忍者ブログ

月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

[167]  [166]  [165]  [164]  [163]  [162]  [161]  [160]  [159]  [158]  [157

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

台所は戦場なり

「では、今日はこないだの授業で言ったように、卵焼きを作りましょう」

火傷に気をつけてくださいねー、という先生をの声を合図に、それぞれのキッチンで生徒は作業を開始した。

もちろん、俺達も。

調理台1台には、男子3人と女子3人で作られた6人班、もしくは、どっちかが足りない5人班。
班内でローテーションして、順番に卵焼きを作っていく。そして出来たら、先生に見せて点数をつけられる、というある意味戦争に、今、俺達は挑もうとしているのだった。

『おい、変なモノローグ入れてる暇があったら用意しろよ。卵もらって来い、人数分の』
……ハイ

フライパンを片手に命令を下した嵐の言うことを素直に聞き、先生の下へ行く。
俺の班は5人で、男子は俺と嵐と女子が3人。女子は仲がいいというか、普通に会話したりする子達。
悪い班じゃないな、なんて思いながら卵を先生から受け取り、自分の班へ戻った。

「どーしよ!緊張する~」
「練習してこればよかったなー」
「一応私したけど、自信ないよー」
『………』

なんてガールズトークを繰り広げながら、洗った皿を拭いている女子組。
嵐は先に洗ったのだろうフライパンを火にかけていた。
……まあ、嵐から喋ることはないよな~。

「じゃあ順番どうする?先やる?俺達どっちでもいいけど……なあ、嵐」
『あぁ』
「えー、どうする?」
「先やっちゃった方がいいよ、こういうのは!」
「じゃあ、お言葉に甘えて先にいい?」
「どーぞどーぞ」
『フライパン、もうあったまってるから』
「あ、ありがとう」

女子に卵を渡す役目を果たし、すでに椅子に座って待機に入っている俺の隣に座る嵐に、卵を渡してやる。

「優しいね~、嵐くんは。あっためといてあげるなんてさー」
『別に。俺達からやるかもしれなかったんだから、やっといて当然だろ』
「照れるなって!」
ウゼェ

こんこん、かぱ
ごんぐしゃ

そういいながら、皿に卵を割る俺と嵐。

「うおぉっ!おま、綺麗じゃん!むっちゃ綺麗じゃん!!」
『いや、普通だろ』

すっげえ綺麗に殻から出てきた卵。
ちょ、軽く感動した!

……お前は何でそうなる

俺のは卵の殻も黄身もぐちゃぐちゃ。完全に皿の中に黄身が入っている。ちなみに手もぐちょぐちょ。

「おっかしいなー。普通に割ったのに」
明らかに普通の割方じゃ出ないような音がしてたがな。ほら、箸』
「サンキュー」

俺は嵐から箸を受け取り、殻だらけの皿に向き直った。
その隣で嵐も箸を持って、味付けをして卵を掻き回し始めた。

「早!!」
『いや、このぐらい普通――――――』
「あ~!ひっくり返らない!」
「ちょ、早くひっくり返さないと焦げちゃうよ!」
「わかってるんだけどさー!」

嵐の言葉を、女子の悲鳴にも似た会話が遮った。
どうやら上手く巻けないらしい。わかるわかる。難しいよねー。俺も自信ないわー。
そんな女子の様子を横目で見ていた嵐は、溜め息をついて席を立つ。

『……落ち着いて。少しフライパンを持ち上げて斜めにする。で、端の方をフライ返しで少し突いて剥がしやすくして……まあ、転がす』
「できた!」
「すごーい!」
「ありがとう、夜凪くん!」
『……別にたいしたことじゃない』

それだけ言い残して戻ってきた嵐。

『……お前、まだやってんのかよ』
「いや、だってよー」

俺は様子を見ていたせいで、卵の殻の除去は終わってなかった。

「いや~、やっぱ優しいな~、と思ってさ~。しかも最後の捨て台詞がかっこいい!」
『捨て台詞って……使い方、違わないか?』
「いいなー、俺も一回は言ってみたい!"別にたいしたことじゃない"」
バカやってないでさっさと除去しろ、バカ
「いてっ」

殴るだけじゃなくて、バカって2回言われた。

『ほら、次、俺達だぞ』
「ちょ、後ちょっと……」
『先やってるぞ』
「ああ、そんなぁ!!」

俺を見捨てて、嵐は卵焼きの焼きに取り掛かった。

『………』
「おぉっ!!」

いや~、凄いのなんのって、凄い。
何なのこの子。

何お前、何がしたいの?
お前は俺が何を作ってると思ってんだ
「いや、だって……」

むっちゃ綺麗というか、スムーズ、っていうの?
手際がもうプロ並み。出来上がってく様もプロ並み。
家の兄貴も料理できるけど、それより凄いかも……
女子達だって「夜凪くんすごくない?」的会話を何故か少し離れてしているし。
そうこうしている間にも、玉子焼きは完成へと向かっている。

『……だって、何だよ』
「うますぎじゃね!?お前、最強!?しかももう出来てるし!!」
『普通だろ、このぐらい』
「普通じゃねぇよ!!何か光って見えるもん、その卵焼き!!」

後光が差してるって、マジで!

