月灯りの下
闇の世界に差し込む光を追い求めて
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光の中へ
<今何処にいるの?>
そんなの、こっちが訊きたい。
『知らない。今適当に歩き回ってるから、いつかは着くだろ』
<いつかっていつだよ。今迎えに行くから、何か周りにある建物とか教えてよ>
嗚呼もう、イライラする。
『いらないよ、餓鬼じゃあるまいし。待てないなら帰っていいよ』
<そんなこと出来るわけないじゃないか!>
『ンなこと言われたって、」
「この餓鬼がーッ!!」
俺の言葉を途中で遮った、背後からした声に振り向くと、俺の目の前は真っ暗になった。
『――――――ったく弱い奴が突っ掛かって来るなよな』
俺が腰を下ろすと、俗に言う"蛙を押しつぶしたような声"がしたが、気にしない。
どちらかと言うと、地面に直接腰を下ろす方を気にする。
俺はポケットから懐中時計を引っ張り出す。
『もうこんな時間か……今日はもう会えない、かな』
それもこれも、こいつらのせいだ。
俺は俺なりに、頑張って待ち合わせ場所を目指していたのに。
こういうやつらは強い奴には頭を垂れ、弱い奴らには容赦ない。
それは賢い生き方なのかもしれないけど、俺には虫唾が走るような生き方だ。
だからこそ、こんなにも不器用な生き方しか出来ない。
本当に、俺はまた、こんなところでなにをやっているんだか。
俺は薄っすら赤みを帯びている空を見上げてため息を付いた。
「あ、こんなところにいた!」
顔を戻すと、そこには待ち合わせしていた相手。
何で、こんなところに……?
『……お前、こんなところでなにやってるんだよ』
「あのね!それはこっちの台詞!それに君は一体何に座ってるの!?」
『何って……人』
俺は自分の座っているものを確認してから言った。
俺が喧嘩を売ったのか、それとも俺が喧嘩を買ったのか。
そこら辺はよく分からないが、その内の2人の男を積んで椅子代わりにしている。
待ち合わせ人は地面で寝てい男を跨いで俺に近付いてきた。
「そんなことは見ればわかるよ……ほら、早くここを出よう」
自分が訊いてきたくせに、勝手なことを言うもんだ。
俺の手を引っ張って立ち上がらせると、そのまま来た道を戻っていく。
もちろん、男たちを跨いで。
「……ッ、ンの餓鬼がァッ!!」
跨いだ内の一人が気が付いたらしい。
俺の背後から拳を振るう。
右手を掴まれたままの俺は右足を軸に左足で空を切った。
「ブ……ッ」
俺の足は男の顔半分に直撃した。
『「…………」』
だが、男の顔の残りの半分には拳がめり込んでいる。
男がぶっ倒れる中、俺と俺の手を掴んだままの男は、無言で見つめ合った。
「……行こうか」
そして何事も無かったように俺の手を引いて歩き出す。
そんな背中に、俺は思ったことを訊いてみた。
『珍しいな、お前が手を出すなんて。俺、久しぶりに見た』
「……そりゃね、君に手を上げようとするからさ、ついね」
正当防衛だよ、正当防衛、とぶつぶつ呪文のように呟きがらも歩き続ける。
『……別に、俺は平気だけど』
現に俺の蹴りは当たってたんだ。
この男の助けがなくても怪我することもなかっただろう。
第一、負かして時間がさほど経っていない奴に負ける気はしない。
「そうかもしれないけど、君だって女の子なんだし。それに―――――僕が嫌だったから」
――――――嗚呼、本当にこいつは。
何気なく、本当に、何気なく。
俺を光ある方へと連れて行ってくれるんだな。
嗚呼、そうか。
こいつ
俺は思い通りに行かなくてイライラしていたんじゃなくて、光のところへ行けずにイライラしていたのかもしれない。
俺たちは薄暗い路地裏から人通りがある道へと出た。
「……あ!お姉ちゃんッ!!」
明るい所へ行き成り出たことで目を細めていた俺のところに少年が一人走り寄ってきた。
『お前、まだいたのか?』
「だって……ッ」
言い淀みながら涙を溜めた少年の頭を俺の隣にいた男が撫でた。
「もう泣かなくても大丈夫だよ。何ともなかったから、ね?」
「うん……」
そんな男の姿を見て、俺はふとあることに気付いた。
そう言えば、
『お前、何でこんなところにいたんだ?よく俺の居場所が分かったな』
