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月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

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戦場の覚悟

前書き

というか、念のためご忠告を。

今回の話はグロイというか、流血表現があったりと、血なまぐさい感じになっております。

僕は基本的にそういうの平気だし、シリアス好きなんで
そういったことに鈍いんで、どこまでがボーダーラインかわからない人なんです。
まぁ、人によっても基準が違うんでしょうけど。

そしてさらに、いつもより長かったりします。

ということで、一応前書きという形で忠告させていただきます。


「平気だし、暇だから見てやっか」という人は、どうぞ読んでやってください。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


『……片付いた、か?』

私はぐるりと辺りを見渡した。

そこに広がるは夥しい屍たち。
地面は"それら″から溢れ出した液体で真っ赤に染め上げられており、元からそんな色だったのではないかと思うほどだった。

最初この場に立った時は、地獄絵図とはこういう光景を言うのだろうと思ったが、それも″日常″となってしまった今となっては、いつもと変わらない光景だった。

結局、立っている者もいなければ、生きている者の気配も感じられない。
私は息を大きく吐きながら体の隅々の力を抜いた。
そのせいか、今までの疲れや痛みがどっと押し寄せる。
立っているだけでも億劫だ。
私はその場に寝転んだ。

風が頬を撫でるものの、血を含んだそれは生暖かく、血や脂の匂いをたっぷり含んでいるもんだから、気持ちいいとは感じられなかった。


―――――――あぁ、今まで、生きていた奴らがいたんだな


そんなことを頭に浮かべながら、私は静かに目を閉じる。

風だけじゃない、私の体だって血や脂にまみれている。
それが自分のものなのか、はたまた敵のものなのか見当もつかないが、敵の方が圧倒的に多いことは確かだ。
顔にだって、まだ返り血が飛んだままだ。
けど、拭う気にもなれなかった。

今日もたくさん殺して、たくさん死んだ。
そして私は、まだ生きている。

「―――――――――――……ッ!!」

遠くから風に乗って、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
が、無視を決め込むことにした。

この声は、知ってる。
本当は、無事だったか、ちゃんと生きているか心配だった奴だけど、声がするということは少なくとも生きていることは確かだ。
しかも声はだんだん近づいている。
こっちは今まで疲れを感じぬよう、痛みを感じぬよう、ハイで戦い続けていたのだ。
テンションを落としてしまったので、反動が来てだるくてだるくて仕方がない。
これだけひとりで片付けたんだから、無視の一つや二つで罰は当たらないだろう。


*          *          *


俺は走って走って走り続けた。
そいつの名前を叫びながら、周りに人がいないかどうか確かめながら。
もちろん、刀は手にしたままだ。
そこら中屍だらけで生きている奴の気配しかないが、念のため、というやつだ。

あいつがどこにいるかなんてわからなかったが、とにかく敵の屍が増えていく方へと走った。
戦っている途中ではぐれてしまったあいつ。
まぁ、下手したら俺よりも強い奴だけど、心配になる。
なんせ周りには敵の屍がごろごろしてる。
これを一人で殺るとなると、さすがのあいつでも無傷では済まないだろう。

どんだけ走って、どんだけ名前を叫んだかわからない。
けど、やっと見つけた。
屍の中心にぶっ倒れてるあいつの姿。
名前を呼んで駆け寄ると、生きていることはわかった。
それに安堵したものの、今度は無視された怒りがこみ上げる。
俺たちは長い付き合いだ。
こいつが起きているのか寝ているのかなんてすぐわかる。

「オーイ、死んでるかァ?こんなところで死んでっと屍泥棒に遭うぞ~、襲われるぞ~、つうか襲うぞ~」

俺はそいつの顔を横から覗き込見んだ。


*          *          *


聞こえてきた声に薄っすらと目を開け、そいつの姿を捉えた。
白い羽織も髪も血の色に染まってはいるが、大怪我はしてないらしい。
私は気付かれないように、静かに息を吐いた。

『……勝手に殺すな、バカ。私がそんな簡単にやられるわけないだろう。それに、屍泥棒も来たら来たで殺してやる。ついでにお前も殺してそのバカを治してやろうか?』
「おうおう、怖いね~……怪我は」

人をおちょくるような言い方をしていたそいつは、真面目な声で言葉を投げてきた。

『大きなものはない。ただ、疲れただけだ』
「そっか、つうかその戦い方は止めろって言ってるだろ?しばらく動けないんだから」
『しょうがないだろ。この方が痛みや疲れで止まらなくてすむから早く片付くんだ』
「でもな~」
『……で、そういうお前は?』

話を逸らしたかったし、気になってたことでもあったので訊いてみる。
私が心配してやったというのに、このバカときたら、

「何?心配してくれてたの?」

ふざけた声ににやけた顔で返してきた。
その顔にイラッとした私は、横から覗き込んでいるそいつの腹に一発拳をくれてやった。


*          *          *


「ッ!!?」

思いっきり入ったそいつの拳のお陰で前かがみになり、自然に顔の距離も近くなる。
そしたらあろうことか、そいつは足を思いっきり振り起こし、俺の脇腹にヒットさせる。
結果、俺は痛みに悶えながらひっくり返り、頭を90度つき合わせて横になる形となった。
そいつはそれで満足したのか、ぱたりと足を地面に戻した。

「~~~~~ッ!!ちょ、ちょっと、俺も、それなりに怪我、してるんですけども!?」

死んじゃうよッ!?と泣きながら言うものの、

『自業自得だろうが、バカ。やっぱり死ねよ。むしろ私がこの場で送ってやる』

さっきよりも冷たい言葉が返ってきた。
え、この声、本気デスカ……?

