忍者ブログ

月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

[1]  [2]  [3]  [4

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

銀世界を駆け抜ける

朝、部屋にチャイムが鳴り響く。

インターホンに出てみれば、

「よ~なぎくん!あ~そび~ましょ!!」

そこには、バカがいた。


*          *          *


『寒……ッ』

俺は朝やってきた同級生・秋木 海に連れられて、雪に覆われた町に繰り出す羽目になった。

「しっかし!雪なんて久しぶりに積もったな~!!」
元気だな、お前は
「"子どもは風の子げんキノコ!"っていうだろ?それに折角積もったんだ、遊ばなきゃ損だろ」

そう言って未だ降り続けている雪の中を「キャッホーィ!!」と叫びながら走っていた。

『……それを言うなら"元気の子"だろ』

"子ども"か……。
さっき言ったあいつの言葉を思い出す。
確かに、あんな風に遊んだりはしゃいだりするのは子どもの特権だろう。
だが俺は、そんなものをいつの間にだか捨ててきてしまった。
捨ててしまったものはもう戻らない。

元々人通りが少ない通りのせいなのか、はたまた朝早めのせいなのか、今は人っ子一人いなかった。
ここにいるのは俺たちだけ。
何故だか、銀色の世界に取り残された気分になる。

そういえば、誰だったかが俺に言っていた気がする。
"あなたはまだ子どもなんだから、無理せず子どもらしくしていいのよ?"って。
誰だったっけ……?

『……ッ!!?』

思考の沼にどっぷりと浸かっていた俺は、とても簡単に現実に引き上げられた。
視界が本当に真っ白になったと同時に冷たいという感覚に襲われる。

「アーハッハッハッハッ!!ぼうっとしてんじゃねェよ、嵐!!」
・・・・・・・・・・・・

その声を聞いて全てを理解した。
どうやら俺は、目の前のバカに雪玉をぶつけられたらしい。
人が考えごとをしているところに……

『テメェ……』
「さっきも言っただろ?折角の遊ぶチャンスなんだから、そんな辛気臭ぇ顔してんなよ!」
『……………ハァ、わかったよ』

どうやら俺は、こいつといる時はゆっくり考えごともできんらしい。

『じゃあ、遊んでやるよ』

そう言うと俺は、海に向かって走っていく。
走り際に塀の上に積もった雪に垂直に手を差し込むことを忘れない。

「ちょ、おまっ!!それ反則……ッ!!」

海は俺がしようとしていることを察知したらしい。
俺に背を向け走ろうとするが、

ぬおわっ!!?

足を滑らせ、ベシャリとその場に派手にすっ転ぶ。
俺はそれを見逃さなかった。
海のコートの帽子を掴み、塀の上からかき集めた雪をそれに詰、そのまま海に被せてやった。

つっべた!!ちょ、背中に入った!!首からも入った!!
『ケッ、お返しだ。バーカ』
いや、お返しって夜薙くん、普通お返しって同じぐらいのものを返すよね!?やりすぎじゃない!?やりすぎだろこれ!!
『うるさい。ったく、ほら』

俺は海に手を差し伸べてやる。

「お、おう。サンキュー」

海は俺の手に手を重ね、力を込めて立ち上がろうとする。
が、俺はそこで手を離してやる。
そうすると、海は体制を崩してもう一度滑るわけで、

「~~~ッ!!いったーーーッ!!嵐、おまッ」
『俺のお返しは何事も3倍返しがモットーなんだよ』

『知ってるだろ?』と口角を上げれば、「このドS鬼」と呟く声が聞こえてくる。

『最初に仕掛けたのはお前だろうが』
「でっ!」

俺は海にでこピンを一発くれてから、背を向けて走る。

『ハッ、バーカ』

という台詞をおまけ付きで。

「あ、嵐!!ンの……待てやコラー!!」


それから俺達は1時間ほど、銀世界を駆け抜けることとなるのだった。
PR

裏切り

楽しい時間になると思ってた。

「な、んで……何でだよ……ッ」
『………』

なのに、なんで、

「どうして……ッ」
『………』

どうしてだよ、

「ちくしょうッ、何で……何でこんなことにッ」
『………』

俺を、俺の隣で、冷めた瞳で見つめる俺の友人。
なあ、答えてくれよ……!
何で、
何で、

「何で裏切ったんだよォ……ッ!!」
『……"何で"?』

そいつは冷め切った瞳のまま、俺を見つめたまま、

『当たり前だろ』

感情の篭ってない声で、


だってこれ、そういうゲームじゃねェか


俺に吐き捨てた。

『それに、お前"裏切る"って意味わかって使ってるか?対戦ゲームで相手倒して、なーにが"裏切り"だ
「だってお前!ゲーム初めてだって言ったじゃん!!ゲーマーの俺の方が普通勝つじゃん!!何でお前フツーに勝ってんだよ!!」
『よくわかんねェけど、現実世界を反映てんじゃねェの?』
するかァッ!!つうか、何それ!俺の方がお前に劣ってると!?ああその通りだよ!ある意味お前に勝てる気なんてしねぇし勝てる奴もそうそういないと思うよ俺は!!


