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月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

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只今、警視庁トップ来訪中!

お使いに来ていたコンビニ。商品を手に並んだレジ。渡された小銭入れは金を出しにくく、もたくさしていた。
 そして、後ろに並んでいた男はイライラしていて。

「~ッ!オイ、金だしな!!」

 気付いた時には男の腕の中にいて、キラリと光るナイフが首にあって。
 どうやらこの男はコンビニ強盗で、レジを開けた瞬間を待っていて、我慢できなくなったらしい。

「目の前でこのガキ殺されたいか!?」
『止めなさい!』

 そんな中、凛とした声が響いた。男がそちらを見る。

「何だ、女が何か用か?!」
『その子を離してナイフを捨てなさい!私は、警察よ』
「警察、だと……?!」

 男は体ごと声がした方へ向けた。そこでようやく、警察だと名乗った女性の姿を捉えた。その人は――――――、
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瓦礫の山頂、

「へぇ、最近有名になりつつあり、かつ一癖ある殺し屋が、こんなガキだったとはねー」
「そそ。それでちょーっとね、軽く殺っちゃって欲しいんだよ」
「ハッ、軽くって何だよ!でもまあ、調子に乗ってる奴の鼻をへし折るのは嫌いじゃねぇ。むしろ好きだ」
「調子に乗ってるかはともかくとして、じゃあ引き受けてくれるんだ?」
「ああ。ガキに本当の殺し屋ってのを教えてやるよ」
「アハハ。それじゃあ、よろしく頼むよ?殺し屋さん。ま、」

 おし
 殺えられればの話だけどね。




※流血シーンあり

本の読み方

本を読むのは、昔から好きだった。
 何で好きだったのかは分からない。
 けれど、好きな理由は多分、そう。

                こ こ
 本を読んでいる間だけは、自分は現実には存在していないから。
 現実のことを忘れていられる。
 それだからこそ、没頭できた。

 居るのは目の前に広がる文字の世界の中。

 読んでいる間だけの、仮初の世界。
 それだけが救いだったんだ。

 でも、今は――――――。

粉々バレンタインデー

バレンタイン。
 それはチョコレート会社の陰謀から始まり、その日は男女共にそわそわする。
 というのは昔の話か漫画の中の話。いや、昔のことなんて知らないけども、少なくとも俺のクラスにそんなそわそわという空気はない。

「何でそわそわしないんだろ?」
『貰えないことがはっきりしてるからだろ』
「酷ッ!!ちょ、僅かな希望砕くのやめてくんね!?」

 机に頬杖をついて後ろの席に座る嵐に意見を求めた。が、一蹴。溜息を吐きクラスを見渡すと、女子が女子同士チョコを渡している。
 家の学校は、割りと校則がゆるい。お菓子の持ち込みは禁止されているが、バレンタインぐらいはいいだろうということで、先生達は見て見ぬ振りをしている。
 お陰でクラスの雰囲気は、そわそわというかキャピキャピ?してる。

「友チョコってやつだろ?そのチョコのせいで、俺達男子がチョコを貰える機会は完全に逸したわけだ」
『さっき僅かな希望は俺が砕いたと言ってなかったか?』
「あ~、チョコが欲しい!チョコが欲しい!!チョコが欲しい!!!」
『何回言うんだ』
「大事なことなので3回言いました」

 愛情たっぷりのチョコは美味いんだろうな~。まあ、家に帰れば少なくとも母さんがくれるけどさ。毎年。市販のやつだけど。それでもやっぱり、女の子から欲しい……、健全な男子として。

「チョコ~」
『さっきからチョコチョコ五月蝿い奴だな~』
「そういう嵐だってもらってないだろ?」
『いらねェよ、興味ねェし。それに、渡す奴の方が今時珍しいんじゃねェの?知らねェけど』
「お前、幾つよ。そして相変わらずクール」

 それにしても、嵐にチョコか~。豚に真珠の組み合わせ並に似合うよな~。

『オイ、どういう意味だそれ。喧嘩売ってんのかァ?買うぞコラ』
「すみません、心の中を勝手に読まないでください。因みに、諺で言われる組み合わせと同じくらいお似合いの組み合わせだな~って意味デス。"嵐にチョコ"みたいな」
『わけわかんねェこと考えてんじゃねェよバカ』
「ハイ、スミマセンデシタ」

