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月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

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昔も今も、

地面に広がるアカに染まった蒼い瞳は、

寂しさと、

孤独と、

儚さを映して、

私を見下ろしていた。



*          *          *


トースターにはパンを1つ食わせてダイヤルを回す。
ミルクを鍋へと注ぎ、コンロへと置き火をつける。

さっき見た夢のせいか、いつもよりも機械的な動作で朝食の準備を進める。
随分と懐かしい夢を見たな。
夢といっても、それは昔私が体験した場面の一部分だけ。
あっという間の一瞬の出来事が終わった後の一場面。
その前から見ていたら、朝食だって食べれなかったかもしれない。
今も用意をしたものの、食べる気はあまりしなかった。
あれはもう、何年前のことだろう。


満月が眩しい夜。
私の親友・アリスと初めて出逢った、あの真っ赤な夜。
あの夜に私は死ぬ筈だった。
でも、生きている。

―――――彼女のお陰で。


ピロピロリンと、部屋に電子音が鳴り響いた。
ぼうっとしていた私はビクリと肩を揺らした。
音の発信源は、机に置いた私の携帯電話。
私はゆっくりと息を吐きながら、キッチンから出て机の上の携帯を手に取った。
画面には「Mail reached」の文字。

こんな朝から一体誰だろう?

私は携帯を操作する。
タイトルはなし、送り主は……

「……アリス」

私はメールを開いた。

<おはようございます。寝てました?>

短い本文に私は眉をひそめた。
正確には、彼女からメールが来たことに対してだったりする。
それほど珍しいことだった。

彼女からメールをしてくることも。
私が寝てるか起きているかわからない、起きていたとしたら忙しいであろう時刻に連絡を入れてくることも。

                    アイリス
私は返信を返さず、そのままメールを閉じ、Irisと表示されている彼女の携帯の番号を呼び出しコールキーを押す。

私は何を焦っているんだろう?
コールが鳴っている間、何故だろう。時間が長く感じる。

『……はい』
「あ、」

コール音が止み、携帯からは彼女の声。
それを聞いたとたん、私の頭は真っ白になった。
あれ、私、何を言おうと思ってたんだっけ……。

『おはようございます。すみません、起こしてしまいました?』

いつもより少し固めなことが気に入らなかったが、彼女の声を聞いて私は少し落ち着いた。
この声の感じは、仕事が終わった後なんだろう。でも、それだけじゃないような……。
プラスアルファとして、何かあったのかな?
私は軽く息を吐いて、彼女の問いに答える。

「……ううん、今日は少し早めに起きてたから、大丈夫」
『今日は仕事が入っているんですか?』
「うん、お昼から2つだけね」
『そうですか。それじゃあ……』
「ねえ!今、私、朝ごはん用意してるんだけど、よかったら一緒にどう?美味しいジャムがあるんだ!!」
『…………』

私は彼女の言葉を遮って捲くし立てた。
仕事終わりのアリスを、私は独りにしておきたくはなかったし、何より私が会いたいと思ってしまった。
きっとあの夢のせいだ。

「今どこにいるの?用意しておくから!」
『……分かりました』
「え、来てくれるの!!」
『はい。……白状すると、私も会いたいな~とか思ってたので』
「え、」

珍しいことが立て続けに起こっている。
滅多に聞くことが出来ない、アリスの照れて小さくなった声。

その一言が、私を掬い上げてくれた。

「アリスがそんなこと言うなんて、珍しいこともあるものね。……でも、嬉しい!!」
『……20分ぐらいで着けると思います』

小さくクスリと笑う声の後、彼女は到着予定時刻を告げた。
20分、ということは、私の家に一番近い家にいるのか。

「分かった!じゃあトーストと紅茶、それにジャムも、用意して待ってるから!」
『分かりました。お願いします』

「それじゃあ」と言って私は電話を切った。
しばらく携帯を見つめ、ゆっくりと息を吐く。

「よし!」

私は携帯を元の場所へ置き、キッチンへと戻る。
沸騰しかかっていたミルクの火を弱め、冷蔵庫から出したミルクを足す。
そしてパンをもう1つ出す。

さっきまで重たかった気持ちが、少しだけ浮上した。
昔も今も、



私を救ってくれたのは彼女



(ん、このジャム美味しい)
(でしょー?……で、何かあったの?)
(……バレました?)
(アリスのことはお見通しなのよ~、私)
(……そうですか。まあ、大したことではないんですが、ただちょっと不愉快な人にあって……)
(不愉快な人?)
(おまけに、それよりも不愉快な人間に会いに行かなければならなくなったんで、ちょっと気分が沈んでたんです)
(?誰?)





+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++




こんばんは、渡月です。

今まで読んでくださっている方々が、何時にご覧になってるかわらかなかったんで、
「こんにちは」と言っていたんですが、ここの背景が月なので
「こんばんは」にしようと思います。
ということで、


こんばんは、渡月です。←


ただいま、小説モドキ強化月間中と宣言して早1ヶ月以上……
誰だ、1日を24時間なんて決めたのは!!
誰だ、学校を週5日にしたのは!!


と、文句を言ってもしょうがないです。
前回宣言したとおり、月間といいつつ月間ではない強化月間。
今回は、殺し屋さんのご友人さんメインで書いてみました。
これは閑話的な話にしようと思ってたので短くしました。
……はい、したつもりです。

ここで少し補足を。
殺し屋さん、名前が2種類になってるんですが、それはまた後日談ということで。←
そんな謎多き殺し屋さん、仕事後少なくとも1日は、
この友人に会ったり連絡を取ったり自分では必ずしません。
なので友人さんは珍しがっていたんです。
それだけ夜にあった怪盗さんと"あの男"にイライラしていたというか、
ムカムカしていたというか……、
耐えられなかったんでしょうね~(笑)


なので、次に書く話も殺し屋さんのお話しで、今度こそ例の"あの男"が出てきます。
そして長くなる予定です。
そしてその分、遅くなると思いますorz
なので、またお時間があればチラッと覗いて、出来上がっていたら読んでやってください。


それでは、ここまでお付き合いください、ありがとうございました。
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