そう、俺は友人を自宅に呼んでテレビゲーム中。
驚いたことに、こいつ高校生のくせにゲームしたことがないんだとか。
だからこの俺が!いつも勉強教えてもらってる俺が!こいつに教えてやろうと思って誘った。
のにだ、操作方法を教えてやっただけで俺をあっさりKO。
テレビ画面には俺の負けを示す文字がピカピカと点滅を繰り返している。

いやね?普通さ、俺が勝たない?
だって俺、自慢じゃないけど、もしテストがゲームだったら100点満点取って学年1位の自信がある。
なのに、なのに……ッ

何で負けたーッ!!?これは、



裏切りだーッ!!
   (だから、"裏切り"じゃねェだろ、これは)

1+1=2

私たちが新しく買ったマンションの一室。それが全ての始まりでした

「『……』」

夜、私たち夫婦が寝ているとどこからか電話のなる音が聞こえるのです

「『…………』」

最初はお隣さんかと思ってたんです。でも、ある日夫が気付いてしまったんです。この電話の音は隣から聞こえてくるんじゃない、壁の中から聞こえてくるんだって

「………………;」
『…………』

私は嫌な予感がして止めたんですが、夫はハンマーを持ってきて音が聞こえる壁を壊し始めました

「……………………;」
『…………』

そしたらそこから、お札が貼られた黒電話が、コードが切れているにも拘らず鳴り響いていたのです

「…………………………;」
『…………』

私は気味が悪くて元あった場所に戻すよう言いましたが、夫はお札を剥がしてその電話に出てしまったのです

「Σッ!!?」
『…………』

「もしもし、誰なんだ」と夫が聞くと「やっと出たぁ」と言う声が
キャーーーーーーーーーーーーーーッ

キャーーーーーーーーーーーーーーッ!!
『ッ!!?』

ドガッ

ギャーーーーーーーーーーーーーーッ!!

テレビの中の観客(?)と一緒に悲鳴を上げた瞬間、俺は隣に座っている奴にソファから蹴落とされた。

ちょ、お前!!何するのッ!?怖がっている俺を、何故床に落としてひとりにするんだよッ!お願い一人にしないで!隣にいてエエエェェェッ(泣)
『うっさいんだよ、お前は!!行き成り人に抱きついてきたかと思えば、耳元で叫びやがって!気持ち悪いわ!!』
酷ッ!!何気持ち悪いって、何気持ち悪いって!!
男に抱きつかれて喜ぶわけねェだろうが

そう言いながらテレビのリモコンを机から取り上げ電源を消す。

ちょ、消すな!消すなって!
『はぁ?何でだよ』
だって、静かになるじゃん!!どこからともなく電話の音したらどうしてくれんだよ!?
安心しろ、お前がいることによって十分うるさいから。つうか近所迷惑(トゥルルルルル)』
「Σッ!!」

言葉を遮って行き成り鳴り出した携帯電話。

「ちょ、こんな時間に誰……ってお前何普通に出ようとしてんだよッ!?
『はぁ?出るのは当たり前だろ?鳴ってんだから。うるさいし』
「はぁ!?お前見てたか!?テレビ見てたのか!?」
『あ~、はいはい、見てた見てた』

と俺の忠告を簡単に流しながら、そいつは携帯を手にとって開けた。

『あ』
「な、何だよ!?知らない電話番号か!?それとも公衆電話!?」
目覚ましだった
ちょ、何でこんな時間に目覚まし!?こんな時間に起きて何するつもりだったんだよ!?てか何であの音!?
あの音の方が敏感に反応できそうだろ?間違えてセットしたんだな、うん
"うん"、ですますなーーーーーッ!!」
『うるさい。つうか、怖がりなら見るなよ』
「お前"怖いもの見たさ"って言葉、知らねェの?」
お前そんな言葉知ってたのか。じゃあ自分の家で見ろ』

俺はこいつの家にちょっくらお邪魔しています。

「だって両親旅行行ってるしさ~兄貴は仕事だしさ~、一人じゃ怖いじゃん?」
『じゃあ見るな』
よし、俺の2つ前の台詞を思い出してみようか
『騒がれていい迷惑だ。ご近所からの苦情は俺宛なんだからな』
「いいじゃん、別に。なんかおとまり会みたいで楽しいだろ?」

こいつは俺と同い年なのに一人暮らしだ。
夏休みという長期休みだといつもより寂しさを痛感するんじゃないだろうか。
俺だったら寂しくて耐えられないと思う。
いつも一人のこいつと、今日一人の俺を足して2人な日は滅多にあるもんじゃない。

それに、こいつはこんな性格だし、付き合ってやれるのは俺ぐらいだろ?
だから滅多に無い日をこいつと一緒に楽しんでみるのもいいと思ったんだ。

『……悲鳴上げてた奴が、"楽しい"ねェ』
「う、うっせーッ!!」

楽しそうにくすくすと笑いやがるこいつを見て、やっぱ来てよかったかもと思えた。
こいつが笑うのなんてレア中のレアだからな。
何かこっちまで嬉しくなってくるのは、きっとこいつが俺にとって大事な親友だからなんだと思う。



(さぁ、夜は長いんだ!!今日は寝かさねェぞ!!ゲームとかいっぱい持ってきたからな!)
(そういう台詞は女に言えや)
……アレ?ちょ、君その手に持っているものは何かね?
(《世にも〇〇な物語》DVD。夜は長いんだろ?)
(え、ちょ、俺怖がり……)
("怖いもの見たさ"はどうした。夏休み中お前をいじられないかったからな。めいいっぱいいじってやるよ
(キャーーーーーーーーーーーーーーッ!!)