「本気じゃないよね?それ」
『さぁな』
「………;」

俺も寝転んだせいでこいつの顔は見えないが、それはそれでよかったかもしれない。
こいつの声からして、確実に絶対零度の笑顔で言っているに違いない。

風が俺たちの頬を撫でていくが、血を含んだそれは生暖かく、血や脂の匂いをたっぷり含んでいるもんだから、走って火照った体にも気持ちいいとは思えなかった。


―――――――あぁ、今まで、生きていた奴らがいたんだな。そして、そいつらを殺ったのは、こいつ、なんだよな。


ふとそんなことを思ったが、それは俺も同じだ。
場所は違えど、俺もこいつと同じぐらい、こいつを探す前まで戦っていたんだ。

風だけじゃない、私の体だって血や脂にまみれている。
それが自分のものなのか、はたまた敵のものなのか見当もつかないが、敵の方が圧倒的に多いことは確かだ。
顔にも返り血は付いていたが、こいつを探している途中で乾き、走って掻いた汗でところどころ落ちていた。

今日もたくさん殺して、たくさん死んだ。
それはもう、敵味方関係なく、たくさんだ。
それはもう″日常″なのだが、俺はそんなふうに割り切れなかった。

「……今日も、たくさん死んだ」

気がついたら俺は、声に出していた。
こいつに言っても仕方がないのに。
こいつを傷つけかねないのに。
そんなこと、わかってるのに……

『あぁ、こっちも同じだ』
「……また、守れなかった」
『それも、同じだ』

俺の言葉は意に反して口から出て行く。

「……仲間は死んで、俺は生きている。守りたいと思った者が死んで、守ろうと思った者が生きてる……何でだ?」
『確かに私たちは、周りに比べれば少しばかり強いかもしれない。だからと言って、完全というわけでもない。加えてここは、誰が死んでもおかしくない場所だ。守れない奴の方が、多い』

当たり前だという無感情の声。
それはいつものことで、こいつは感情があまり表に出ない性分なのに、今日の俺は耐えかねてしまった。

「……だから、割る切れって言うのかよ……ッ!」

俺の声は自分でも驚くほど低かった。

『割り切れとは言わない。私だって悔しいからな。でも、どうしようもない時だって、あるんだ。私たちは、どれだけ恐れられたって、人間なんだから。限界があるのも、どうしようもないことなんだ』

――――――――――あぁ、こいつは、俺よりも年下のくせに、

『でも、私たちは独りでみんなを守ろうとしているわけじゃない。独りでは守れる人数も限られてくる。
だから、2人で守ればいい。少しでも多くの奴らが生き抜いていてもらうために。
そのために私は、お前と共にここに立っているんだ』

大人、だな――――――――――。

『それに――――――……」
「?」
『簡単にくたばるあいつらもあいつらだ』
「はい?」

予想だにしない言葉に思わず訊き返した。

『「ここで死ぬ覚悟は出来ている」とか「国のために死ねるなら本望だ」とか、変な覚悟をしているから、みんな潔く死んでいくんだ!そんな覚悟、そこら辺に捨ててしまえばいいんだ!』
「オイオイ、お前な~;」

さすがに死んだ奴が可愛そうだ。
そういう覚悟をせざるを得ない状況なのだから。

『そういう覚悟がなければ、たとえ地獄へ落ちようが、空へ逝こうが、奈落のそこに落ちようが、戻ってくるだろ?死ぬに死ねんだろ?無駄に覚悟があるから、無駄に死ぬんだ!』
「………」

こいつは大人だと思ったけど、やっぱりまだまだ子どもらしい。
むちゃくちゃなこと言ってやがる。
体が満足に動く状態なら、きっと手足をバタつかせていただろう。

けど、そうかもしれないとも思ってしまった。
病も気から、何て言葉があるくらいだ。
そんな覚悟より、生きる覚悟を持っていた方が長生きできるのかもしれない。

『なぁ、お前も持ってるのか?そんなふざけた覚悟』

不意にそんなことを訊かれて、俺の意識は浮上する。

「それ、″はい持ってます~″って言いにくくね?ま、残念ながら俺は持ち合わせちゃァいねェよ。俺が持ってるのは、どんなになろうと生きる覚悟だ」
『……そ、っか。ならいい』
「お前は?」
『……わからない』

