月灯りの下
闇の世界に差し込む光を追い求めて
[21] [22] [23] [24] [25] [26] [27] [28] [29] [30] [31]
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
風邪っぴき
「……風邪ってさぁ、他の奴にうつせば治るってホントかな?」
『科学的に言うとないだろうな、よくわかんねェけど』
「じゃあ科学的に言わなかったら?」
『……ただ単にそう見えるだけ』
「うん、バカにでもよく分かる説明だ。じゃあさ、バカは風邪引かないって嘘だよな?」
『嘘だろうな』
「きっぱり言われると悲しくなっちゃうんですけど!涙出てくるんですけど!」
『泣いてバカが治るならいいんだけどな(遠い目)』
「痛い!!その目が痛い!!いつでも容赦ないのなお前!!」
『(笑)』
「何か腹立つわ」
『確か理科の先生が「バカは風邪ひかないって言うけどアレは嘘だから。バカは健康管理できないから風邪ひくんだよ」なんてこと言ってたな』
「ああ、言ってた言ってた。俺泣きたくなったもん」
『あれも嘘だよな。体の中にその風邪に対する抗体がないから風邪ひくんだから』
「……なんか俺、救われた気分!お前に救われるようなこと言われるの初めてカモ!!」
『……今すぐ地獄に堕とそうか?』
「そう照れるなって~vかわいい奴めvV」
『……待ってろ、今バケツいっぱいに冷水を用意してやるから』
「わ~わ~わ~っ、すみませんでした!!ホントスミマセンデシタ!!さすがに俺も死んじゃうから!!」
『だってお前、逝きたいんだろ?手伝ってやるよv(ニッコリ)』
「逝きたくない!!俺はまだ生きたいデス!!……あ、あぁ~!!そういえば、人に風邪うつすと治るってホントかな~?!」
『……それ最初に言った』
「あり?」
『風邪ひいてる人の傍にいる人が風邪がうつる確率は高いのは当たり前だし、風邪だってすぐに発症するわけじゃない。その人が治る頃がちょうど発症しやすいんだろう。ま、うつされてることに変わりはないがな』
「………なるほどね~」
『……うつして治るんだったら俺にうつして楽になろうと思ったのにな、って顔してるぞ、お前』
「え、マジ?いけね、顔に出ちまって……って、あ;」
『お前みたいなバカは扱い易くていいよ。じゃ、オダイジニ』
「ちょ、ちょっと待って!!病人の俺を置いてどこ行くの!!?」
『帰るに決まってるだろ?こちとらうつされに来たんじゃねェんだよ』
「待って待って待って!!分かったうつさないから!!絶対うつらないように病原体に言い聞かすから行かないでェ!!寂しくて死ぬ!!」
『ウサギか、お前は。第一、どうやって言い聞かす気だ、ンなもん』
呆れながらさっきまでいた位置まで戻り、『さっさと寝ろ』と言ってくる俺の友人。
素直じゃないこいつの優しさが、風邪をひいて弱っている俺にはいい薬になると思う。
『科学的に言うとないだろうな、よくわかんねェけど』
「じゃあ科学的に言わなかったら?」
『……ただ単にそう見えるだけ』
「うん、バカにでもよく分かる説明だ。じゃあさ、バカは風邪引かないって嘘だよな?」
『嘘だろうな』
「きっぱり言われると悲しくなっちゃうんですけど!涙出てくるんですけど!」
『泣いてバカが治るならいいんだけどな(遠い目)』
「痛い!!その目が痛い!!いつでも容赦ないのなお前!!」
『(笑)』
「何か腹立つわ」
『確か理科の先生が「バカは風邪ひかないって言うけどアレは嘘だから。バカは健康管理できないから風邪ひくんだよ」なんてこと言ってたな』
「ああ、言ってた言ってた。俺泣きたくなったもん」
『あれも嘘だよな。体の中にその風邪に対する抗体がないから風邪ひくんだから』
「……なんか俺、救われた気分!お前に救われるようなこと言われるの初めてカモ!!」
『……今すぐ地獄に堕とそうか?』
「そう照れるなって~vかわいい奴めvV」
『……待ってろ、今バケツいっぱいに冷水を用意してやるから』
「わ~わ~わ~っ、すみませんでした!!ホントスミマセンデシタ!!さすがに俺も死んじゃうから!!」
『だってお前、逝きたいんだろ?手伝ってやるよv(ニッコリ)』
「逝きたくない!!俺はまだ生きたいデス!!……あ、あぁ~!!そういえば、人に風邪うつすと治るってホントかな~?!」
『……それ最初に言った』
「あり?」
『風邪ひいてる人の傍にいる人が風邪がうつる確率は高いのは当たり前だし、風邪だってすぐに発症するわけじゃない。その人が治る頃がちょうど発症しやすいんだろう。ま、うつされてることに変わりはないがな』
「………なるほどね~」
『……うつして治るんだったら俺にうつして楽になろうと思ったのにな、って顔してるぞ、お前』
「え、マジ?いけね、顔に出ちまって……って、あ;」
『お前みたいなバカは扱い易くていいよ。じゃ、オダイジニ』
