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月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

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有意味 or 無意味

"              "

アイツの声が、頭に響く。鬱陶しい事この上ない。
空はあんなにも綺麗で、爽やかで、広くて、

『……遠い』

そんな空さえも鬱陶しく感じて、

『………チッ』

俺は寝返りを打って目を閉じ、視界を暗くした。



「時崎~!」
「はい?」

授業が終わった後、教室を出て行く僕に先生が声をかける。
僕は何かをした覚えはないから、要件の内容は大体は予想がつく。

「黒宮のことだが……」

やっぱり。

「連絡がないんだが、何か聞いてないか?」
「僕のところにも連絡はしてきませんよ、黒宮さんは。でも、靴は見かけたから、学校には来てると思いますが」
「そうか、お前なら心当たりがあるだろう。悪いが、見かけたら職員室まで来るよう言ってくれないか?」
「わかりました。見かけたら、伝えときます」
「助かるよ。しっかし、時崎、先生はお前を尊敬するよ。……あいつも昔は真面目な奴で優秀だったのにな」

呆れたような、理解できないとでも言うような、ちょっとバカにした感じを含んだ物言い。
僕はちょっとムッとして、
「先生、騎暖は今でも真面目だし、努力家ですよ。確かにちょっと問題はありますが、彼女はいい子です」

強気で言ってしまった。
先生もそれにたじろいだらしい。
「あ、あぁ、そうだな。それじゃあ、頼んだぞ」と言って、そそくさと職員室に帰っていった。

「……先生に対してあれはなかったかな」

先生の背中を見送りながら僕は少しだけ反省して、屋上へと足を運ぶ。先生に頼まれずとも、もともとそのつもりだったんだから。
それにしても、先生もあの言い方はないと思う。

確かに、騎暖は先生の言う、すごく真面目で優秀な子だった、と聞いている。
授業も休んだことなんて一回もなかったし、テストの成績だって必ず3位以内には名前を出していた。
成績表だってほぼオール5。
これを僕は聞いたとき、純粋にすごいと思った。
天才なんて砂漠の砂の中の宝石だ。だから、努力家なんだなって、そう思った。

それでもある時を境に―確か、テストで1位をとった後、と聞いた覚えがある―彼女は授業を休みがちになった。今も出席日数はギリギリだ。
僕はどうして行き成り授業に出なくなったのか、その理由を知らない。
けど、僕だって知っていることはある。

騎暖は人が苦手で、教室にいるのも億劫で、それでも彼女は授業に出ていない分、自分でちゃんと勉強している。
そして、テストでは未だに10番内には入っている。
授業に出ていない分、勉強は大変だと思う。
僕もたまに教えてくれとは頼まれるが、本当にたまにだ。
先生が教えてくれるテストの情報のことなんて一切聞いてこないし、教えようとすると断固断られる。
それはきっと彼女なりの誠意なんだろう。
だからこそ、かなりの努力が必要だと僕は思う。
僕は深呼吸をし、目の前に現れた屋上へと繋がる扉を開け、彼女がいるであろう場所へと進んだ。




「……騎暖?」

見つけた彼女は珍しく、空を見る仰向けの状態ではなく、横向きに寝て丸まっていた。
まさか、どこか悪いんだろうか?
不安になった僕は彼女に飛びついて、肩を掴み揺らす。

「騎暖!騎暖ったら!」
『……拓人?』

眠たげに開けられ、僕を見る瞳はいつもと同じで。

「よかった、心配したじゃないか」
『……何が?』
「いつもと寝方が違ったからさ、どこか悪いのかって心配した」
『…………そう』

そこで僕は気がついた。
起き上がった彼女の伏せられた目は、いつもの瞳なんかじゃなかった。
不安そうで、寂しそうで、危なげに揺れている。

「何か、あった?話、僕でよければ聴くよ?」
『…………』
「あ、でも無理には――――――」
『たまに、』

僕の言葉を遮って、彼女は口を開いた。
僕はそのまま口を閉じ、耳を傾けるだけにする。


『たまに、思うんだ。――――――自分は今、何でここにいるんだろう。自分は今、何でこんなことをしてるんだろうって』

『本当は、こんなとこにいたいんじゃない、こんなことしたいんじゃない。それでも、今更止めることなんてできなくて』

『一体何に意味があって、一体何に意味がないんだろう』

『そもそも、この世界に、意味のあるものなんてあるのかな』


気持ちのいい風が、僕たちの髪を揺らして行く。沈黙を流す。
今日は本当に空が綺麗だ。彼女がサボって屋上に来るのもわかる気がする。
そんなことを思いながら、空を眺めたまま僕は口を開いた。

「やっている事に、きっと意味なんてないんだと思う。意味があるかないかは、その物事が終わった後に、見えてくるものだと思うから。
 ほら、校則とか、きちんと守ってから"これは意味がない"とかっていう文句を初めて言うことが出来るだろ?
 それは、そういう行為をやってから初めて、本当に意味があるのかないのかわかるからなんだよ」

