月灯りの下
闇の世界に差し込む光を追い求めて
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俺たちの出会い
あの時の俺は、"ひとり"だった。
あの日も、俺はそこを目指していた。
俺の世界への扉を開くと誰かの話し声。
近づいていも誰も俺には気付かない。
どうやらこれからの予定について話しているらしい、何か奢れだの、ゲーセン行こうだのと話している。
そんなどうでもいい会話なら他所でやって欲しい。
―――――――ここは俺の居場所なんだから。
『おい』
俺が声を掛けると、中心に居た男が振り返る。
「何だテメェ」
『そこをどけ、邪魔だ』
そう言いながらその男に近づくと、ふと目の端に何か映った。
何かを確認しようと目をやると、それと目があった。
それは間違いなく人だった。
こいつ、どこかで……あぁ、確か同じクラスにいた気がする。
さっきここに入った時、倒れてる連中が居たが、どうやら寝ているわけではなかったらしい。
っていうか、こいつ相手にこんなに人数を用意したのか。
『たったひとりをこんなに大勢でやってるのか、情けないな』
「あぁッ!!?」
「行き成り来てなんだなんだテメェ!」
中心に居た男が近づいてくる。
「テメェ、一応女だろ!?だったら大人しくしとけや!!」
『五月蝿い、こんな近くで騒ぐな。それに、「一応」って何だ「一応」って。制服見て分かるだろうが。それともお前の目は腐っているのか?』
「ッ!!女だからっていい気になってんじゃねェぞ!!」
男は俺の胸倉を掴んできた。
あ~、面倒くさい。が、これも俺のためだ。
俺は男の右手首を掴むと一気に捻る。
「グハァッ!!?」
男は地面に転がっり奇声を上げる。
受身も取れないのか、こいつ。
『女とわかってて手を上げるか。多人数で袋叩きといい、ホント、男としても人間としても腐ってるな、根性が』
吐き捨ててやった後、沈黙が少し続いたが奴の仲間ががなりだす。
「テ、テメェ!!何しやがった、この女!!」
『何だ、見えなかったか?投げたんだよ。そんなことより、お前らこいつとそこら辺で寝てる奴らを連れてさっさとどけ。ここは俺の場所だ』
先程投げた男の肩を軽く蹴って、さっさと連れて行けと示す。
が、相手はそうは取らなかったらしい。
「行き成り現れた女が何言ってやがるんだ!!」
「ふっざけんじゃねェ!!」
「いつからお前の場所になったんだ!」
そう言って俺に向かってきた男たちを、結局俺は全員伸す羽目になった。
『まったく、さっさとどけばいいものを』
なんだだかんだ言ってあっけなく伸された奴らの隙間を通り、さっきから俺を見ているクラスメイトに近づく。
『おい』
そう声を掛けても何の反応もせず、俺を見続けてくるそいつ。
『動けるのか?動けるのなら少しずれるかどいてくれ』
「あ、えっと……」
答えに言い淀んだそいつを改めてみると見ると、かなり派手にやられていることに。気付く
これならすぐには動けない、か。
『なんだ、まだ動けないのか。……しょうがないな』
俺はそいつの肩を掴んでずるずると引き摺る。
やっぱ同年代の男子は重いな。
「あ、あの~?」
声が掛けられたが無視し、少し移動したところで俺は手を離し、さっきこいつが倒れていた場所まで戻り寝転がる。
俺とそいつは、少し離れて並ぶように寝ている形となった。
俺は流れる雲を何となしに見上げる。
視線を感じるが気にしない、というか慣れた。
周りからすると、ひとりでいたがる俺は珍しいらしい。
ま、あんなところ見たから余計か。
「あ、あの!」
『ん~?』
声が掛けられ適当に返す。
「助けてくれて、ありがとう!」
『いや、別に。助けたわけじゃない』
これは事実。
俺は自分の居場所を確保したかっただけなんだから。
「……そ、そういえば、僕たちって同じクラスだよね?」
そっからこいつのつまらない質問が口から放たれるが俺は適当に答えた。
適当にあしらっとけば勝手に戻るだろうと、その時は思っていた。
「さっきすごかったね。強いんだね、君」
『お前だって、俺が来るまでにあの人数伸したんだろ。なら十分お前もその部類だろ』
「そ、そうかな。でも僕は、君みたいに綺麗には戦えなかったな~。ま、戦ってる時だけが綺麗だったわけじゃないけど」
『……は?』
こいつは今、何て言った?聞き間違い、いや幻聴か?いや、そんなことはどうでもいい。
俺は上体を起こしそいつを見る。
「あ、やっと見てくれた」
『……お前、今何て言った?』
「綺麗だって言った。最初に聞いた声も、歩く動作も、流れるような動きも、空を見上げてる横顔も、全部」
『……お前の目も腐ってるようだな』
「酷いな~」
苦笑するそいつを無視して空に視線を戻す。
何なんだ、こいつは。意味が分からない。
「……ねぇ、さっき『ここは俺の場所だ』って言ってたけど」