 ……モテそうだもんな~、むっちゃ口悪いけど。
 ……嵐にチョコか。そういや嵐って料理美味いよな~。嵐が作ったチョコか。美味いんだろうな~、うん。
 ………。

「嵐様僕にチョコをください~!!」
『はぁ?!ちょ、何だいきなり!離れろ!!』

 泣き付けば、嵐には顔面押さえ付けられるわ、周りからの視線が痛いわ、チョコもらえないわで踏んだり蹴ったり……。そんな視線を向けられるのは、お前らが嵐の料理の美味さを知らないからだぞ!!

「嵐料理めっちゃ上手いじゃん!めっちゃ美味いじゃん!チョコもどーせ美味いんだろ?もー嵐でいいから俺にくれよ~!ギブミーチョコ!」
『どーせって何だ、どーせって!俺でいいからって何だァ!チョコなんて市販の板チョコ溶かして固めてるだけなんだから、誰が作ろうが同じだろ?お前が作ったって台所の有様は酷いだろうが、味は普通に美味いだろうよ!』
「同じじゃないだろー!愛情の違いがあるだろー!俺が美味いの作れたとしても、自分に愛情なんて込められるわけないだろー!だったら嵐に作ってもらった方がいいじゃん!どうせむっちゃ凝った作り方するんだろ?なら普通のより美味いに決まってんじゃん!食ってみたいじゃん!」
『知るかー!気持ち悪いわお前はァ!!俺は男だッ!!』
「痛ーッ!!」

 脳天グーで殴られたー!

「気持ち悪いとか酷くない?!脳天殴るとか酷くない?!」
『落ち着いて普通に考えてみろ!俺ァ男だぞ!?愛情とか気持ち悪ィんだよ!』
「何が気持ち悪いだ!お友達にそんなこと言うなんて、お母さんそんな子に育てた覚えないわよ、嵐ちゃん!俺達の間で愛情と言えば友情だろうが!」
『いつそんな事決めたよ!初耳だわ!つうか、お前が母親なら俺ァグレる!』
「分かれや友達なら!半グレてるくせに!」
『半グレてるって何だ!お前となんてわかり合いたくないわ!!』
「そこまで言う?!」
「あ、あの……!」
『あぁ?!』「あぁ?!」

 声をかけられた方を勢いよく見れば、女子がビックリしたように肩を揺らして立っていた。

「あ、取り込み中ごめんなさい……?」
『ぁ?君は家庭科の授業で一緒の班だった――――――』
 のはし
「野橋さん、どったの?」
「あ、あの、夜凪くんに……これ……」
『え、俺……?』
「……ッ」

 コクリと頷いた野橋さん。差し出されたのは四方形の可愛らしいクローバー柄の緑と黄緑色の箱。

「これは……まさか……!」
「あの時、卵焼き作るの助けてくれたから……その、お礼、です」
『別にたいしたことはしていない』
「でも、夜凪くんのお陰で上手く出来たから……」
『……じゃあ、有り難く貰っとく。ありがとう』
「こ、こちらこそ……!」

 嵐にチョコを渡した野橋さんは、教室の端に走り去った。後ろでひっそりと見守っていた女子たちが、野橋さんを囲んでキャピキャピはしゃいでいる。
くっそ~

「この裏切り者めーッ!!」
『何が裏切りだ!』
「裏切りだろ!?チョコ欲しがってる親友の前でチョコ受け取るか~?!」
『くれたんだから受け取らなきゃ悪ィだろうが』
「だって~、だってさ~」

 俺は嵐の机に突っ伏した。
 もういいよ、何だよチクショー。いいよ、母さんがくれるからー。親父が会社で貰ってきたやつ貰うからー。別に……惨めな気分とか、そんなんないし~…………――――――

「ぅ……」
『泣くか、普通』
「うるへー。貰った奴に俺の気持ちがわかるかー」
『大袈裟だろ。礼で貰っただけじゃねェか』
「貰ったことに変わりねぇよ……ぅ」
『……ハァ。ったく、しょうがねェなァ……ほらよ』