さっきよりも短い沈黙の後、今度は彼女が口を開いた。
自嘲を含んだ声が響く。

『……そっか。じゃあ、やっぱり、俺がやってきたことに、あいつが言ったように、やっぱり意味なんてなかったんだな』
「誰が言ったのそんなこと!?」
『……ッ』

僕はその言葉にはじかれたように、隣に座っている騎暖を見た。
驚いた顔をしてる。

『行き成りなんなんだ、驚かせるな』
「だって……!」

僕はそこまで言って、言葉を呑み込んだ。
ダメだ、ここで熱くなっても意味がない。落ち着かないと。
僕は浅めの深呼吸をしてからもう一度、飲み込んだ言葉を出した。

「誰に言われたの?そんなこと」
『………アイツ』
「"アイツ"って……。ハァ、君のお父さんには悪いけど、僕、今すぐ殴りに行きたくなっちゃったよ」

親のことを"アイツ"と呼ぶのは正直、感心しない。
けど、彼女の家はよくはわからないけど、色々と厄介らしい。彼女も寂しい思いをして、今に至るんだと思う。
何に対してそう言われたのか知らないけど、実の親だろうと言っていいことと悪いことがあるだろうに……。

『アイツのことはどうでもいいけど、何でお前がそんなふうに怒るんだよ』
「何でって、君を傷つけたからに決まってるだろ?」
『………決まってる?』
「うん、だって僕は、君を守りたいから」
『………』

彼女の事情は全くといっていいほど分からない。でも彼女が言わない以上、訊こうとも思わない。
それでも、わかるんだ。なんとなくだけど。

彼女は本当は寂しがり屋で、恐がりで、泣き虫で。
今の彼女は、そんな自分を守るために身に付けた防衛手段。

だから、そんな傷だらけの君を、僕は守りたいんだよ。
傷つけようとするモノから、これ以上君が傷つかないように。
君が傷ついたのなら、せめて少しだけでもいいから、その傷を癒せるように。


「いいかい?騎暖。確かに、やってたことに意味がないことだってあるよ」

「僕たちはまだまだ子どもだ。だから、きかなきゃいけない親の言うことの中にだって、さっき言った校則にだって、意味がないと思えることなんて腐る程ある」

「それでも、君が君の意志でやってきたこと、君が頑張ってやってきたことに、意味が無いだなんてありえない」

「君が一生懸命やったこと、頑張ったことは絶対無意味になんてならないから」
 
「たとえ終わった後に意味がなかったと思っても、気付かないどこかで意味あるものになって、君の力になってるから。だから――――――」

「だから、そんな、それこそ無意味な言葉に傷つかないで」


彼女の大きく見開かれ、揺れている瞳を真っ直ぐに見つめる。
そんな君のことを何も知らないような、知ろうとしないような言葉に、これ以上傷つくことはないんだよ。

『……別に、俺は、傷ついてなんかない』

「バカ」と言いながら、騎暖はちょっと拗ねたような顔で顔を背ける。
あ、照れてる。バカはちょっとヒドイ気がするけど、それも彼女の照れ隠しのひとつ。可愛いな~。

「そう?ならいいんだけどさ」
『……………でも、あ、ありがとう』
「どういたしまして」

不器用な彼女が可愛くて、クスリと笑うと、『笑うなバカ!』と頭を小突かれ思わず「いたっ」と言う声が漏れる。
それでも、彼女がいつもの調子に戻ったのは嬉しい。
僕は空を見上げた。
まだ照れているらしい、仏頂面のまま彼女も瞳を空へと向けた。


嗚呼、空はあんなにも綺麗で、爽やかで、広くて、

『……眩しい』



寂しがり屋で、恐がりで、泣き虫で、独りぼっちな君
どうか独りで傷つかないで
どうか独りで悲しみを殺さないで
その傷を
その悲しみを
どうか僕に殺させて


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


いらっしゃいませ、渡月です。

文才ないくせに、なんか無性に話が書きたい今日この頃。
ということで、只今小説モドキ強化月間中です。←

ちなみに、いつまで続くかわかりません……!(オイ)

また学校の方が忙しくなりそうな予感がしてるんですorz
でも、僕としては殺し屋さんの話を結構進めたいんですよね~
どうなるかはわかりませんが^^;


さてさて、今回は「俺僕小説」(あ、久しぶりに言った←)の俺・騎暖が
ちょっと弱っているところを書きたかったんです。←
昔、理科の先生がみんなの前で、
「テストでいい点とってる子は、コレ、別に頭がいいってわけじゃないよね。
 頑張ってるからいい点取れてるんだよね」
と仰ってた言葉が今でも印象的です。

確かに、いい点とるとみんな頭がいい、天才だ、っていうけど、そんな人ほとんどいませよね。
そんなこと言うより、頑張ったんだ、って言ってもらった方が、
その人たちも褒められてる、というか嬉しいと思う。
というか、先生にそう言われて僕は嬉しかったです(笑)

なので、この話、若干ノンフィクション雑じってたりします。
どこがフィクションで、どこがノンフィクションかはご想像にお任せすると言う方向で……。

因みに、彼女がお父さんに言われた言葉、大体想像つけられますか?
想像してもらえるように、キーワードは散りばめられたつもりなんです……!
"勉強"、"1位"、"努力"、"有意味か無意味か"
文才なくてほんとスミマセン(土下座)


ここまで読んでくださってありがとうございました。
またのお越しをお待ちしております。
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