『あぁ、ここは俺のお気に入りの場所であり、俺の居場所』
「居場所?」
『ここしか、俺の居場所はないから』
俺はひとりでいることで、自分のいるべき場所である居場所を失くしていた。
けど、ようやく見つけたんだ。
そこは滅多に人は入ってこない、世界の音が遠くに聞こえて自分だけの世界にいると思える場所。
ここが自分の居場所だと、思える場所。
「じゃあここにはよく来るの?」
『あぁ、だから"いない"だろ』
教室という空間は好きじゃない。
あんな人をまとめた場所に押し込まれていると思っただけで息苦しい。
だから俺はよく教室を抜け出した。
それを気にする者も咎める者は誰も居なかった……先生を除いては。
職業柄、放っておきたくても放っておくことが出来ないんだろう。
気の毒な職業だ。
「じゃあここに来てたんだ」
『友達がいるわけじゃないし、空が好きだし、ひとりが好きだから』
俺はひとりが好きだった。
というより、ひとりでいるのが当たり前だった。
友達が出来ても、そこには壁を感じていた。
何処か違う。俺と、この人たちと。
別に自分を特別視したいわけじゃない。
けど、そんな気がして仕方がなかった。
"相容れない、手の届かないような遠い存在"
そんな風に、眩しいものに見えていた。
それは友達に限って言えたことじゃない。家族にもそうだ。
幼い頃からひとりでいるのが当たり前だった。
当たり前だと思っているから、ひとりでいても何の疑問も持たなかった。
でも、兄弟がひとりにされていないのを見て、自分が"ひとり"であることを認識した。
そんな兄弟を羨ましいと思い、憎いとも思ったけど、自分には複数は合わない、"ひとり"が一番いいのだ、それもまた真実であり、おれはそれを理解した。
"空が好き"と言ったが半分嘘、嫌いでもある。
どれだけ頑張って手を伸ばしても、決して手の届かない存在。
だから余計な夢を見る必要がないと教えてくれる存在。
それが"空"。
「……ねぇ、僕もこれからここに来てもいいかな?」
『何だ、行き成り』
「ダメ、かな?僕は君の事、もっと知りたいんだ」
"知りたい"?俺を?何のために?
『……俺の事なんか知ってどうするんだよ』
「どうするって言われても困るけど、気になっちゃったから。惹かれたんだ、君に。だから、知りたい」
……そんなこと、初めて言われた。
こういう時は何て返せばいい?
分からない、言っている意味も、返事の仕方も。
――――――――――でも、嫌じゃないと思った。
『……そういうの、何て答えればいいんだ?』
「ん~、僕に訊かれてもなぁ。取り敢えず、ダメかな?」
『別に、俺の邪魔じゃなければ構わない』
「ありがとう!」
『………』
そうだ、俺の邪魔にならなければいい。
俺の世界が守られればいいんだから。
そう思って言った言葉だったのに、そいつの笑顔に毒気を抜かれた。
本当に、意味がワカラナイ………
それからそいつはここへ来るようになった。
あの日も、俺はそこを目指していた。
俺の世界への扉を開くと誰かの話し声。
近づいていも誰も俺には気付かない。
どうやらこれからの予定について話しているらしい、何か奢れだの、ゲーセン行こうだのと話している。
そんなどうでもいい会話なら他所でやって欲しい。
―――――――ここは俺の居場所なんだから。
『おい』
俺が声を掛けると、中心に居た男が振り返る。
「何だテメェ」
『そこをどけ、邪魔だ』
そう言いながらその男に近づくと、ふと目の端に何か映った。
何かを確認しようと目をやると、それと目があった。
それは間違いなく人だった。
こいつ、どこかで……あぁ、確か同じクラスにいた気がする。
さっきここに入った時、倒れてる連中が居たが、どうやら寝ているわけではなかったらしい。
っていうか、こいつ相手にこんなに人数を用意したのか。
『たったひとりをこんなに大勢でやってるのか、情けないな』
「あぁッ!!?」
「行き成り来てなんだなんだテメェ!」
中心に居た男が近づいてくる。
「テメェ、一応女だろ!?だったら大人しくしとけや!!」
『五月蝿い、こんな近くで騒ぐな。それに、「一応」って何だ「一応」って。制服見て分かるだろうが。それともお前の目は腐っているのか?』
「ッ!!女だからっていい気になってんじゃねェぞ!!」
男は俺の胸倉を掴んできた。
あ~、面倒くさい。が、これも俺のためだ。
俺は男の右手首を掴むと一気に捻る。
「グハァッ!!?」
男は地面に転がっり奇声を上げる。
受身も取れないのか、こいつ。
『女とわかってて手を上げるか。多人数で袋叩きといい、ホント、男としても人間としても腐ってるな、根性が』
吐き捨ててやった後、沈黙が少し続いたが奴の仲間ががなりだす。
「テ、テメェ!!何しやがった、この女!!」
『何だ、見えなかったか?投げたんだよ。そんなことより、お前らこいつとそこら辺で寝てる奴らを連れてさっさとどけ。ここは俺の場所だ』
