月灯りの下
闇の世界に差し込む光を追い求めて
[193] [192] [191] [190] [189] [188] [187] [186] [185] [184] [183]
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
瓦礫の山頂、
「へぇ、最近有名になりつつあり、かつ一癖ある殺し屋が、こんなガキだったとはねー」
「そそ。それでちょーっとね、軽く殺っちゃって欲しいんだよ」
「ハッ、軽くって何だよ!でもまあ、調子に乗ってる奴の鼻をへし折るのは嫌いじゃねぇ。むしろ好きだ」
「調子に乗ってるかはともかくとして、じゃあ引き受けてくれるんだ?」
「ああ。ガキに本当の殺し屋ってのを教えてやるよ」
「アハハ。それじゃあ、よろしく頼むよ?殺し屋さん。ま、」
おし
殺えられればの話だけどね。
※流血シーンあり
「そそ。それでちょーっとね、軽く殺っちゃって欲しいんだよ」
「ハッ、軽くって何だよ!でもまあ、調子に乗ってる奴の鼻をへし折るのは嫌いじゃねぇ。むしろ好きだ」
「調子に乗ってるかはともかくとして、じゃあ引き受けてくれるんだ?」
「ああ。ガキに本当の殺し屋ってのを教えてやるよ」
「アハハ。それじゃあ、よろしく頼むよ?殺し屋さん。ま、」
おし
殺えられればの話だけどね。
※流血シーンあり
* * *
森の中。
静かな空気。
月の光を受けて床に美しい模様を刻むステンドグラス。
汚れた白いキリスト像とくすんだ金色の十字架。
神などという存在は信じてはいないが、朽ちてもなお衰えることのない荘厳さに呑まれそうだ。
十字架の前に歩み寄り、膝をついて胸の前で十字を切った。閉じていた瞼をゆっくりと押し上げて金色に鈍く輝く十字架と薄く汚れた白いマリア像を瞳に映した。
今から自分がしようとしている行為は、神に唾するに等しい行為だろう。
『いや、もしかするとそれ以上かも』
しかし、生憎と私にとっては関係ないことだ。関係あるとすれば、この間気まずい別れ方をした友人の方だろう。
……気まずい別れ方、か。
『あれを、喧嘩というのかな……?』
そこまで考えてハッとなった。
『……仕事前に何を考えてるんだ、私は』
立ち上がり、頭を左右に振って浮かんでいた顔を追い出した。集中しろ、集中。
腰のポーチから小さくて白くて四角い、角砂糖のようなものを取り出し、手の平に転がし眺める。
今回のターゲットは。ここを根城としている窃盗団のボス。今、その教会はもぬけの殻。誰かが住んでいた形跡があるものの、最近は使われた形跡はない。極めつけには、先程から感じるねっとりとした値踏みされるような鬱陶しい視線。今は感じないが、先程までそれとは別の殺気混じりの視線も感じた。その視線を感じなくなってから、この教会を取り巻く雰囲気も変わってきている。
これはもしかすると……。
ギイ
徐に、古びた扉が薄く開いた。
十字架に背を向け扉に目を向ける。開いた隙間から零れ出る殺気に身構える。ポーチの口を薄く開け、手を入れた。次の瞬間。
バァン
扉が壊さんばかりの勢いで口を全開にされた。そこにはライフル銃を背負い、銃を構えた男が一人。壁にぶち当たって戻ってきた扉を足で止める。
「いい反応するんだね、お嬢さん」
男が向ける銃口の先には、男に銃口を向けるアイリス。
『いい反応も何も、あれだけ殺気がだだ漏れしているんです。反応出来ないほうがおかしいですよ』
「……バレてたか。だだ漏れって、言うねー」
『で?どなたでしょう?殺し屋さん』
「……俺が殺し屋だと何故言える?」
『わかりますよ、殺気とニオイで』
「ハッ、なるほどね。ご察しの通り、俺は殺し屋を営んでいてね、ここを住家にしている窃盗団のボスを始末しに来たんだ。つまり、俺はお嬢さんの先輩にあたるってわけだ」
『……嘘吐きは泥棒の始まりですよ、先輩』
「何?」
『あなたがもし、その窃盗団のボスを本当に始末しに来たのなら、標的の顔を知っていますよね。なのにあなたは、顔も確認せずに私に銃口を向けました。標的となる者を確実に仕留めるのが殺し屋の仕事。そしてここは標的の根城。むやみやたらに発砲したり誰かを殺せば、それだけ標的を狙いにくくなります。にもかかわらず、標的かどうかも分からないのに殺意を持って銃口を向けるなんて、三流でもしませんよ』
