。しかし、先程の男性とは違い、私たちは自由に外へ出ることができなかった。そのため、発散されることのない衝動により、荒夜のフラストレーションは溜まる一方だった。
そして、そのフラストレーションは荒夜自身、私たちの体へと向けられることとなる。
私たちはお互いを認識し、認め合っている。私には彼らしかいなかったし、荒夜は一人でも十分だと言うだろうけれど、彼らにも私しかいなかったから。例えて言うなら、いい近所付き合いをしていた。
でも、それが仇となった。
かいと
荒夜や快音の人格で彼らが表層に出ていたとしても、たとえ治りが早くなったとしても、器は私の体。その器を傷つけているという事実が、少しだけフラストレーションを発散した荒夜を傷つけた。そこからまたフラストレーションは溜まり、呼応するかのように衝動も強まった。それは負の連鎖だった。
そんな時だった。病院から、国から、この仕事をするよう持ちかけられたのは。
荒夜は悩んでた。この仕事を引き受ければ、衝動を誰に咎められることもなく発散できるし、私達の体を傷つけることもなくなる。いいこと尽くめだった。彼にとっては。
彼はいつも言っていた。自分には良心はないと。だから自由に暴れられて、異常な世界の住人になることに抵抗はなかった。私がいなければ。
彼曰く、私は良心の塊らしい。確かに、直接手を下すのは私ではないが、その仕事をするのは抵抗があった。薬によって生み出された人格を殺すというその仕事内容を思うと、体が震えた。私にとっては、荒夜や快音を殺されるということだ。もとの人格が無事にしろ、そんな人殺し紛いなことはしたくない。させたくない。
何より私は彼らと普通の世界で生きて行きたかった。
でも、そんな夢、仕事を受けようが受けまいが叶うことはない。それこそ、寝ているときに見る夢のように掴めない夢。だったら。
良心がないないといいながら私たちのことを気にしてくれる荒夜と、子どもながらに私たちを気にかけ守ってくれようとしている快音と共に、狂ってしまった世界で生きていくしかない。この仕事を受けることが彼のためでもあり、私たちのためにも、なる。
仕事中は私と快音は荒夜の仕事風景を見ないという条件の下、私たちは脳内会議にて"仕事をやる"という結論を下し、現在に至る。
「――――――い、お―――――― 、おい、しっかりしろ! 起きてるか?!」
なつくさ
「え、きゃ、夏草先生!?」
声をかけられていることに気付き顔をあげると、そこには夏草七味がいた。かなり近い。背後ではいつの間にか来たのか、救急車のサイレンが響いている。
「よかった~、何かあったんかと……」
「せ、先生、近い、です」
かずか
「ん?……あれ、和歌ちゃん?もしかして照れてる?」
「~~~ッ!照れてません!すぐにそうやってからかうの、止めてください!」
「いや~、和歌ちゃんがあまりにもかわいいもんだから、つい」
この人は……。
わたし
どうも相手が和歌になると、荒夜にいいようにされている分、仕返しをされているような気がしてしかたがないのは気のせいだろうか。
ニヤニヤとからかい顔で「ほら」と手を差し出される。「う~」と唸りながら手を重ねようとしたが、止める。
「あ、ちょっと待って……」
そう言って髪をおろすと、今度は高いところで結び直す。
「あの……先生、あの女の人は……?」
「ああ、助かるみたいだよ。 ……"あの薬"を使って、みたいだけどな」
「そう、ですか」
"あの薬"……、全ての元凶である肉体強化と精神異常を起こす薬を使って被害に遭った女の人を助ける。これは、よくあることだった。証拠隠滅のために荒夜を狩り出し、患者さんが襲ってしまい重症を負った人を更なる証拠隠滅のためにまた薬を使う。
こと
そうして。また。被害者が増える。そして彼は、手を汚していくことになる。私の良心を気にしながら……。
頭にぽんっと重みがかかった。見上げると夏草が、悲しそうな瞳で苦笑していた。
「"君たち″は悪くない。 だから、君が良心を痛める必要はないんだ」
「先生……」
「しっかし、荒夜の奴、ほんとに和歌を残して寝たのか。 危ないことさせやがって」
「フフ、私を襲おうなんてする人はいませんよ? それに荒夜だって、何だかんだ言ってきっとその時は守ってくれますから」
夏草は、髪を結び終わった少女・和歌に再び手を差し出す。和歌は今度は戸惑うことなく手を乗せた。
「それじゃあ、帰るか。 和歌が好きそうな本を持ってきたんだ」
「本当ですか?楽しみだな。 ジャンルは、やっぱりファンタジーですか?」
「それは帰ってからのおたのしみだ」
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こんばんは、渡月です。
この『DarkNumber-暗数-』は、学校の文学部発行の機関紙に載せていただいたものです。
そしてページの問題上、細かい説明を省いたせいで意味が解らないお話になってしまった
という、悲しいお話です。←
(そんなものをお渡ししてしまったと思うと……すみませんでした/土下座)
……まあ、意味が解らないお話になったなんて、ここじゃ日常茶飯事ですけど、ねorz
なので、ここで加筆・修正したものをあげました。
少しでも解りやすくなっていればいいんですが……;
どれか連載が終わったらこの話を新しく始めようかな~なんて思ったりしているので、
その時にまた詳しく書きたいと思います。
第3章に渡ってお送りしましたが、ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!
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