月灯りの下
闇の世界に差し込む光を追い求めて
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そんな私は、
とある一室。
今となってはもう懐かしい、でも、もう戻ることは出来ない場所。
暖炉の前で揺り椅子に座り、黒い物の手入れをしている男性と、その隣に座っているのは――――――
「アリス、よく聞いてくださいね」
何ですか?……あの、どうしてそんな真剣で、哀しそうな瞳をしているんですか?
「哀しそう、ですか……。そうですね。――――――私は明日、警察へ行きます」
ターゲット
え?どうしてですか?そこに標的がいるんですか?
「違います、仕事ではありません。……自首、するんです」
自首?自首って、確か、自分が悪いことをしたって言いに行くことですよね?
「そうです」
どうして?どうしてですか?
「アリスも立派になりました。私が貴女に教えられることは、これが最後です」
"これ"?"最後"?何のことですか?
「私はもう、仕事は出来なくなってしまいました。仕事が出来なくなった私が出来ることは、償いだけ」
"償い"?――――――嫌です。何で最後なんですか?もっと、色んなことを教えて欲しいです。恩返しだって、まだ……
「恩返し?」
私は、生きる術や殺しのこと、たくさんのことを貴方に教わったのに、私は、何も……まだ……
「なら安心してください。私は貴女から、とても大事なものをもらいました」
大事な、もの?
「このことにもっと早く気付いていれば、貴女にこの道を歩ませることは、なかったでしょうね」
……すみません。私には、おっしゃっている意味が判りません。
「今は判らないかもしれません。でもそれは、誰かに言われるものではなく、自分で気付くしかありません。そして、それを貴女に教えるのは私ではなく、別の誰かで、私が貴女にしてあげられることは、ヒントを見せることぐらいです」
"ヒント"?……自首することが、ですか?
「さすがは私のアリス。聡いですね。――――――さあ、もうお休みなさい、アリス。貴女が早く"それ"を知って、この世界から抜け出せることを祈っていますよ」
手入れが終わった、その人のお気に入りの拳銃を、私の手に乗せた。
そして、私の髪を、とても優しく撫でてくれた。
お休みなさい、師匠。
……さようなら。
翌日。
私が起きたときには師匠は既におらず、ニュースでは殺し屋が自首してきたと騒いでいた。
私は昨日言われたことを頭の中でグルグルさせながら、まるでそれを違う世界の出来事のように眺めていた。
もしもあの時、『一緒に行きたい』と言っていたならば、何か変わっていたのだろうか?
師匠は自首をやめてくれた?――――――否、あの人のあの目は決意した瞳だった。
なら、私がついて行ったら?――――――否、そんなことしたって意味がない。
自首したところで何の意味もないのだ、私にとっては。何も。
だから、この仕事をしているのだ、私は。
そして。
私は未だに師匠が自首した理由も、私に教えたかったことも、あの哀しそうな瞳の訳も、何一つ判らずにいる。
そんな私は、
(夜の森を進んでいくと、大きな屋敷が見えてきた。)
(あれが、今回の標的がいる屋敷……)
(グリーブスファミリー、か)
今となってはもう懐かしい、でも、もう戻ることは出来ない場所。
暖炉の前で揺り椅子に座り、黒い物の手入れをしている男性と、その隣に座っているのは――――――
「アリス、よく聞いてくださいね」
何ですか?……あの、どうしてそんな真剣で、哀しそうな瞳をしているんですか?
「哀しそう、ですか……。そうですね。――――――私は明日、警察へ行きます」
ターゲット
え?どうしてですか?そこに標的がいるんですか?
「違います、仕事ではありません。……自首、するんです」
自首?自首って、確か、自分が悪いことをしたって言いに行くことですよね?
「そうです」
どうして?どうしてですか?
「アリスも立派になりました。私が貴女に教えられることは、これが最後です」
"これ"?"最後"?何のことですか?
「私はもう、仕事は出来なくなってしまいました。仕事が出来なくなった私が出来ることは、償いだけ」
"償い"?――――――嫌です。何で最後なんですか?もっと、色んなことを教えて欲しいです。恩返しだって、まだ……
「恩返し?」
私は、生きる術や殺しのこと、たくさんのことを貴方に教わったのに、私は、何も……まだ……
「なら安心してください。私は貴女から、とても大事なものをもらいました」
大事な、もの?
「このことにもっと早く気付いていれば、貴女にこの道を歩ませることは、なかったでしょうね」
……すみません。私には、おっしゃっている意味が判りません。
「今は判らないかもしれません。でもそれは、誰かに言われるものではなく、自分で気付くしかありません。そして、それを貴女に教えるのは私ではなく、別の誰かで、私が貴女にしてあげられることは、ヒントを見せることぐらいです」
"ヒント"?……自首することが、ですか?
「さすがは私のアリス。聡いですね。――――――さあ、もうお休みなさい、アリス。貴女が早く"それ"を知って、この世界から抜け出せることを祈っていますよ」
手入れが終わった、その人のお気に入りの拳銃を、私の手に乗せた。
そして、私の髪を、とても優しく撫でてくれた。
お休みなさい、師匠。
……さようなら。
翌日。
私が起きたときには師匠は既におらず、ニュースでは殺し屋が自首してきたと騒いでいた。
私は昨日言われたことを頭の中でグルグルさせながら、まるでそれを違う世界の出来事のように眺めていた。
もしもあの時、『一緒に行きたい』と言っていたならば、何か変わっていたのだろうか?