前言撤回。
やっぱり、来なきゃよかった(泣)

究極の選択

「なぁおい、もし俺がこっちを選んだら、俺は天国行き?地獄行き?」

『さぁな』

「……じゃあ、こっちにしよっかなぁ~?」

『どうぞ?』

「……やっぱこっちにしよっかなぁ~?」

『どうぞ?』

「やっぱこっちに」

『いいのか?本当に』

「……やっぱりこっちに」

『後悔するなよ?お前が選んだ道だ』

「…………………………そういう言い方、ヤメテクレマセンカ?」

『だったらさっさと選べ。じゃなきゃ遊ばせろ、お前で』

「酷くない?俺むっちゃ悩んでんじゃん!?友達むっちゃ悩んでんじゃん!!」

『じゃあ俺が決めていいんだな?』

「ダメに決まってんだろうがァッ!!!」

『なら、ほれ。腹を括れ』

「ちっくしょ~~~~~ッ…………こっちだァァァッ!!!」

『…………………………』

「……………………………………………………」

『………………………………………………………………………………ハッ(嘲)』

「~~~~~~~~~~ッまた負けたァァァッ!!!」



(っていうか、お前迷いすぎ。たかがトランプで、しかもばば抜き……)
(うっせーこのポーカーフェイスヤロー!!)
(うるさいのお前。分かりやすすぎるのもお前)
(ちっくしょ~ッ!!もう一回だ!!)
(はぁ~?まだやんのかよ。つうか、元々2人でばば抜きっていうのが間違いなんだよ)

むかしむかしのことでした。

『むか~しむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました』

「……」

『おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に出掛けて行きました』

「………」

『おばあさんが川で洗濯をしていると、川の向こうから何かが流れてきます』

「…………」

『なんとそれは大きな大きな桃でした。おばあさんがそれを拾おうと腰を上げました』

「……………」

『おばあさんは誰にも見られてないか確認するために周りを見渡し、後ろを振り返ると―――――』

「………………」

『そこには、斧を振り上げるおじいさんの姿が』

ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!

『……おばあさんが最期に見たのはおじいさんの鬼のような形相、おばあさんが最期に聞いたのは自分の断末魔でした』

おしまい、と言って話を終わらせる俺の友人。
っていうか、こんな話した後でも腹立つほどケロッとしてるなぁオイ

「ちょ、お前!!何でそんな平気な顔してるの!?それに何があったのその、夫婦に!!?」

『きっと行き違いがあったんだよ。長年一緒にいると嫌な所ばかり目立つし』

「お前はいくつだ!!……ってあれ?長年一緒にいると?」

『あぁ、最近お前のそのバカさ加減に嫌気がさして――――――』

「俺おばあさんッ!!?」

ああバカだよ!!?確かにバカだけどね!!迷惑も掛けてるけどね!!
だけどさー、

俺、お前に殺意を芽生えさせるほど何かしたっけ?

『……ちなみに、結局拾われなかった桃太郎は鬼に拾われ、鬼と共に世界征服を遂げる』

「無視!!?俺そんなに何かした!!?(泣)ってか、桃太郎がラスボスに君臨すんの!?

『郷に入っては郷に従え』

「そういう問題!!?何だよ、そのむちゃくちゃな話は!!」

『俺にふったのはお前だろうが』

文句を言うな、と睨んでくる友人。
確かに、俺が言ったさ。
いっつも本読んでるし、ミステリとかサスペンスとか好きだしさー。
だから、「昔話を使った怖い話って創れたりする?」って訊いたよ?
訊いたけどさー、

リアルすぎね?よくあるよね?そういう話。身近で起こってもおかしくないような話だよね?

最初は何の変哲もない昔話だったのに、徐々に本当の姿を現してくところが何とも……
しかも、話してる本人は表情一つ変えずに話すもんだから、どこから怖くなっていくのか想像もつかない。
それが倍怖い。

『安心しろ。川で洗濯するようなばあさんも、山へ芝刈りに行くようなじいさんもいないから』

「あぁ、そっかー。そうだよなー……って、そういう問題じゃぁなーーーーーい!!!」

『うっさいなー』といいつつ、席から立ち上がり教室から出て行く。

「あ、オイ!!ちょっと待って!!こんな教室にひとりにしないでェッ!!!」

夕日で赤く染まった教室にひとり取り残された俺は、急いで友人の後を追った。

前のページ HOME 次のページ


忍者ブログ [PR]
template by repe