 コトン。
 机と何かがぶつかる音に目を向ける。そこにはピンク色の箱が置かれていた。

「ん?へ、え、これは……!」
『お望みのチョコだ、多分』
「ら、嵐様ーッ!!」
『だー!泣き付くんじゃねェ!!』
                                   い ぼ
「さすがは嵐様!ただ単純に俺を地獄に叩き落とすだけじゃなくて、ちゃんと揖保の糸も用意して下さっていたんですね!」
『何でそうめんを地獄に垂らさにゃならんのだ。蜘蛛、蜘蛛の糸だ!それに、それは俺が用意したも
          しおん
のじゃねェ。こないだ詩夢から預かった』
「し、詩夢さんから!?」

 そう言われて改めて箱をよく見ると、小さなカードがリボンに挟まっている。カードを開くと、そこには綺麗な字が並んでいた。

「オイ見ろよ。夜凪の奴、秋木にチョコ渡してるぜ」
『………』
「やっぱ気になるんじゃねーの、こういうイベント」
『…………』
「好きだもんな~、"女子"はよ」
『だァれェがァ……女だァッ!!』

《海くんへ
 いつも嵐と仲良くしてくれて、ありがとう。ささやかですが、お礼です。これからも嵐をよろしくね。
詩夢》

「ぅわ、テメ、夜凪!!」
「いきなり何を……!」
『なァにがいきなりだ!喧嘩売ってきたのはテメェらだろーがよォ。高価買い取りしてやるから有り難く思いなァ!!』
「し、詩夢さん……!俺、大切にいただきます……!」

 詩夢さんがくれたチョコと手紙に感動していた俺は、嵐が喧嘩をおっぱじめていたことに気付かなかった。

『粉々にしたらァ!!』

この時の私は、

目の前にある大きな白い建物は、普段は気にならないのだが、いざ入ろうと思うと足を進めることを躊躇してしまう。悪いことなどしてはいないというのに……。やはり人間の心理は不思議だ。
 でも、知りたい。否、知らなければ。
 知っていればきっと、私がアリスを傷付けることはなくなる。



<いや~、驚いたわ。あの子にあなたみたいな友達ができてるなんて>
<……あの>
<ん~?な~に?>
<さっきアイリスのことを"アリス"って、呼んでましたよね?お知り合い、なんですか?>
<あら、両方の名前を知ってるなんて、あなた懐かれてるのね~>
<懐かれ……?>
<あの子とは知り合いというか、あの子の師匠とね。腐れ縁というか、うん、幼なじみなのよ。だから、その師匠を通しての知り合いね>
<アリスにお師匠さんがいたんですか!?>
<そりゃねー。人にしたって動物にしたって、生まれたばかりは誰だって、何かの術は教えられなければ身につかないわ。……あの子に生き残る術を与え、殺す術を教えた人。それが師匠>
<あ、あの!今その人はどこにいるんですか?>
<あぁ、刑務所の中で自由気ままな囚人ライフを送ってるんじゃない?>
<囚人ライフ、って……?>
<自首したのよ、彼。アリスが殺し屋になった時にね>
<自首……>
<まったく、何を考えてるんだかね~>

 紅茶を啜る時計屋マッドハッターの女性店主エリサ・キャロルは、怒っているような、呆れたような、悲しそうな、そんな感情をごちゃ混ぜにしたような顔をしていた。

<あ、あの!>
<ん?>
<その人がいる刑務所、ご存知なら教えてもらってもいいですか?>
<……そんなこと、知ってどうするの?>
<知りたいんです。アリスのこと……。私、何も知らないんです、あの子のこと……何も>

 アリスに訊きたいことはたくさんあった。でも、今まで訊けなかった。何となく、訊いちゃいけない気がして。

 ねぇ、アリス。あなたはどこで生まれたの?どこから来たの?ご家族は?兄弟、姉妹はいた?小さい頃はどんな子だったの?どうしてそんなに色んなこと、知ってるの?

<私は、アリスが本当は優しい子だってことしか知らないんです>

 どうしてそんな哀しい色の瞳をしているの?

<私は、あの子に助けられたから。本当は悪い子じゃないって、わかってるんです>

 ……なのに、何故、殺し屋なんて始めたの?

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