『アホなこと言ってないで、さっさとやれよ。まだ混ぜてもねェじゃん』
「……は~い」

そして俺は卵を混ぜ始める。

『ちょ、お前!飛び散ってんじゃねェか!』
「あ、あれ~?」
『"あれ~"じゃね!……って、塩入れ過ぎ!』
「そ、そう?」

そして、焼きの行程では――――――、

『油入れすぎだ!どんだけ光らせたいんだ、お前は!あと、火!もう少し弱くしろ!強過ぎ!』
「は、剥がしやすくなるじゃん?強い方が早く出来るしー?」
『そういう問題じゃ……ッ海、卵ストップ!何回かに分けて少しずつ巻いてくんだよ!前回の授業聞いてたのか?!』
「い、一回で焼いて、くるっと巻いた方が楽じゃん?」
巻けるかァッ!!

そして、なんやかんやで完成したが――――――、

……何お前、何がしたいの?
「卵焼きが作りたいんです……」
『俺、さっき火強いって言ったよな?どんだけ火ィ弱くした?』
「す、少しですが。嵐様に言われた通り……」
『"言われた通り"って……。これ、何と言うか、原型が……』
いつもは毒舌のくせに遠慮すんじゃねぇよ!!逆に傷つくわ!!はっきり言えよぉ!!ドロドロだって!!
『ま、まあ、まだ完全に固まってないスクランブルエッグを、箸で梳かずに玉子焼きみたいに固めたみたいじゃねェか』
「上手い例えだ、嵐!!ありがとうチクショー!!」

俺の卵焼きと調理場はすっかり、

『……カオス、だな』

だった。



先生に評価をもらったら、後は各自で味わって食べる。
女子3人組は、違う班の女子の所へ行ってしまった。どうやら見せ合いっこ的なことをしているようだ。
好きだよな~、女子ってそういうの。
そして、俺はというと――――――、

「あ~、ジャリジャリして痛い~生~辛~」
『だろうな』

自分の作った、スクランブルエッグ風玉子焼き殻入りを堪能していた。

「……な~、嵐のやつ美味そうだな~、欲しいな~、もらってもいい?」

俺の玉子焼きは、欠片が完全に除去できておらず、おまけに生焼け塩入れ過ぎ、あとちょっとギトギトしている代物だった。
それに比べ、嵐の玉子焼きはあんだけ後光が差しているんだ、さぞかし美味いに違いない!!

「口直しに是非!!」
『自分で口直しって言うの、悲しくないか?……別にいいよ。けど、自分のもちゃんと食べろよ?勿体ない』
「はい、食べます!!……え、食べんの?マジで?何はともあれ、ありがとうございます嵐様~!」
『大袈裟』

拝む俺に苦笑する嵐。
俺は嵐の卵焼きに手を伸ばした。

「んっまー!!流石嵐様の卵焼き様!」
『止めろバカ、恥ずかしい』
「あいた」

頭をスパンと殴られた。
口と手が同時に出るのは悪い癖だと思う。予告して欲しい、殴るよ予告。

「でも、これ、な~んかどっかで食べたことがある味な気が……」
『そりゃあるだろ。一昨日、俺の弁当に入れといたやつ食べたじゃねェか』
「弁当……卵焼き……あぁっ!!」


そうだそうだ!
一昨日だったかは忘れたが、確かに嵐の弁当が美味そうだったからもらったわ、卵焼き!
ん?ちょっと待てよ……

「え、じゃあ、お前の弁当って……」
『俺が作ってるに決まってんだろ』
「マジで!?え、いつも!?」
『そりゃァな』

あ、そうか。
こいつ一人暮らしだった。

「そっか~、プロな訳だわ~。納得納得」
『プロじゃねェよ』

勝手に納得するな、とまたもや頭を小突かれた。



台所は戦場なり



(おい、いつまでも食べてないで、さっさと片付けるぞ)
(ちょ、待って。まだ食べて……生ッ!!辛ッ!!)
(おら、さっさと食えよ。カオスが待ってるぞ)
(鬼ーッ!!あんなに美味い卵焼き作るくせに!邪神!!
(…………………)
(ちょ、待って!自分のペースで食べさせて……!ほんとマジでお願いします嵐様ー……ッん生辛ぁ!!





+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++





こんばんは、渡月です。

ようやく書けました、『study!』
調理実習ネタです。
嵐は料理が海曰くプロ並み。一方、海はカオス並みというなんともベタな事実が発覚。
……僕の話ではベタはお決まりの流れです。(オイ)

僕が学校でやったのは、おにぎりと味噌汁、リンゴの皮むき、玉子焼き、
他にもありませしたが、覚えてないという;
僕は料理は上手くないんですが、まあ海よりはマシかと(笑)
リンゴの皮むきは悲惨でしたが、ね……


ギャグになっているのか不安ですが、これが僕の精一杯です……!!
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!
PR

この記事にコメントする

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

素直 HOME 不器用


忍者ブログ [PR]
template by repe