「うん、電話越しに男の人の怒るような声が聞こえた後、機械が何かにぶつかる音がして電話切れたからさ、気が付いたら走り出してた。適当に走り回ってたらその子が泣きながらオロオロしてたんだよ。どうしたのか聞いたら、お姉さんが自分のせいで男の人と行っちゃったっていうから、君だと思って行ってみたら、ビンゴだったってこと」
僕の勘も捨てたもんじゃないね、と笑う男。
そんな男を少し呆れた目で見ていると、少年がおずおずと何かを差し出してくる。
「あの、これ、お姉ちゃんの携帯。ごめんね、僕のせいで傷ついちゃってて……」
『別に構わないよ、壊れたわけじゃないし。それにそれはお前のせいじゃないだろ』
そう、俺が電話で話しをしていた時、俺が伸した連中がこの少年に喧嘩を売っていた。
どうやら少年と連中はぶつかってしまったらしい。
少年は謝ったものの、連中の怒りは治まらなかったようだ。
自分たちも前を見ていなかったことを棚に上げ、少年を力任せに投げ飛ばした。
その先に偶然俺がいて、俺はその少年を受け止めた。
そして、その時に携帯が落ちて切れてしまったようだ。
と同時に、俺の中の何かも一緒に切れたわけだが。
だから泣くな、と隣にいる男のマネをして頭を撫でてやると「ありがとう」と言って笑った。
その笑顔は、眩しかった。
少年と別れて、俺たちは何処へ向かうわけでもなく歩き出した。
「嬉しそうだったね、あの子」
『何が?』
「君に頭を撫でられた時だよ」
『あー……』
俺はあの少年の笑顔をもう一度思い返してみる。
……何となく、自分で肯定するのは気が引けた。
『――――――そうか?』
「うん、そうだよ」
にこにこしながら言うこいつは、さっきからこの調子だ。
何か気持ち悪い。
『さっきから何笑ってんだ、気持ち悪い』
「その言い方は酷いなー。たださ、優しいなと思って。君が」
『は?俺はただ、お前の真似しただけだけど』
「違うよ、そっちもだけどそっちじゃなくて」
何が言いたいんだ、こいつは。
「だってあの子のためにわざわざ場所移したんでしょ?優しいなって」
そう言ってこっちを見ながら笑いかけてくるこいつの笑顔に心臓が跳ねる。
『……別に、俺はただ、人通りがあるから暴れにくいと思っただけだッ!』
それにお前にその言葉を言われたくない、と毒づく俺の顔はきっと真っ赤だっただろう。
夕日に紛れていてくれればいいと願ったが、
「はいはい、そういうことにしといてあげるよ」
こいつにはあまり意味のない願いだったらしい。
おかしそうに笑ってるこいつに腹が立ってくる。
『ッもういい!お前なんて知るか!!』
俺は少し早く歩いて隣に並んでいた男を抜かした。
「あ、ちょっと!」
俺に合わせて足を速めるのを見て、俺は走り出した。
「ちょっと待ってよ!走ることないだろ!僕今日は結構走ったんだからね!」
そんなことを俺の背中に投げかけてくるのが嬉しくて、面白くて。
俺はあいつがついて来れる速さで、しばらくそのまま走り続けた。
――――――こいつがいれば、俺は光の中でも笑っていられる。
そんな気がして。
そんなの、こっちが訊きたい。
『知らない。今適当に歩き回ってるから、いつかは着くだろ』
<いつかっていつだよ。今迎えに行くから、何か周りにある建物とか教えてよ>
嗚呼もう、イライラする。
『いらないよ、餓鬼じゃあるまいし。待てないなら帰っていいよ』
<そんなこと出来るわけないじゃないか!>
『ンなこと言われたって、」
「この餓鬼がーッ!!」
俺の言葉を途中で遮った、背後からした声に振り向くと、俺の目の前は真っ暗になった。
* * *
『――――――ったく弱い奴が突っ掛かって来るなよな』
俺が腰を下ろすと、俗に言う"蛙を押しつぶしたような声"がしたが、気にしない。
どちらかと言うと、地面に直接腰を下ろす方を気にする。
俺はポケットから懐中時計を引っ張り出す。
『もうこんな時間か……今日はもう会えない、かな』
それもこれも、こいつらのせいだ。
俺は俺なりに、頑張って待ち合わせ場所を目指していたのに。
こういうやつらは強い奴には頭を垂れ、弱い奴らには容赦ない。
それは賢い生き方なのかもしれないけど、俺には虫唾が走るような生き方だ。
だからこそ、こんなにも不器用な生き方しか出来ない。
本当に、俺はまた、こんなところでなにをやっているんだか。
俺は薄っすら赤みを帯びている空を見上げてため息を付いた。
「あ、こんなところにいた!」
顔を戻すと、そこには待ち合わせしていた相手。
何で、こんなところに……?