「ちょ、ちょっと待って!!病人の俺を置いてどこ行くの!!?」
『帰るに決まってるだろ?こちとらうつされに来たんじゃねェんだよ』
「待って待って待って!!分かったうつさないから!!絶対うつらないように病原体に言い聞かすから行かないでェ!!寂しくて死ぬ!!」
『ウサギか、お前は。第一、どうやって言い聞かす気だ、ンなもん』
呆れながらさっきまでいた位置まで戻り、『さっさと寝ろ』と言ってくる俺の友人。
素直じゃないこいつの優しさが、風邪をひいて弱っている俺にはいい薬になると思う。
PR
血の涙に祈る
何で……何でなんだよ
あの子はただ、あんたと居れれば幸せだったのに
そんな瑣末のような幸せを
何で、あんたが壊してるんだよ
唯一守れる存在のあんたが、何で……
あんたは、この子といるだけじゃ満足できなかったって言うのかよ
こんなことが『等価交換』?
ふざけんなよ……!
こんなことが、『等価交換』であってたまるかよッ!!
人の命に代わりはない
『等価交換』なんてできないんだ
なのに、2つの尊い命を、大切な命を使って1つの生命体を創り出すなんて
こんな事のどこが『等価交換』なんだよッ!!
確かに人は何かを犠牲にして何かを得ている、『等価交換の原則』だ
でも犠牲にしていいものと悪いものがあるだろ……?
あの子はあんなにあんたのことを愛していたのに
あんたはこれ以上ないような愛をあの子からもらっていたのに
あんたは……あんたは、何やってんだよ!!
結局何を言ったところで、何も変わらない、何もしてやれない
無力な自分に嫌気がさす
何が兵器だ、何が悪魔だ、何が―――――――――『大衆のため』だ
あぁ、本当に自分はちっぽけな人間なんだな
そんな俺の頬を伝うのは、穢れきった血の涙
あの子はただ、あんたと居れれば幸せだったのに
そんな瑣末のような幸せを
何で、あんたが壊してるんだよ
唯一守れる存在のあんたが、何で……
あんたは、この子といるだけじゃ満足できなかったって言うのかよ
こんなことが『等価交換』?
ふざけんなよ……!
こんなことが、『等価交換』であってたまるかよッ!!
人の命に代わりはない
『等価交換』なんてできないんだ
なのに、2つの尊い命を、大切な命を使って1つの生命体を創り出すなんて
こんな事のどこが『等価交換』なんだよッ!!
確かに人は何かを犠牲にして何かを得ている、『等価交換の原則』だ
でも犠牲にしていいものと悪いものがあるだろ……?
あの子はあんなにあんたのことを愛していたのに
あんたはこれ以上ないような愛をあの子からもらっていたのに
あんたは……あんたは、何やってんだよ!!
結局何を言ったところで、何も変わらない、何もしてやれない
無力な自分に嫌気がさす
何が兵器だ、何が悪魔だ、何が―――――――――『大衆のため』だ
あぁ、本当に自分はちっぽけな人間なんだな
そんな俺の頬を伝うのは、穢れきった血の涙
迷子の迷子の子猫ちゃん
迷子の迷子の子猫ちゃん
夢を見失ってしまって
歩く道が分からなくなって
行きたい場所が分からなくなってしまった
迷子の迷子の子猫ちゃん
犬のお巡りさんに助けを求めても助けてなんかくれなくて
未だに迷子の子猫ちゃん
自分の夢は自分で探すしかない
見失ってしまったのなら、自分で見つけ出すしかない
その夢は誰のものでもない
――――――――――――――――自分のものなのだから
探しに探して、探しぬいて
たとえどれだけ這いずりまわったとしても
たとえどれだけ醜くても
たとえどれだけ泥だらけになったとしても
夢を抱き続けなくちゃいけない
夢を探し出して叶えなくちゃならない
だって夢を持たないってとても悲しくて、とても苦しいものだから
夢を持てなくなったら、オシマイなんだ
夢を見失ってしまって
歩く道が分からなくなって
行きたい場所が分からなくなってしまった
迷子の迷子の子猫ちゃん
犬のお巡りさんに助けを求めても助けてなんかくれなくて
未だに迷子の子猫ちゃん
自分の夢は自分で探すしかない
見失ってしまったのなら、自分で見つけ出すしかない
その夢は誰のものでもない
――――――――――――――――自分のものなのだから
探しに探して、探しぬいて
たとえどれだけ這いずりまわったとしても
たとえどれだけ醜くても
たとえどれだけ泥だらけになったとしても
夢を抱き続けなくちゃいけない
夢を探し出して叶えなくちゃならない
だって夢を持たないってとても悲しくて、とても苦しいものだから
夢を持てなくなったら、オシマイなんだ
【言の葉バトン】 -2巻目-
*置いてある言葉に、貴方なりの言葉を付け足してください。
*長さは問いません。自由に世界を表現してください。
>零れていく
すり抜けていく
俺の掌から大切なモノが
結局何も守れずに、そこに残るは後悔と責め
>差し出したのは
己の手
僕の手をとるかとらないかはあなた次第
さぁ、お嬢さん、お手をどうぞ?