「………」
『つまり、標的が別にいるとしか考えられません。まあ、あなたが三流以下の殺し屋だというのなら納得はしますが』
「……口だけじゃなく、頭も回るってことか。なるほど、ただ調子に乗ってるってわけじゃなさそうだな」
『はい?』
「あんたの言う通り、狙いは窃盗団ボスじゃあない」
空いている手で体の前にあるベルトを掴み、引っ張った。すると、背中にあったライフル銃が肩の上へと移動し。男は持っていた銃を捨て、ライフル銃を構た。
ハァ、依頼以外のシゴトは、なるべくしたくないんだけど……、
「お嬢さんだよ」
正当防衛なら仕方がないか。殺してしまったとしても。
男が指を動かすよりも速く動き出したアイリスは、素早く椅子と椅子の間に体を滑り込ませる。轟く発砲音と共に銃口から飛び出した弾は、アイリスがいた場所を捉え、その後を追う。銃弾が頭上を飛び、隠れた椅子の背が弾け飛んで欠けた。
『ライフルは狙撃用。使うには、ちょっと近くないですか?先輩』
「狙ってたよ、教会の外から!お嬢さんが入ってくる前からずっと!だが、ずっと歩き回って、止まったかと思えば物影に隠れて……、ロクな的じゃァなかったんだよ!!」
ダダダン
床と何か、恐らく椅子の肘掛けと背もたれを踏む音が響く。相手は椅子に上ったようだ。位置から考えて、高いところから狙われては不利。
『それは大変でしたね』
銃弾が頭上を走る。
息を素早く深く吸い、小さく短く吐く。そして、止めた。と同時に椅子の陰から飛び出し、通路に身を晒した。視界に入った男は、やはり椅子の背と肘掛けに上っていた。男の視線が飛び出したアイリスに向けられ、素早く座る部分に降りて銃口を向けた。
「改心して当たりやすい的になってくれたかァ!?」
意識を集中しろ。相手の目と銃口の先はどこを見ている?
轟く発砲音。
顔を横に反らすと、弾丸が通り過ぎていく。
それを見送ることなく、男に向かって歩き出す。
「ハッ。ライフルを持った相手に向かって来るなんて、頭でもおかしくなったかァ!?」
アイリスを狙う弾丸は止まない。
リズムを掴め。自分ならどの間隔で、どこを狙う?
足を狙った弾丸は、足を少し動かすだけで避け。腕や頭を狙った弾丸は、体を少し反らすことによって避け。体を狙った弾丸は、回転して避け。歩みは止めず、飛び交う弾丸の中を歩く。
タイミングを見逃すな。ライフルはリーチがある。その懐に潜るのは……
「クソッ」
一発も当たらねェ……!
今まで殺しは何度となくやってきた。相手を狙撃するという方法が主だ。にもかかわらず、一発も当たらないなんてことがあったか?
男は焦りを見せた。そこに隙ができた。
『ここ』
アイリスは足に力を入れ、疾走した。男は引き金を引いたが、顔の横を通り過ぎただけで当たることはなかった。
近くでナイフを抜く硬質な音が響く。気が付けば、唇が触れそうなほど近くにアイリスは、いた。
「ッ!!」
殺られる。
ナイフは綺麗な軌跡を描き、スローモーションのように男に向かって来る。
普通の人間ならば、ここでナイフに貫かれて終わっていただろう。しかし、相手は殺し屋。脳は反射的に逃げることを選択し、身体は素直にその指示に従った。
振るわれたナイフは男の腹部を掠めて通り過ぎた。結果、ライフルの紐が切れ、服と腹部に斜めに線が走った。ライフルが重力に身を任せて落下する。
振るったナイフを椅子に刺すと同時に、ライフルと床の間に黒い革手袋をした手が滑り込み。
男は椅子の背もたれに乗って難を逃れると、そのまま通路に出て間合いを取った。
「……ッ」
その時には既に、ライフルの銃口は男の頭に向けられていた。冷や汗が背中を滑り降りていく。こんな気分になるのはいつぶりか。
「ライフルは狙撃用。使うには、ちょっと近いんじゃないか?お嬢さん」
そんなことは顔には出さず、口角を上げて嫌味を吐いた。しかし、
『ええ。勿論、私は正しい用途で使いますよ。先輩』
そんな嫌味を涼しい顔で切り捨て、引き金をゆっくり絞る。そして、引ききる前に狙いを微かに狙いを逸らし、撃った。
男の髪が舞い散り、教会のステンドグラスが割れ、
「……は、ハッ。一体何処を狙って」
ぅわァッ!!
