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月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

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さっさと帰ってきなさいよ、この

建物から外に出て、空を見上げる。
夜空を覆う雲たちが、風に漂っている。

『寒……』

秋だと思っていたが、認識を改めなければならないみたいだ。
風が冷たい。体が冷えていく。心は――――――

とっくの昔に冷え切っている。

早く帰って暖かいコーヒーが飲みたい。
私はつい今し方出てきた、"仕事"を終えたオフィスビルを後にした。



街灯が少ないレンガ道を歩いて、これまた一段と暗い陰になった道へ入っていく。
見えてきたのは蔦に所々覆われたレンガ造りの小さなマンション。
そこだけ時間に置いていかれたような場所は、私の家でもあり、一番のお気に入りの隠れ家だ。

かなり古いマンションなのだが、私はその雰囲気が好きだった。
おまけに古いこともあって安いし、入っている人も少ない。
                           ポ リ ス
お金に困ることは無いが、商売道具も安くはないし、いつ"警察屋"に見つかるかもわからない身だ。
用心の為に貯めておきたいし、人が少ないというのも見つかりにくいという点ではありがたい。
私にとっては好物件だった。

私はエレベータに乗り込み、自分の部屋がある階のボタンを押す。
このエレベータもかなり古い型で、時々大丈夫かと思うときもある代物だったりする。
チーンという今ではもう聞けないような古いベルの音がして、これまた今ではもう聞けないガラガラという音を残して扉が開く。


私は鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。
扉の先はいつも何も見えない闇が広がっていたのに、

「あ、おかえりー」

光と共に、ここにいるはずのない、よく知る声が広がってきた。

『……何でここにいるんですか?』
「何でって、もし何かあったらここに来てもいいって、場所と鍵を渡したのはあなたでしょ」

そう、確かに渡した。
私の職業は"殺し屋"だ。
足がつかないようにはしているが、どこから"警察屋"に嗅ぎ付けられるかわかったもんじゃない。
そしてその目が、唯一といっても過言ではない、私の本名を知る私の友人に向けられる可能性だってゼロではない。
もしもの為にと一番の隠れ家であるここの場所と合鍵を渡しておいたのだ。

『ッ、もしかして"警察屋"にばれたんですか?』
いんや~?ただ近くに用があって、寒かったから避難させてもらっただけ

だから安心しなさい、とのたまった友人に思わず脱力する。

『……そんな理由で、私の隠れ家に来て――――――』
「はいはい、文句は後で聞くから、取敢えずシャワーでも浴びて温まってきなよ。風邪ひくよ?」
『ちょ、ちょっと!』

文句を言うために口を開いたのに、彼女は私の言葉を遮って背中をバスルームへとぐいぐい押していく。
というか、ここ私の家なんですけど。
私は荷物を持ったまま、バスルームに押し込まれてしまった。

『……まったく、一体何なんだか』

私も体を早く温めたいと思っていたし、正しいのかはさて置き、友人のお言葉に甘えてシャワーを浴びることにした。

『と、その前に携帯』

私は携帯の電源を入れた。
仕事の依頼はノートパソコンの方に全部来るのだが、私用は全部携帯に来る。
仕事に感情は持ち込まなし、持ち込めない。
それが命取りになる事だってあるのだ。
だから私は仕事がある日は一日中電源を切っているのだ。

電源が入って少し時間が経つと、携帯が震えた。
……メールと、留守電?
私は先にメールを開いた。

<とっても美味しいケーキ屋さんがあるんだけど、よかったら行かない?ショートケーキも美味しいんだけど、チョコケーキも捨てがたいんだよ~!>

行き成り訪ねてきた、今向こうの部屋にい友人からだ。
送られてきたのは丁度一日前、つまり昨日の夜。
……嗚呼、やっぱり見なくてよかった。

今度は留守電を聞いてみる。
これも同じ人物から。

<何処にいるんだー?……今日は特に冷えるし、さっさと帰ってきなさいよ、この――――――>



馬鹿親友




私はドアに背を預け、留守電を消去するかという携帯からの問いかけに、私は迷うことなくNoと選択した。
こんな私を、"普通に"怒ってくれる人がいたとは。
とっくの昔に冷え切っていた心をいとも簡単に暖められるのは、この先もきっと彼女だけだろう。
そう思うと、何だか笑えてきた。


「――――――そういえば、とっても美味しいケーキたっくさん買ってきたから。今夜はケーキパーティーよ」

人の命を奪う事を仕事にしている私が、こんなこと思ってはいけないとわかっているのに。
私にもまだ人間らしい部分が残っていたらしい。

『――――――わかりました。温まったらすぐに出ますね。美味しいコーヒー煎れてあげます』

扉越しに聞こえてきた声に、扉越しに返事を返す。
聞こえるかどうかは分からなかったが、小さく『ありがとう』と言う言葉も添えることは忘れなかった。
そして「どういたしまして」という、これまた小さい言葉を聞いてから、私は扉から背を離し早く体を温めることにした。





(そうだ!今度買い物行こうよ。私、新しいコート欲しかったんだ~)
(奇遇ですね、私もそろそろコートがいるかと思ってたんですよ)
(なら決まり!私、近くに美味しいパフェがある店知ってるんだ!帰りに寄ろうね!)
(ケーキ食べながらパフェの話しですか。というか、どちらが目的かわかりませんね、それじゃあ。……まぁ、いいですよ)

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


どうも、渡月です。

今回もダラダラダラダラ長くなってしまいましたorz
以前書いた小説モドキ『ようするに』と同じ殺し屋ヒロインさんと友人さんの話で、
時間軸としては『ようするに』よりも結構前の話になります。
本当は『ようするに』の続編を書こうかと思ったんですが、
どう転んでもベタなオチにぶつかるので辞めました←
と、取敢えず!ギャグにはなりませんでしたが、
"シリアス→ほのぼの"になれてればいいなぁと思ってます。


ここで少し補足させていただきます。
友人さんの雰囲気が前と少し違って同一人物ではない感じがした方もおられると思います。
むしろここまで読んでいただいて、「あ、あれ同一人物なんだ~」と思った方もいると思います。
友人さんはヒロインさんの職業を快く思ってません。
だから仕事終わりのヒロインさんには、怒った態度をとってしまっています。
今度この友人さん視点の話も書いてみたいなぁ、なんて無謀なことも思ってたりします←

そして、もう一つ補足を……
この話は、一応外国設定です!!(殴)
いや、伝わりにくいですもんね、ハイ、スミマセンでした(土下座)


というか、いい加減やっぱり名前付けた方がいいのかな~
でも僕、ネーミングセンスないんです(本音が!!)

こんな感じでこれからも続いていったりすると思いますが、
お付き合いしてくださる方はどうぞお付き合いください。

それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。
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