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月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

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反応

『あの、さ』
「何?」

本に向けていた視線を正面の彼女へと向ける。

『・・・・・・"喜ぶ"って何?』
「はい?」
『だから、"喜ぶ"って何?どうやって"喜べば"いいの?』
「・・・・・・・・・えっと、取り敢えず、何で?」

突拍子もない質問。
でも、実はこれが初めてってわけでもない。
前は『どういう時に"笑う"んだ?』とか『どうやって"笑う"んだ?』とかその他諸々。
主に正の感情について訊いてくることが多い。
でも、それには何かしら原因があった。
僕はいつもその原因から聞くことにしている。

「今度は何でそんな疑問を持ったんだい?」
『・・・・・・この間、誕生日、だったんだけど・・・・・・』
「うん、知ってるよ」
『・・・・・・で、プレゼントもらったんだけど・・・・・・』
「うん、誕生日だもんね」
『・・・・・・真面目に聞く気、あるのか?お前』
「真面目に聞いてるじゃないか」

俯きながら話していた彼女が、上目遣いで僕を睨んできた。
失礼な、僕は真面目に聞いているのに。

『まぁ、いいや。で、さ・・・・・・その時、言われたんだ』
「うん、何て?」
『反応薄いな・・・・・・ってさ。それってもっと"喜べ"とか"嬉しそう"にしろってことだろ?』
「多分ね。なるほど、それが原因?」
『そう。でもさ、どう反応していいのか、"喜んで"いいのかよくわかんないから』

彼女は、正直素直じゃないし、表情を出すのも正の感情を表すのも苦手だ。
本人曰く、感情なんてよくわからないし多分忘れている、らしい。
―――彼女の場合、感情を忘れなければ辛かったから忘れたのかもしれないが。

『この年頃の子たちはさ、物もらってどういう風に"喜ぶ"んだ?』
「・・・・・・なんかその物言いだと年よりくさく感じるよ?」
『うるさい、ほっとけ』

そういうと彼女は机に突っ伏した。

『分からないんだ。どうやって"喜べば"いいのか、どうやってそれを表現するのか
 ・・・・・・分からな、いんだ』
「・・・・・・・・・」

机に突っ伏しているせいで顔は見えないが、彼女の切ない声に胸が締め付けられた。
僕は彼女の頭に手を伸ばし、そのまま撫でてやる。

『・・・・・・何?』
「ん~、撫でてるんだけど」
『そんなぐらい分かる』

机に顎を乗せたまま僕を見上げてくる。
睨んでいる目は、嫌がっているように見えるけど、本当は――――――

「照れてるだけ、でしょ?」
『は?』
「僕が君の誕生日の時、プレゼントあげたでしょ?」
『・・・・・・あぁ』

目を逸らしながらボソッと呟いた彼女を見て苦笑する。

「その時、固まってたね」
『当たり前だ。いきなり渡してくるんだから』

彼女は自分の誕生日を本気で忘れていた。
・・・・・・本当に、何でこんなにも自分に無頓着なんだろう。

「その時僕に憎まれ口叩いてたよね。『誕生日なんて祝う必要ない』って」
『それは・・・・・・』
「僕はその言葉が本心から言ってるものじゃないって分かってたよ」
『え・・・・・・?』

そう、それはきっと、"喜び方"を知らないという君の優しさ。
君を見て喜んでもらえなかったのかと相手を傷つけたくないという、君の優しさ。
前は優しさなんて知らない、なんて言ってたけど。
僕が渡した時に固まったのも、どう表現していいのか戸惑ったから。

「確かに君は、感情を表現する事も表に出す事も苦手だけど、
 全く出ないわけじゃないんだよ。君が気付いてないだけでね」

あの時の君の顔は忘れない。
喜んでもらえたんだって、すごく嬉しかったから。

『でも、そいつには分からなかった』
「うん。でも、僕には分かったよ。君は照れてるんだなぁ、って。
 そうだな、今は・・・・・・"喜んでる"んじゃない?」
『俺は別に、"喜んで"なんか・・・・・・ッ』
「そういうのをね、"照れてる"って言うんだよ」
『~~~~~ッ!!』

勢いよく立ち上がった彼女は、やっぱり僕を睨んでいた。
けど、顔が赤いから怖いとは逆に可愛さしか感じない。
・・・・・・まぁ、それは、放課後の教室を染める夕日のせいかもしれないけれど。


大丈夫、君はちゃんと感情を出せてるよ。
感情をちゃんと憶えているよ。
ただ君が、気付かないだけで。
その人が、気付けなかっただけで。
君にはちゃんと、人並みの感情も優しさもある。
僕が、保障してあげるよ。

(本当は、「僕には分かった」って言った時のお前の笑顔を見た時、
 少し、本当に少しだけど、動揺した。)
(でもその動揺は、嫌な感じはしなかった。心地よくさえ感じられた。)
(これが"喜ぶ"っていうやつなのか?それとも"嬉しい"ってやつなのか?)
(まだよく分かんないけど、でも、悪い気はしなかったよ。)


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


またやってしまった・・・・・・orz

僕が書くものは突拍子もないものばかりでいけませんね。
しかもシリアスばかり;
しかも今回は長いですね。
でも今回は最後の方がほのぼのに出来たかなぁと思っているんですが・・・・・・

自信はないです!!←

今回は『俺僕シリーズ』ということで、
俺=彼女、という設定を初めて出してみました。
(他の話もそうとは限らないんですが・・・・・・)
しかも何やら訳ありのご様子で(オイ)

『俺』に「反応が薄い」と言った人ですが・・・・・・
僕のクソ親父です(爆)

それだけが事実であとはフィクション(?)です。
(季節はクリスマスでしたが)

僕は、クソ親父に優しくされるなんてことないので、そんな事された日にゃ困惑の嵐ですよ。
反応に困ります。
まぁ、元々あまり感情を表情に出さないんですけどね
言われた時は「アンタが慣れもしない事するからだろうクソ親父」と開き直りました。
この『俺』みたいにそんな優しい考え方なんてしませんよ、ケッ←

僕は斜めに真っ直ぐした正確ですからvV
(要は歪んでいる)

みなさんもありませんか?
こう、珍しい事されると反応に困る事って。

『俺』にとってはそれがバリ広なんですね。
それを先生のように、諭すように教えてくれるのが『僕』という存在。
その中で少しずつ何かを得ていき、お互い成長していける仲、
という風に見えたら幸いです。

長い話に付き合っていただき、ありがとうございました。
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