先程投げた男の肩を軽く蹴って、さっさと連れて行けと示す。
が、相手はそうは取らなかったらしい。
「行き成り現れた女が何言ってやがるんだ!!」
「ふっざけんじゃねェ!!」
「いつからお前の場所になったんだ!」
そう言って俺に向かってきた男たちを、結局俺は全員伸す羽目になった。
『まったく、さっさとどけばいいものを』
なんだだかんだ言ってあっけなく伸された奴らの隙間を通り、さっきから俺を見ているクラスメイトに近づく。
『おい』
そう声を掛けても何の反応もせず、俺を見続けてくるそいつ。
『動けるのか?動けるのなら少しずれるかどいてくれ』
「あ、えっと……」
答えに言い淀んだそいつを改めてみると見ると、かなり派手にやられていることに。気付く
これならすぐには動けない、か。
『なんだ、まだ動けないのか。……しょうがないな』
俺はそいつの肩を掴んでずるずると引き摺る。
やっぱ同年代の男子は重いな。
「あ、あの~?」
声が掛けられたが無視し、少し移動したところで俺は手を離し、さっきこいつが倒れていた場所まで戻り寝転がる。
俺とそいつは、少し離れて並ぶように寝ている形となった。
俺は流れる雲を何となしに見上げる。
視線を感じるが気にしない、というか慣れた。
周りからすると、ひとりでいたがる俺は珍しいらしい。
ま、あんなところ見たから余計か。
「あ、あの!」
『ん~?』
声が掛けられ適当に返す。
「助けてくれて、ありがとう!」
『いや、別に。助けたわけじゃない』
これは事実。
俺は自分の居場所を確保したかっただけなんだから。
「……そ、そういえば、僕たちって同じクラスだよね?」
そっからこいつのつまらない質問が口から放たれるが俺は適当に答えた。
適当にあしらっとけば勝手に戻るだろうと、その時は思っていた。
「さっきすごかったね。強いんだね、君」
『お前だって、俺が来るまでにあの人数伸したんだろ。なら十分お前もその部類だろ』
「そ、そうかな。でも僕は、君みたいに綺麗には戦えなかったな~。ま、戦ってる時だけが綺麗だったわけじゃないけど」
『……は?』
こいつは今、何て言った?聞き間違い、いや幻聴か?いや、そんなことはどうでもいい。
俺は上体を起こしそいつを見る。
「あ、やっと見てくれた」
『……お前、今何て言った?』
「綺麗だって言った。最初に聞いた声も、歩く動作も、流れるような動きも、空を見上げてる横顔も、全部」
『……お前の目も腐ってるようだな』
「酷いな~」
苦笑するそいつを無視して空に視線を戻す。
何なんだ、こいつは。意味が分からない。
「……ねぇ、さっき『ここは俺の場所だ』って言ってたけど」
『あぁ、ここは俺のお気に入りの場所であり、俺の居場所』
「居場所?」
『ここしか、俺の居場所はないから』
俺はひとりでいることで、自分のいるべき場所である居場所を失くしていた。
けど、ようやく見つけたんだ。
そこは滅多に人は入ってこない、世界の音が遠くに聞こえて自分だけの世界にいると思える場所。
ここが自分の居場所だと、思える場所。
「じゃあここにはよく来るの?」
『あぁ、だから"いない"だろ』
教室という空間は好きじゃない。
あんな人をまとめた場所に押し込まれていると思っただけで息苦しい。
だから俺はよく教室を抜け出した。
それを気にする者も咎める者は誰も居なかった……先生を除いては。
職業柄、放っておきたくても放っておくことが出来ないんだろう。
気の毒な職業だ。
「じゃあここに来てたんだ」
『友達がいるわけじゃないし、空が好きだし、ひとりが好きだから』
俺はひとりが好きだった。
というより、ひとりでいるのが当たり前だった。
友達が出来ても、そこには壁を感じていた。
何処か違う。俺と、この人たちと。
別に自分を特別視したいわけじゃない。
けど、そんな気がして仕方がなかった。
"相容れない、手の届かないような遠い存在"
そんな風に、眩しいものに見えていた。
それは友達に限って言えたことじゃない。家族にもそうだ。
幼い頃からひとりでいるのが当たり前だった。
当たり前だと思っているから、ひとりでいても何の疑問も持たなかった。
でも、兄弟がひとりにされていないのを見て、自分が"ひとり"であることを認識した。
そんな兄弟を羨ましいと思い、憎いとも思ったけど、自分には複数は合わない、"ひとり"が一番いいのだ、それもまた真実であり、おれはそれを理解した。
"空が好き"と言ったが半分嘘、嫌いでもある。
どれだけ頑張って手を伸ばしても、決して手の届かない存在。
だから余計な夢を見る必要がないと教えてくれる存在。
それが"空"。
「……ねぇ、僕もこれからここに来てもいいかな?」
『何だ、行き成り』
「ダメ、かな?僕は君の事、もっと知りたいんだ」
"知りたい"?俺を?何のために?