森の中から響く悲鳴。
「なに……?!」
『チッ、致命傷にはならなかったか』
「何を、一体……!?」
『あなたのお仲間さんじゃないんですか?ま、心当たりのある気配と声でしたが。それても聞かされてないだけかな?』
「ハァ?さっきから何を言って――――――」
何の前触れもなく、ライフル銃が投げつけられる。と同時に、アイリスはナイフを引き抜いた。
ライフルは元々男の武器。咄嗟に受け取った時、ライフルの向こう側にナイフを突き立てようとすぐ側まで来ているアイリスが見える。身の危険を感じとった第六感が反応する。受け取ったライフルを自分の体とナイフの間に滑り込ませた。
ライフルはナイフを弾き返す。その衝撃が腕に伝わり、スピードはそのままアイリスの体を押し返した。
『………』
体制を崩しながらも、足を振り上げライフルを蹴り上げた。そのままバク転をして間合いを開ける。2回目のバク転で床に手を着いた時、右手が何かの上に乗った。上体を起こす際、その何かを掴み地面に足を着ける。右腕を徐に上げた。
男はライフルを蹴り上げられたことにより、バランスを崩し体は無防備だった。
パァン
響く銃声は教会の空気を震わせた。
乾いた床板が降って来る赤で喉を潤し、茶色が変色していく。
「うわぁぁぁ!!」
轟く悲鳴は教会の荘厳さを引き裂いた。
男は撃ち抜かれた足を押さえて倒れ込んだ。
『まだ使える武器は大切にしないとダメですよ、先輩。今まで一緒に働いてきた仲間なんですから』
アイリスは使用した男の拳銃を男の元に投げ返した。
太股を撃たれた男は、今までで一番の殺気を込めてアイリスを睨みつけた。負傷してもなお衰え
プ ロ
ることのない殺し屋の殺気がアイリスの肌を刺す。太股には太い血管が多い。このままだと失血死は免れない。
アイリスはナイフを仕舞い、男にゆっくりと歩み寄った。
『2つお伺いしたいことがあります。まず一つ目。ここに住み着いていた人はどうしました?』
「……そいつなら、以前俺が始末したよ。お嬢さんへの依頼は、あんたをここにおびき寄せる餌でしかない」
『そうですか。大体想像はしていました。では、二つ目。金輪際、私を見逃してくださるなら、私はこのまま帰ります。無駄な仕事はしたくありません』
「ハッ、お嬢さんはやっぱりお嬢さんってことか」
『は?』
「いいか、俺もお嬢さんと同じ殺し屋だ。標的に顔を見られた挙句に返り討ち。おまけに見逃されたとあっちゃあ、殺し屋はやってられねェ。プライドがあんだよ、こっちにもな。……それに、今までに何人の命を断ってきたかわからねェ。そんな奴が録な死に方をしないのは必然だろ?俺も、お嬢さんも。命の重みを背負った人間は、その分自分の命を軽くしちまう。殺せば殺すほど、自分に向けられる死神の鎌は増えていき、狩られやすくなる。そこんとこ理解してるはずだろ。俺もお嬢さんも。死ぬ覚悟は、とっくの昔にできてるさ」
『…………』
「ただし、さっき言ったように俺にもプライドがある。命がまだあるんだ。仕事はきっちりさせてもらうぜ」
男は床に転がっていた拳銃を取り、標的に狙いを定めた。アイリスに動揺はない。
「お嬢さんというだけある。動ける敵に獲物を渡すなんざ、爪が甘過ぎるだろ」
『…………』
「お嬢さんが拳銃やナイフを抜く前に、そして足の先を少しでも動かそうものなら、俺は迷わず引き金を引く。さあ、この状況、どうする?」
『……ひとつ、お見せしたい物があるんですが、出してもいいですか?』
「さっき言ったろ?同じことを2度も言わすな」
『じゃあいいです。……ねぇ、先輩。私を狙っていて気になりませんでしたか?何故教会内を歩き回っていたのか』
「はぁ?そんなもん、様子見だろ。お嬢さんは仕事をしに来たんだ。殺す対象の身辺を探っておくのは殺し屋としては初歩の行動だ」
『ええ。でも、それだけじゃなかったんです』
「何?」
『私はここに窃盗団のボスを殺しに来ました。依頼人は、その人にお金を取られたせいで生活がままならなくなって自殺された方のご家族だと――――――』