>普段と違う
変わらずの日常
否、それは違いに気づけなかっただけのこと
>声にならない
言葉にならない
伝える術を知らなくて
胸に秘めたままのコトバが残る
>冷え切った
心
解かす方法を知っているのは君だけなんだ
>そっと見つめる
その先にいるのは君
君は気づいてなかっただろうけど、僕はずっと君を見ていたんだよ
>磨り減った
スニーカー
今まで一体どれほど走ってきたのか
>片道だけの
切符を手にし、乗り込んだ電車
もうあの時、あの場所へは戻れない
振り返らない覚悟は、出来た
>散らかした
部屋
自分の物で溢れ返った場所だけが、自分の居場所だと思えるから
>空回り
そんな元気は見たくない
本当の元気が見たいんだ
大丈夫、僕はいつまでも待ってるよ
だから無理しなくていいんだよ
>電池の切れた
人形は、重力に従い地に崩れ落ちた
この人形の命(電池)を握っているのは、紛れもない―――――俺自身
>夢の続きは
もう見ない
見るとしたら、それは現実で拝んでやるよ
*最後に、この巻物(バトン)を渡したい方が居れば。
⇒フリーダムで←
*以上です。お疲れ様でした。
*あなたの世界は描けましたでしょうか?
⇒久しぶりのせいでしょうか?何だか自分の世界が分からなくなってきました;
*長さは問いません。自由に世界を表現してください。
>零れていく
すり抜けていく
俺の掌から大切なモノが
結局何も守れずに、そこに残るは後悔と責め
>差し出したのは
己の手
僕の手をとるかとらないかはあなた次第
さぁ、お嬢さん、お手をどうぞ?
>普段と違う
変わらずの日常
否、それは違いに気づけなかっただけのこと
>声にならない
言葉にならない
伝える術を知らなくて
胸に秘めたままのコトバが残る
>冷え切った
心
解かす方法を知っているのは君だけなんだ
>そっと見つめる
その先にいるのは君
君は気づいてなかっただろうけど、僕はずっと君を見ていたんだよ
>磨り減った
スニーカー
今まで一体どれほど走ってきたのか
>片道だけの
切符を手にし、乗り込んだ電車
もうあの時、あの場所へは戻れない
振り返らない覚悟は、出来た
>散らかした
部屋
自分の物で溢れ返った場所だけが、自分の居場所だと思えるから
>空回り
そんな元気は見たくない
本当の元気が見たいんだ
大丈夫、僕はいつまでも待ってるよ
だから無理しなくていいんだよ
>電池の切れた
人形は、重力に従い地に崩れ落ちた
この人形の命(電池)を握っているのは、紛れもない―――――俺自身
>夢の続きは
もう見ない
見るとしたら、それは現実で拝んでやるよ
*最後に、この巻物(バトン)を渡したい方が居れば。
⇒フリーダムで←
*以上です。お疲れ様でした。
*あなたの世界は描けましたでしょうか?