師匠は自首をやめてくれた?――――――否、あの人のあの目は決意した瞳だった。
なら、私がついて行ったら?――――――否、そんなことしたって意味がない。
自首したところで何の意味もないのだ、私にとっては。何も。
だから、この仕事をしているのだ、私は。
そして。
私は未だに師匠が自首した理由も、私に教えたかったことも、あの哀しそうな瞳の訳も、何一つ判らずにいる。
そんな私は、
今日も"この世界"を駆け抜けている。
(夜の森を進んでいくと、大きな屋敷が見えてきた。)
(あれが、今回の標的がいる屋敷……)
(グリーブスファミリー、か)
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素直
世の中は理不尽なことで溢れてる
それに抗う人は
他の人には理解されず受け入れられず
爪弾きにされていく
自分に素直に生きることが
そんなに悪いことですか?
譲れないものを貫くのが
そんなに許されないことですか?
抗いながら生きるのは
すごく辛いし、息苦しいけど
これでも自分譲れないものがあるから
理不尽を突き破るぐらい自分を貫いて生きて行きたい
(それに、素直に生きることは)
(人の性分)
(捨てられないよ)
それに抗う人は
他の人には理解されず受け入れられず
爪弾きにされていく
自分に素直に生きることが
そんなに悪いことですか?
譲れないものを貫くのが
そんなに許されないことですか?
20/素直
抗いながら生きるのは
すごく辛いし、息苦しいけど
これでも自分譲れないものがあるから
理不尽を突き破るぐらい自分を貫いて生きて行きたい
(それに、素直に生きることは)
(人の性分)
(捨てられないよ)
台所は戦場なり
「では、今日はこないだの授業で言ったように、卵焼きを作りましょう」
火傷に気をつけてくださいねー、という先生をの声を合図に、それぞれのキッチンで生徒は作業を開始した。
もちろん、俺達も。
調理台1台には、男子3人と女子3人で作られた6人班、もしくは、どっちかが足りない5人班。
班内でローテーションして、順番に卵焼きを作っていく。そして出来たら、先生に見せて点数をつけられる、というある意味戦争に、今、俺達は挑もうとしているのだった。
『おい、変なモノローグ入れてる暇があったら用意しろよ。卵もらって来い、人数分の』
「……ハイ」
火傷に気をつけてくださいねー、という先生をの声を合図に、それぞれのキッチンで生徒は作業を開始した。
もちろん、俺達も。
調理台1台には、男子3人と女子3人で作られた6人班、もしくは、どっちかが足りない5人班。
班内でローテーションして、順番に卵焼きを作っていく。そして出来たら、先生に見せて点数をつけられる、というある意味戦争に、今、俺達は挑もうとしているのだった。
『おい、変なモノローグ入れてる暇があったら用意しろよ。卵もらって来い、人数分の』
「……ハイ」
不器用
真っ直ぐただひたすらに
目指す場所へ走って行けたのなら
きっと辛い思いをすることも、
悩むことも、
傷つくことも、ないだろう
それでも僕らは寄り道ばかり
傷をたくさん作っていく
それでも、真っ直ぐそのまま一直線に進んでいくことが
必ずいいとは限らないとも思えるのです
寄り道の中で何かを見つけ、
何かを感じ取り、
何かを自分に刻めたのなら、
それは無駄な寄り道じゃなくて
必要だった寄り道
そう思うと、不器用ないき方も、悪くない
そう思うのは、言い訳ですか?
(それって急ぐ必要がある?)
(遠回りでもいいんじゃない?)
(だって、色々なことを経て、)
(かつ、目指す場所に辿り着いた方がお得じゃない?)
目指す場所へ走って行けたのなら
きっと辛い思いをすることも、
悩むことも、
傷つくことも、ないだろう
それでも僕らは寄り道ばかり
傷をたくさん作っていく
それでも、真っ直ぐそのまま一直線に進んでいくことが
必ずいいとは限らないとも思えるのです
寄り道の中で何かを見つけ、
何かを感じ取り、
何かを自分に刻めたのなら、
それは無駄な寄り道じゃなくて
必要だった寄り道
そう思うと、不器用ないき方も、悪くない
そう思うのは、言い訳ですか?
19/不器用
(それって急ぐ必要がある?)
(遠回りでもいいんじゃない?)
(だって、色々なことを経て、)
(かつ、目指す場所に辿り着いた方がお得じゃない?)
伝える
伝える方法は、いくらでもある
でも、伝えることだけが方法じゃなくて
「黙っている」という伝え方が
優しさであることもある
でも、ごめんなさい
僕はそれを知りながら、
その優しさを、持ち合わせてはいなかったよ
君が寂しい時、辛い時に、僕はそばにいてあげられない
守ることも、救うことも、隣に居ることも
結局僕にはできないでいる
そんな君に今、僕がしてあげられる事
それはきっと、
黙って待って、君が合図をくれるのを待つこと
どんな合図でも構わない
どんなに小さくても、見逃さないから
でも、伝えることだけが方法じゃなくて
「黙っている」という伝え方が
優しさであることもある
でも、ごめんなさい
僕はそれを知りながら、
その優しさを、持ち合わせてはいなかったよ
君が寂しい時、辛い時に、僕はそばにいてあげられない
守ることも、救うことも、隣に居ることも
結局僕にはできないでいる
そんな君に今、僕がしてあげられる事
それはきっと、
黙って待って、君が合図をくれるのを待つこと
18/伝える
どんな合図でも構わない
どんなに小さくても、見逃さないから
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