「いう嘘を吐いたんだけどな、俺が」
『わかってします。しかし調べたところ、実際そういう方がいたんです。他にも、会社を倒産に追い込まれた方もいたそうです。だから、決めたんです』
「何を?」
『近付く死に恐怖し苦しんで、死んでいただこうと。この人の死因は犯人などいない、事故による圧死にしようと』
「!まさか……!」
『さすが先輩。ご察しがいい』
そう言いながらポーチから何かを取り出した。
パァン
男が引き金を引いたが、アイリスは少し体を反らすだけで避けた。取り出した何かは、小さくて白くて四角い、角砂糖のようなものだった。
『爆弾を仕掛けていました。こんな感じの』
「……手段を選ばないってか」
『選んでますよ?どうやって標的を殺そうか。先輩のように狙撃一筋じゃないだけです』
「……今爆破させれば、お前も死ぬぜ?」
『死ぬのは先輩だけですよ。そもそも私は生きていませんから』
「?」
『ちなみに、これがそのスイッチだったりします』
親指で角砂糖の一角を指で跳ね上げ、顔を出した銀の小さなスイッチを押した。途端、
バァンドォン
轟音を上げて柱が爆発する。
「な」
『さようなら、先輩』
男に声が届いた頃には、その場にアイリスはおらず、ステンドグラスの窓へと走り出していた。
「チ、クショォオ!!」
アイリスは走りながらも自分の着ているコートを掴み。
男は太股を撃たれているため走るどころか、一人で歩くこともはままならない。最期の抵抗に発砲を繰り返すが、疾走するアイリスには当たらなかった。
降ってくる瓦礫を避けつつ椅子に駆け上がり、ステンドグラスに向けて跳躍したアイリスは、コートを脱ぎ様に自分の前で翻す。コートに突っ込む形で、そのままステンドグラスを割り外へと飛び出した。
黒いコートが暗くなった世界に舞った。
前回り受け身を取って体勢を立て直し、轟音を立てる背後を見遣った。支えの柱を失った教会は簡単に崩れ逝く。
『さすが、エリサさん。あの小ささで凄い威力……』
依頼が入り、受けると決めた後、エリサ・キャロルに爆弾を作ってくれるよう頼み、受け取りに行った時、
《小さくないですか?これで教会を潰せますか?》
〈なるべくかさ張らない物がいいって言ったのはアリスよ?まあ確かに、大きさは威力に比例するのは事実よ。でもね、それだけじゃないの。どんな薬を調合するかによっても威力は変わってくるんだから!〉
《はぁ……》
〈古い教会だっていうし、それならこれを柱に5個ぐらい置いとけば完璧よ!ね?爆弾って奥が深いでしょ?〉
《そうですね。では、これは頂いていきますね。依頼料はいつも通り、何回かに分けて振り込んでおきます。ありがとうございました》
〈あ~ん!お金なんていいから、たまにはゆっくり爆弾談義しましょうよ~!!〉
《また時間のある時にお聞きしますから、今日はこの辺で失礼します》
〈ちょっと~!アリス~!〉
あの人は爆弾のこととなると、本当に好奇心旺盛な子どものようにキラキラとした瞳になるんだから、困ったものだ。それはさておき。
あの人は死んだだろうか。死んでいなかったとしても、この瓦礫、そう簡単には抜け出せない。抜ける前に失血死は免れまい。
頬を伝う液体を手の甲で拭う。黒い手袋に赤い戦が引かれた。男に接近したときの弾丸が掠ったため、頬には擦過傷ができていたのだ。やはり相手が相手だけに、無傷では済まなかったようだ。先輩は偉大ということか。
『"命を奪ってきた奴が録な死に方をしないのは必然"か。確かに、そうかもしれませんね。なら、せめてその後は、安やかに眠ってください。先輩』
教会が完全に崩れ去る最期の時を見届け、その場を後にした。
瓦礫の山頂、先程まで屋根にあった十字架が
月明かりを浴びて輝いていた。
病院で撃たれた肩を診てもらうと弾が貫通していなかったため、その場で摘出手術が行われた。撃たれて直ぐに病院に来たため幸い命に別状はなかったが、しばらくは動かせないと言われた。おまけに入院を宣告されたが、病院は安全ではない。彼女がわざわざ後を追ってくるとは思えないが、用心に越したことはない。事務所兼自宅の方が安全だ。そして彼女は余計な仕事をしたがらない。なら一人で帰路に着くよりも、第三者がいるタクシーの方がいい。そう判断し、タクシーを拾って家へと向かう。