『……お前、こんなところでなにやってるんだよ』
「あのね!それはこっちの台詞!それに君は一体何に座ってるの!?」
『何って……人』
俺は自分の座っているものを確認してから言った。
俺が喧嘩を売ったのか、それとも俺が喧嘩を買ったのか。
そこら辺はよく分からないが、その内の2人の男を積んで椅子代わりにしている。
待ち合わせ人は地面で寝てい男を跨いで俺に近付いてきた。
「そんなことは見ればわかるよ……ほら、早くここを出よう」
自分が訊いてきたくせに、勝手なことを言うもんだ。
俺の手を引っ張って立ち上がらせると、そのまま来た道を戻っていく。
もちろん、男たちを跨いで。
「……ッ、ンの餓鬼がァッ!!」
跨いだ内の一人が気が付いたらしい。
俺の背後から拳を振るう。
右手を掴まれたままの俺は右足を軸に左足で空を切った。
「ブ……ッ」
俺の足は男の顔半分に直撃した。
『「…………」』
だが、男の顔の残りの半分には拳がめり込んでいる。
男がぶっ倒れる中、俺と俺の手を掴んだままの男は、無言で見つめ合った。
「……行こうか」
そして何事も無かったように俺の手を引いて歩き出す。
そんな背中に、俺は思ったことを訊いてみた。
『珍しいな、お前が手を出すなんて。俺、久しぶりに見た』
「……そりゃね、君に手を上げようとするからさ、ついね」
正当防衛だよ、正当防衛、とぶつぶつ呪文のように呟きがらも歩き続ける。
『……別に、俺は平気だけど』
現に俺の蹴りは当たってたんだ。
この男の助けがなくても怪我することもなかっただろう。
第一、負かして時間がさほど経っていない奴に負ける気はしない。
「そうかもしれないけど、君だって女の子なんだし。それに―――――僕が嫌だったから」
――――――嗚呼、本当にこいつは。
何気なく、本当に、何気なく。
俺を光ある方へと連れて行ってくれるんだな。
嗚呼、そうか。
こいつ
俺は思い通りに行かなくてイライラしていたんじゃなくて、光のところへ行けずにイライラしていたのかもしれない。
俺たちは薄暗い路地裏から人通りがある道へと出た。
* * *
「……あ!お姉ちゃんッ!!」
明るい所へ行き成り出たことで目を細めていた俺のところに少年が一人走り寄ってきた。
『お前、まだいたのか?』
「だって……ッ」
言い淀みながら涙を溜めた少年の頭を俺の隣にいた男が撫でた。
「もう泣かなくても大丈夫だよ。何ともなかったから、ね?」
「うん……」
そんな男の姿を見て、俺はふとあることに気付いた。
そう言えば、
『お前、何でこんなところにいたんだ?よく俺の居場所が分かったな』
「うん、電話越しに男の人の怒るような声が聞こえた後、機械が何かにぶつかる音がして電話切れたからさ、気が付いたら走り出してた。適当に走り回ってたらその子が泣きながらオロオロしてたんだよ。どうしたのか聞いたら、お姉さんが自分のせいで男の人と行っちゃったっていうから、君だと思って行ってみたら、ビンゴだったってこと」
僕の勘も捨てたもんじゃないね、と笑う男。
そんな男を少し呆れた目で見ていると、少年がおずおずと何かを差し出してくる。
「あの、これ、お姉ちゃんの携帯。ごめんね、僕のせいで傷ついちゃってて……」
『別に構わないよ、壊れたわけじゃないし。それにそれはお前のせいじゃないだろ』
そう、俺が電話で話しをしていた時、俺が伸した連中がこの少年に喧嘩を売っていた。
どうやら少年と連中はぶつかってしまったらしい。
少年は謝ったものの、連中の怒りは治まらなかったようだ。
自分たちも前を見ていなかったことを棚に上げ、少年を力任せに投げ飛ばした。
その先に偶然俺がいて、俺はその少年を受け止めた。
そして、その時に携帯が落ちて切れてしまったようだ。
と同時に、俺の中の何かも一緒に切れたわけだが。
だから泣くな、と隣にいる男のマネをして頭を撫でてやると「ありがとう」と言って笑った。
その笑顔は、眩しかった。
* * *
少年と別れて、俺たちは何処へ向かうわけでもなく歩き出した。
「嬉しそうだったね、あの子」
『何が?』
「君に頭を撫でられた時だよ」
『あー……』
俺はあの少年の笑顔をもう一度思い返してみる。
……何となく、自分で肯定するのは気が引けた。
『――――――そうか?』
「うん、そうだよ」
にこにこしながら言うこいつは、さっきからこの調子だ。
