忍者ブログ

月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

[1]  [2]  [3]  [4

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「私の為に


       死ねる?」
『何だよ、行き成り』
「私の為に死ねる?」

同じ事を繰り返す彼女の瞳は、寂しそうだった。

『死ねない』
「そっか・・・・・・うん、そうだよね、普通」

俯く彼女に思わずため息が零れる

『お前を残して、死ねない』

彼女は驚いたように目を見開いて、顔を上げた。

『お前を残して死ねない。もし、それで俺が死んで、
 お前が後を追うって言うんなら、お前を死なせない為にも、死ねない』
「・・・・・・私が先に死んだら?」
『だから、死なせないって言ってるだろ。
 第一、お前寂しがり屋なんだから、お前の為になんないだろ』

「何でそんなこと知ってるの?」と言いたげな顔をしている。

『お前の事なら、よく知ってるつもりだよ。一緒にいたんだから』
「・・・・・・それじゃあ、これからも、一緒に居てくれる?」
『あぁ、だから、死にたくなったり寂しくなったら、俺のところへ来い』

『分かったな』と命令を含んで訊いてやると、
俯いた彼女はコクリと頷いた。
顔をよく見えず、頬は濡れていたが、口元には笑みが浮かんでいた。

(止めてやるよ、お前の為に。満たしてやるよ、お前の為に。
 そしてそれは、俺の為にも、な)
PR

月と君

「大きく見える月って近く感じるな。

でも、こんなに手を伸ばしているのに、届かない」

「ん~、そうかな?」

そう言って君は近くの川へと近付いて

「ほら、触っちゃったよ」

水面に映った月に優しく触れた

「それにね、ほら、手の中に入っちゃったよ」

今度は水を掬って、手のひらで月を抱いた


無邪気に笑う君を見て、月なんかよりも君の方が


よっぽど遠い存在になってしまったような気がした


「ほんとだな。でも、月って『冷たい』」

「夏になったら『気持ちいい』に変わるよ」

君の手の中の月を触れて愉しんだ

ある鳥の話

籠の中に入れられていた鳥は思いました。

「空を自由に飛んでいる鳥はいいな」と。

籠の中の鳥は、大きな空と自由に憧れました。


この籠から出て、いつか自由に―――――


籠の中の鳥は願いが叶い、籠から出る事ができました。

しかし、ずっと飼いならされていた鳥は

生きていく術を知りませんでした。

ずっと恋焦がれていた自由

それは確実にその鳥の首を絞めていく鎖となりました。

籠の中で憧れた、自由と言う名のシアワセ

籠の中にいた時には気付かなかったシアワセ


それから鳥は鳥篭を求める鳥となりました。

前のページ HOME


忍者ブログ [PR]
template by repe