しばらくすると家へと着いた。運転手に怪我を理由に玄関まで送ってもらい、やっと一安心。
しかし、油断していた。まさかあの距離で気付かれるとは思ってもいなかった。しかも狙撃され、当てられるとは……。
「人を殺める才能に長けてる人間ってことか」
その時、事務所の電話が鳴った。
嫌な予感。しかし、出ないという選択肢を選ぶのも正直怖い。仕方なく受話器を取った。
「……もしもし」
《あぁ、やっぱり生きてましたか。残念》
予感的中。やっぱり彼女が生き残ったか。
予想はしていてもこちらの思惑がバレている可能性が高いことを考えると、そうおちおちもしていられない。おかげで心臓の音が耳をつんざく。内心を悟られないよう押し殺し、普段通りに受け答えるよう心掛ける。
「何のこと?」
《依頼された側も嘘吐きなら、依頼した側も嘘吐きですね。私を殺すよう依頼したのはあなたですね、情報屋さん》
「断定かよ。証拠は?」
《何なら右肩のその塞がっていない穴に、もう一発撃ち込みましょうか?》
「!」
見ているのか……?!こりゃあ隠しきれない、かな。
「――――――降参。あの殺し屋さんをけしかけたのは確かに俺だよ」
《一体どういうつもりか知りませんが、忠告したはずですよ?"気配に敏感な殺し屋に、ちょっかい出すのは頂けませんよ"と。そして最後にお会いしたとき、探りを入れないことを条件にあなたを見逃したのですが、》
命がいらなくなりましたか?
最後に会ったのは、怪盗God-sent child of wind"風の申し子"の一件の後の事だ。確かに、契約破棄と共にそんな脅しを受けた。
だが、俺は情報屋だ。情報がほしい。情報が俺の全てだ。
今回は彼女の戦闘スキルのデータが欲しかった。そして実力を知るためには、同じ部類の同じレベルか少し上の人間をぶつけるに限る。レベルの下な人間をぶつけても、上すぎる人間をぶつけてもデータは取れない。彼女のレベルに合わせて、それなりに優れた殺し屋を用意したが、足りなかったようだが。
「よ~く覚えてるよ。死にかけたしね。でもさ、確か君はあの時、"私の周りを探らないこと"を条件にしていたはずだよ?君の周りは探ってない。君のことを探っただけ」
《……あなたっていう人は》
「あれ?そんなこと言ってない!とか言わないの?」
《言った言わないは所詮水掛け論ですから、呆れるにとどめておきますよ。……まあ、あなたは情報屋。どんなものであれ、情報を集めるのがあなたのアイデンティティーですから、それを完全に奪ってしまうのは可哀想です。今回は片腕だけで勘弁してあげますよ》
「それはそれは、どーも。御慈悲に感謝いたします」
《ただし、私の周りを探らないことという条件は生きていますから、そのつもりで》
「りょーかい」
ブツリと、そこで電話は切れた。
受話器を置き、大きく息を吐いて椅子の背もたれに体重を任せる。前髪を掻き上げると、額には冷や汗が浮かんでいた。自然と口角が上がるのを隠しきれない。
「ほんっと、未知数だよね~。君は。……余計そそられちゃうよ」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
『血塗れアリス』は戦闘シーンが多いので、書き上げるのに時間が掛かります;
少しでも解りやすくなっていればいいのですが……
本当は「アイリスピンチの巻」のつもりですが、あまりピンチじゃない感じになってしまいました。
またいつかリベンジしたい……!
PR
この記事にコメントする
← 只今、警視庁トップ来訪中! HOME 本の読み方 →
カレンダー
12 | 2025/01 | 02 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
カテゴリー
フリーエリア
最新TB
ブログ内検索
カウンター