⇒久しぶりのせいでしょうか?何だか自分の世界が分からなくなってきました;
子供の幻想と大人の賢さと
ちらちらと舞い散る桜は俺に別世界を思わせた。
俺の視界には、舞い散る桜とその大元の桜の木、舞い散っている桜の舞台である道一本しか映っていない。
人っ子一人いやしない。
『桜、か……』
こんな幻想的な世界に一人取り残された気分に浸っていると、桜吹雪の向こうに幼い子供2人を見た。
否、正確には―――――視た。
その子供達は紛れもない、幼い時の俺とアイツ。
楽しそうに舞い散る桜を追いかけている。
(そういえば、桜の花びらをたくさん集めた方が勝ちだと、馬鹿な競争もしたな)
あの頃はまだ何でも信じ、疑うことも知らず、無邪気だった。
桜の花びらが地面に落ちる前に捕まえられれば幸せになれる、という言葉を信じて必死に捕まえようと走り回った。
桜の花の方が花びらよりも幸せになれると、花びらに紛れて花のままで散っていく桜を必死に探していた。
いつからだろう
いつから俺たちは、そんなことじゃ“幸せ”なんてモノは得られないと
そんなものは、所詮儚い夢であって、“幸せ”なんてすぐに散ってしまうものだと
一体いつから知ってしまったのだろう。
(否、“俺たち”じゃなくて“俺”だけか)
“大人になるということは、幻想を賢さと取りかえる事だ”と何かで読んだが、その通りだと思う。
本当は、幻想を見続けていたかったし、そんな賢さならいらないと思うけど、どうも時の流れってやつはそれを許してはくれないらしい。
幻想はおのずと賢さに掻き消されていく。
昔はそんなこと、これっぽっちも考えたことなんてなかった。
このまま大人になっていくんだと、このままでいられるんだと思ってた。
桜吹雪の向こうから、幼いアイツが走ってこちらにやってくる。
『俺も末期だな』
自嘲しながら呟いたが、自分の幻想なんだから別にいいだろうと割り切った。
幻想くらい好きにさせてほしい。
「何やってんの?こんなところで」
目の前にやってきた幼いアイツ、ではなく、今のアイツを見て驚いた。
それは幻想のそれではなく、現実のそれだったから。
『……お前、こそ、なんでこんなとこにいんだよ』
「たまたま、かな。桜が見頃だってテレビで言ってたから見に来たの」
「それにしてもすごいね~」と言いつつ舞い散る桜の花びらの中をくるくると手を広げて回る。
『……ガキ』
「何を~~~!」
俺の小さなつぶやきが聞こえたらしい。
眉を少し吊り上げるあいつに近寄って、その頭に手を伸ばす。
『ほら見ろ、ガキみたいな事やってっから……』
『「花びら付いてるだろうが/付いてるよ」』
俺がこいつの頭についた桜の花びらを取ってやると同時に、こいつも俺の頭に手を伸ばし同じ言葉を発した。
声がハモッたことに驚いていると、
目の前に俺の頭に乗っていたと思われる花びらを突き付けてくる。
「ほら。自分だってガキみたいな事してたんじゃないの~?」
『お前と一緒にすんな』
ニヤニヤ顔で言うこいつの頭に軽くチョップを落としてやる。
「ちぇ~」と言いつつチョップが落とされた頭をさする。
……別に痛くないだろうに。
「……でも、これで2人とも幸せになれるね」
『あ?』
「ほら、昔桜の花びらが地面に落ちる前にキャッチできたら幸せになれるっていってやってたじゃない。色々と」
こいつも憶えていたのか。
もう忘れているものだと思っていた。
『色々やってたのはお前だけだけどな』
「え~!だって“スーパーの袋持って走ればいっぱいゲットできる”って教えてくれたのそっちでしょ!?」
『……教えたけど、実践したのはお前だけだ』
「嘘の情報、どうもありがとうございました~」
久しぶりに会ったというのにこの憎まれ口のたたき合いだけは変わらないらしい。
その現実がおかしく思えた。
こいつも同じことを思ったらしい。
2人顔を見合せて、どちらともなく笑い合った。
「でもこれで、2人とも幸せになれるね」
『……は?なんだよいきなり』
「2人とも頭に乗った桜の花びらを取ったわけだから地面には落ちてないじゃない?ほら、幸せゲット!」
……こいつはどうやら要らぬ賢さというやつを身に付けてしまったらしい。
子供染みた事を言っているくせに、考え方は子供にあるまじき卑怯さがあるこいつに呆れると同時にどうやらツボに入ってしまったらしい。
俺は笑いを抑えることができなかった。
(ちょっと、何で笑うのよ!!)
(ハハ……いや、お前相変わらずバカだなぁと思ってさ……クククッ)
(何よそれーーーーーッ!!)