何か気持ち悪い。
『さっきから何笑ってんだ、気持ち悪い』
「その言い方は酷いなー。たださ、優しいなと思って。君が」
『は?俺はただ、お前の真似しただけだけど』
「違うよ、そっちもだけどそっちじゃなくて」
何が言いたいんだ、こいつは。
「だってあの子のためにわざわざ場所移したんでしょ?優しいなって」
そう言ってこっちを見ながら笑いかけてくるこいつの笑顔に心臓が跳ねる。
『……別に、俺はただ、人通りがあるから暴れにくいと思っただけだッ!』
それにお前にその言葉を言われたくない、と毒づく俺の顔はきっと真っ赤だっただろう。
夕日に紛れていてくれればいいと願ったが、
「はいはい、そういうことにしといてあげるよ」
こいつにはあまり意味のない願いだったらしい。
おかしそうに笑ってるこいつに腹が立ってくる。
『ッもういい!お前なんて知るか!!』
俺は少し早く歩いて隣に並んでいた男を抜かした。
「あ、ちょっと!」
俺に合わせて足を速めるのを見て、俺は走り出した。
「ちょっと待ってよ!走ることないだろ!僕今日は結構走ったんだからね!」
そんなことを俺の背中に投げかけてくるのが嬉しくて、面白くて。
俺はあいつがついて来れる速さで、しばらくそのまま走り続けた。
――――――こいつがいれば、俺は光の中でも笑っていられる。
そんな気がして。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
どうも、渡月です。
以前の「小説モドキ」は短い話を書いた(つもり)なので、今回は長いのを書いてみました。
……本当に長いッ!!
これでも端折ったんですよ、「僕」のモノローグとか!←
今回は『俺』をメインにして「僕」の語りはなしにしました。
「俺僕シリーズ」書くと長くなるな~、何て思いながら(確信犯か!)
でも今回はほのぼの的な雰囲気にしたかったんで、シリアス部分はないですよ、ね……?
最初はやっぱり『俺』が血の気多い人なので、登場シーンがあれですが。
ほのぼのになってました、か?
……はい、なってなかったですね。スミマセンでした。orz
というか、いい加減キャラに名前付けた方が読みやすいですかね?
皆さんに想像の余地を持っていただこうと付けなかったんですが(殴)グハッ
すみませんでした、ごめんなさい。僕にネーミングセンスが無いからです。
いや、でも5割程度ですよ?←
後の5割は、名前を誰か知り合いなり、友達なり、入れていただけたら
少しは楽しんでいただけるかな、と思ったのも事実です。
でも少し読みにくいかな~、という気がしないでもないという今日この頃。
取敢えず、考えてみることにします。
それでは最後になりましたが、
ここまで読んでくださった心の広い方々、どうもありがとうございました。
またのお越しをお待ちしております。
どうも、渡月です。
以前の「小説モドキ」は短い話を書いた(つもり)なので、今回は長いのを書いてみました。
……本当に長いッ!!
これでも端折ったんですよ、「僕」のモノローグとか!←
今回は『俺』をメインにして「僕」の語りはなしにしました。
「俺僕シリーズ」書くと長くなるな~、何て思いながら(確信犯か!)
でも今回はほのぼの的な雰囲気にしたかったんで、シリアス部分はないですよ、ね……?
最初はやっぱり『俺』が血の気多い人なので、登場シーンがあれですが。
ほのぼのになってました、か?
……はい、なってなかったですね。スミマセンでした。orz
というか、いい加減キャラに名前付けた方が読みやすいですかね?
皆さんに想像の余地を持っていただこうと付けなかったんですが(殴)グハッ
すみませんでした、ごめんなさい。僕にネーミングセンスが無いからです。
いや、でも5割程度ですよ?←
後の5割は、名前を誰か知り合いなり、友達なり、入れていただけたら
少しは楽しんでいただけるかな、と思ったのも事実です。
でも少し読みにくいかな~、という気がしないでもないという今日この頃。
取敢えず、考えてみることにします。
それでは最後になりましたが、
ここまで読んでくださった心の広い方々、どうもありがとうございました。
またのお越しをお待ちしております。
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