そいつの声は少し寂しそうに響いた。


*          *          *


私が持っている覚悟は、ふざけた覚悟なんかじゃない、それは確かだ。
けど、こいつの言ったような覚悟なのかはわからない。
私はこいつが心も体も傷つくところを見たくなくて、だからこいつがやろうとしている事を私もやろうと思った。
だから私は、戦場に立っている。

私の世界を広げてくれたのはこいつだ。
こいつがいなくなれば、私の世界も終わってしまう。
私はまだ、こいつに創ってもらった世界を見ていたい。

たとえそれが、屍が広がるアカイ世界だとしても――――――――――。

そんな私にある覚悟って何だ?
わからない、私が持っている覚悟ってなんだろう?


「わからないならわからないで別にいいさ」

思考の波にうも埋もれていた私は、そいつの声に引き上げられた。
目だけでそいつを見ると、いつの間にか立ち上がっていた。
そして私の方へ振り返る。

「死ぬ覚悟だけじゃなかったら、俺は別に何でもいい。
俺はお前が生きていてくれれば、それでいいからな」

そういって私の横にしゃがみこみ、頭を撫でてくる
何でもいいなんて言ってくるとは思っていなかったせいで、私の思考は停止した。
私が驚いていることをいいことに、背中と膝の裏にそいつは手を滑り込ませて、いっきに持ち上げた。

『ッオイ!!何するんだ!!』
「そろそろ帰ろうぜ?俺腹減ったわ」
『そうじゃなくて!!何していると訊いているんだ!!』

これは世間一般に言う"お姫様抱っこ″というやつだろう。
正直恥ずかしい。こんなところを見られたら死んでしまう。

「どうせお前、まだ動けないんだろ?おんぶで落としたら困るからな~」

それを言われてしまうと何も言い返せないが、せめてもと抵抗してみる。

『……お前も疲れてるし、怪我もしてるんだろ?』
「邪魔でもねェし、足手纏いでもねェから大人しく抱かれてろ」

遠まわしに言ったつもりだったが、お見通しだったらしい。
ここまで言われてはもう抵抗できない。
こいつの体力をなるべく削らないように、こいつの傷になるべく障らないように、大人しくしている以外に道はないらしい。


*          *          *


抵抗を止めて大人しくなったこいつを抱いたまま、屍の道を歩き続ける。
いつもはこう屍ばかりだと、生きた心地が全くしないが、今は違う。

今は生きているこいつが俺の傍にいて、俺の腕の中にいる。
戦いの疲れやできた傷の痛みではなく、こいつの温もりが、俺が今生きていることを証明していた。
俺はそれが心地よくて嬉しかった。

『……なぁ』

か細い声がした方を見ると、俺の羽織の胸辺りを握り締めながら俯いたそいつ。
こいつのこんな声、初めて聞いたかも。

「……どした」
『………お前は、私の傍にいるよな?お前は、死なないよな?』

俺は目を見開いた。

俺は忘れてたのかもしれない。
どれだけしっかりしていても、どれだけ周りから恐れられるほど強くても、こいつはまだ子どもで、女の子なんだ。

「安心しろ、俺は何があってもお前の傍にいるし、お前を置いて死なねェ……俺の守りたいもんの一番はお前なんだから」

勢いよく顔を上げたそいつと目が合う。
と、すぐにまた俯いてしまった。

『……お前のそういうのをはっきり言うところ、私は苦手だ………でも、それはこっちも同じだ、バカ』

聞き取れるか聞き取れないかのちょっと不貞腐れたような声で呟かれて、俺は自然に口元が緩むのを感じながら岐路を辿った。



己の身を血に染めた武神と恐れられる男と鬼神と恐れられる子どもが、屍に血塗られた岐路を歩いていた。




+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


あとがき、という名の反省文

長ッ!!
自分で思ったほど長くなってしまいました;
そして暗ッ!!
自分で思った通りの暗さになってしまいました←

この話、本当は銀魂の夢小説にしようかと思ってた話です。ちなみに相手は銀時です。
でもサイトもないし、ブログなんで名前変換もなし、何より原作もなしという状況だったので、名前は両人とも伏せておきました。(アニメonlyなんで;)
最後の文で少しにおわせてみたんですが、お気付きになった方はいらっしゃったでしょうか?
はい、無理ですね、文才なくてスミマセンorz

ところどころ2人の気持ちや感じたことを被してみたところがあるんですが、たとえ場所が違っても、戦場という場所に立っている限り一緒に戦っている、というのを表現してみたかったんですが……;
はい、無理ですね、文才なくてスミマセンorz(2回目)

視点をコロコロ変えてみたんですが……何がしたかったんでしょうね;?(オイ)

とまぁ、色々と反省点はありますが、またやってみたいなぁなんて思っちゃってます。
その時は、「またやってや~」程度に付き合ってやってください(笑)

それでは、長々とお付き合いいただきありがとうございました。
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