『……俺の事なんか知ってどうするんだよ』
「どうするって言われても困るけど、気になっちゃったから。惹かれたんだ、君に。だから、知りたい」
……そんなこと、初めて言われた。
こういう時は何て返せばいい?
分からない、言っている意味も、返事の仕方も。
――――――――――でも、嫌じゃないと思った。
『……そういうの、何て答えればいいんだ?』
「ん~、僕に訊かれてもなぁ。取り敢えず、ダメかな?」
『別に、俺の邪魔じゃなければ構わない』
「ありがとう!」
『………』
そうだ、俺の邪魔にならなければいい。
俺の世界が守られればいいんだから。
そう思って言った言葉だったのに、そいつの笑顔に毒気を抜かれた。
本当に、意味がワカラナイ………
それからそいつはここへ来るようになった。
* * *
頬を撫でる風を感じて、俺は薄っすらと目を開ける。
また随分と懐かしい夢を見てしまった。
あれがいつの出来事だったか、俺の記憶では曖昧だ。
でも、その事実があったという記憶だけははっきりしていた。
あれからもそいつは俺に"普通に"話しかけてきた。
どうせこいつもいつの間にかいなくなるだろうと、最初はどうでもよくて適当にあしらっていた。
なのにあいつは気にしてないのか気付いてないのか―――おそらく後者だろう、ふらりと現れては適当に話をふって帰っていく。
いつから俺はそれを楽しみにするようになったのだろうか。
いつしかそいつは俺とここ以外、教室でも俺に話しかけるようになり、帰りまで一緒にいることが多くなった。
最初こそ、付きまとわれている感はあったが、それを嫌だと思っていない自分に驚いたのを覚えている。
正直今でも驚いている。
あんなにも"ひとり"が好きだったのに。
あんなにも"ひとり"が合っていたのに。
"独りは寂しいよ?" "誰でもいいから頼りなさい!"
そう言われたのはいつだったか、そう言ったのは誰だったか、もう知る術はない。
そう言った人たちも、結局は俺から離れていったんだから。
うわべだけの言葉。
"ひとり"ということが当たり前だった。
"寂しい"何て知らなかった自分。
そんな言葉に、思うところなんて何もなかった。
けど、今なら何となくわかる気がする。
それを否定する自分もいるし、すんなり受け止めている自分もいる。
わけが分からないのは相変わらず、か。
見上げる先には空。
あの時とは変わらず、好きで嫌いな存在。
その空に、何故か最近あいつがよぎる。
確かに、あいつも好きで嫌いな存在だ。
俺と一緒にいてくれる存在であり、俺の世界を壊す存在。
そんなことを考えていると―――――ガチャリ。俺の世界の扉が開く音がしたが、俺は無視を決め込むと、もう一度瞼を閉じた。
入ってきた人物の正体があいつなら、何でその言葉を最初に言うのはかは知らないが、いつものように"あの言葉"を言うだろう。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
長い、長いよ!!
しかも何これ、引っ張るだけ引っ張っといてまた続くのかよ!!?
と、自分で突っ込んでしまってますが(笑)
続きを楽しみにしてくださっていた方には本当に申し訳ないです。
……いないか、そんな奇特な人←
本当はこれで終わりにしようかと思ったんですが、続いちゃいました。
前後編の筈が+中編になってしまって……
まとめる力といいますか、文才がないとこれだからダメなんですよね;
けど、ちゃんと今度で終わらせます!絶対です!……多分!きっと!!(殴)
ここまで長々とお付き合いいただきありがとうございました。
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