俺の視界には、舞い散る桜とその大元の桜の木、舞い散っている桜の舞台である道一本しか映っていない。
人っ子一人いやしない。
『桜、か……』
こんな幻想的な世界に一人取り残された気分に浸っていると、桜吹雪の向こうに幼い子供2人を見た。
否、正確には―――――視た。
その子供達は紛れもない、幼い時の俺とアイツ。
楽しそうに舞い散る桜を追いかけている。
(そういえば、桜の花びらをたくさん集めた方が勝ちだと、馬鹿な競争もしたな)
あの頃はまだ何でも信じ、疑うことも知らず、無邪気だった。
桜の花びらが地面に落ちる前に捕まえられれば幸せになれる、という言葉を信じて必死に捕まえようと走り回った。
桜の花の方が花びらよりも幸せになれると、花びらに紛れて花のままで散っていく桜を必死に探していた。
いつからだろう
いつから俺たちは、そんなことじゃ“幸せ”なんてモノは得られないと
そんなものは、所詮儚い夢であって、“幸せ”なんてすぐに散ってしまうものだと
一体いつから知ってしまったのだろう。
(否、“俺たち”じゃなくて“俺”だけか)
“大人になるということは、幻想を賢さと取りかえる事だ”と何かで読んだが、その通りだと思う。
本当は、幻想を見続けていたかったし、そんな賢さならいらないと思うけど、どうも時の流れってやつはそれを許してはくれないらしい。
幻想はおのずと賢さに掻き消されていく。
昔はそんなこと、これっぽっちも考えたことなんてなかった。
このまま大人になっていくんだと、このままでいられるんだと思ってた。
桜吹雪の向こうから、幼いアイツが走ってこちらにやってくる。
『俺も末期だな』
自嘲しながら呟いたが、自分の幻想なんだから別にいいだろうと割り切った。
幻想くらい好きにさせてほしい。
「何やってんの?こんなところで」
目の前にやってきた幼いアイツ、ではなく、今のアイツを見て驚いた。
それは幻想のそれではなく、現実のそれだったから。
『……お前、こそ、なんでこんなとこにいんだよ』
「たまたま、かな。桜が見頃だってテレビで言ってたから見に来たの」
「それにしてもすごいね~」と言いつつ舞い散る桜の花びらの中をくるくると手を広げて回る。
『……ガキ』
「何を~~~!」
俺の小さなつぶやきが聞こえたらしい。
眉を少し吊り上げるあいつに近寄って、その頭に手を伸ばす。
『ほら見ろ、ガキみたいな事やってっから……』
『「花びら付いてるだろうが/付いてるよ」』
俺がこいつの頭についた桜の花びらを取ってやると同時に、こいつも俺の頭に手を伸ばし同じ言葉を発した。
声がハモッたことに驚いていると、
目の前に俺の頭に乗っていたと思われる花びらを突き付けてくる。
「ほら。自分だってガキみたいな事してたんじゃないの~?」
『お前と一緒にすんな』
ニヤニヤ顔で言うこいつの頭に軽くチョップを落としてやる。
「ちぇ~」と言いつつチョップが落とされた頭をさする。
……別に痛くないだろうに。
「……でも、これで2人とも幸せになれるね」
『あ?』
「ほら、昔桜の花びらが地面に落ちる前にキャッチできたら幸せになれるっていってやってたじゃない。色々と」
こいつも憶えていたのか。
もう忘れているものだと思っていた。
『色々やってたのはお前だけだけどな』
「え~!だって“スーパーの袋持って走ればいっぱいゲットできる”って教えてくれたのそっちでしょ!?」
『……教えたけど、実践したのはお前だけだ』
「嘘の情報、どうもありがとうございました~」
久しぶりに会ったというのにこの憎まれ口のたたき合いだけは変わらないらしい。
その現実がおかしく思えた。
こいつも同じことを思ったらしい。
2人顔を見合せて、どちらともなく笑い合った。
「でもこれで、2人とも幸せになれるね」
『……は?なんだよいきなり』
「2人とも頭に乗った桜の花びらを取ったわけだから地面には落ちてないじゃない?ほら、幸せゲット!」
……こいつはどうやら要らぬ賢さというやつを身に付けてしまったらしい。
子供染みた事を言っているくせに、考え方は子供にあるまじき卑怯さがあるこいつに呆れると同時にどうやらツボに入ってしまったらしい。
俺は笑いを抑えることができなかった。
(ちょっと、何で笑うのよ!!)
(ハハ……いや、お前相変わらずバカだなぁと思ってさ……クククッ)
(何よそれーーーーーッ!!)
カレンダー
02 | 2025/03 | 04 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | ||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 |
30 | 31 |
カテゴリー
フリーエリア
最新TB
ブログ内検索
カウンター