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月灯りの下

闇の世界に差し込む光を追い求めて

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知りたい、

「あちゃー、遅くなっちゃったか~」

 もうすぐで夕暮れが見え始めるだろう頃。
 買い物を頼まれて出掛けたが、いつもよくしてくれるおばさんと、すっかり話し込んでしまった。まあ話し込んだと言っても内容は、ロルトさんはいい人だとか、ロルトさんは人気だから次の選挙はあの人で決まりだとかで、近々行われる選挙に向けて語られた、と言った方が正しいか。ロルトさんは最近人気がある政治家さんで、とてもいい人らしい。テレビで見たことがあるが、笑顔が素敵な人だったと記憶している。
 選挙近いし、一度ちゃんと調べておこうかな~と思いつつ、シエナは家路を急いだ。両腕に抱えた荷物は落とさないように。

「よし!近道しちゃおう!」

 そして、薄暗く細い横道に入った。が、それが間違いだった。

「……あれ?ここ、どこだっけ?」

 迷子になったシエナの頭には、引き返すという選択肢は用意されていなかった。さらについていないことに――――――

「あ、人だ!……すみませーん。ちょっと道に迷ってしまって――――――……」

 煉瓦の建物に囲まれた、先程よりも開けた道。
 見つけた人達は、一人を除いては皆、黒いスーツに身を包み、サングラス、黒い車をバックに話しをしていた。
 シエナが話しかけた瞬間、一斉に彼女を見た。

「……あれ?」




「な、なんで~!何で追い掛けられてるの?!」

 数人のスーツの男達が追って来る。理由は皆目判らない。が、「待て、そこの女!」と言っているところを見ると、どうやら道案内を名乗り出てくれている訳ではないようで。追いつかれた場合も、余りいい結果になる気はこれっぽっちもしないことは判った。

「も、何で……?」

 その時響いたエンジン音と、目の前に現れた眩しい光。

『そのまま動かないで下さい』

 横向きに止められたバイクに跨がっていたのは、ゴーグルをした黒髪の人物。
 突如、後方から男達の悲鳴。振り返れば、男達がうずくまって悶えている。

『何やってるんですか、早くこっちへ!』
「あ、はい!」

 バイクの後部座席には、後輪の横に荷物がかけられるよう、鞄がぶら下げられている。その中の右側に荷物を入れるよう指示され、従う。頭にヘルメットが被せられた。
 黒い車が角を曲がって姿を現した。
 シエナが後部座席に座るのを確認すると、

『しっかり掴まってて下さい』

 バイクを発進させた。

「わ!あ、あの!助けていただきありがとうございます!」
『別に構いませんよ、たまたま通り掛かっただけですから』
「ん?あれ、その声……」

 前のミラーを見て、運転している人物の顔を窺う。よくよく見れば知った顔。

『シエナ、誰かも判らずに助けられたんですか?まったく、あなたにとって良からぬ人だったらどうするんです』
「え、あ!アリス!?」
『今はアイリスです』
「何でここに?それにどうしたの、その髪?真っ黒!いつもは綺麗な銀灰色なのに」
『……さっきも言ったように、野暮用です。髪は、仕事用です』

 チラリと、アイリスはミラーを見て、ハンドルを少し左にきった。直後、先程までタイヤが走っていた場所の地面が爆ぜる。

『下手くそ』

 アイリスはグリップから右手を離し、太腿から黒い物を抜き出した。腕を後ろへと伸ばす。

「?」

 ミラー越しに狙いを定め、撃った。ぱすん、という音がしたと思ったら、パァンという大きな音とブレーキ音が轟く。まさかと思い恐る恐る後ろを振り返ると、追い掛けてきていた車が壁に激突していた。
 アイリスは拳銃を仕舞う。

「ちょ、何やって……!?」
『撃ってきたのは向こうが先です。……それに、黙ってないと舌噛みますよ』
「へ?」

 車の脇を通り抜け、3台のバイクが追跡を引き継いだ。

「うそー!!」
『本当です』

 チラリとミラー越しに窺うと、完全に怯え顔のシエラ。やはり一般人にはこういうのは刺激が強すぎるのか……。

『連中が何者か判りませんが、一度撒いた方がよさそうですね』
「ま、撒くって、アイリス!あなた免許持ってたの?」

 全然知らなかったんだけど!というシエナに、

『知らないって……、まあ確かに免許は持ってますよ。偽造ですけど』

 アイリスはしれっと答えた。あまりにも自然だったため、自分の耳を疑ってしまう。

「はい?」
『私は免許、取れませんから。でも運転技術は師に叩き込んでもらいましたので、ご安心を』
「いや、そういう問題じゃ……」
『ほら、スピード上げますよ』

 アイリスはアクセルを全開にした。向こうもスピードを上げて来る。

「なーーーーーい~!!」

 アイリスは叫ぶシエナに容赦なく、スピードもそのままにハンドルをきった。

「い……ッ!しちゃ噛んや……」
『………』

 ミラー越しにバックを確認する。相手はスピードを落としたらしい。お陰で間合いはかなり広がったが、全員無事だ。1台ぐらい事故ってくれればよかったものを。アイリスは舌打ちした。

『……シエナは、確かジェットコースター好きでしたよね?』
「うん?何っていうか、恐いもの乗りたさ、みたいな」

 あまりシエナを乗せて、やりたくはなかったが仕方がない。彼女がいる以上、今は逃げるしかない。

『では、今からやりに行きましょう』
「はい?」
『行きますよ』
「え、あ、うん……!」

 訳は全く判らないままに返事を返す。
 その後は、細い路地を左右に曲がりながら奥へ奥へと進んでいく。先に見えてきたのは廃ビルの群れ。そのまま進めば、目の前にはとある廃ビル。
 アイリスはサイレンサー付きの拳銃を抜く。入口の廃れた鉄の扉と錠に数発撃ち込み、そのまま入口目掛けて走りつづける。

「アイリス!前!前!」
『突き破ります。その後は階段を昇るので、ついでに歯を噛み締めておいてくださいね』
「本気?!」
『それしかありませんか、ら!』

 前輪が持ち上げられ、目をきつくつむり、目の前の腰にしがみつく。

ドバンッ。

 ヘルメットのお陰で少しはマシだが、大きな音が耳を響く。続いて階段を昇っているのであろう、ガタガタと振動に揺られ、時折体が傾ぐ。後ろから同じような音が微かに聞こえた。
 どれ程上に来たのだろうか。再び鉄製の扉に何かがあたる音がし、再び前の腰が上がる。

ドバンッ。

 眩しい光が瞼越しに目を刺激し、うっすらと目を開けた。

『ほら、シエナ!ジェットコースターですよ』
「え、嘘、ジェットコースターってこれ……」
『行きますよ』
「ジェットコースターって言わなーーーーーい!!」

 目の前に広がるのは柵と大空。アイリスはそのまま前輪を上げ、柵を突き破ると大空に踊り出た。2人の背筋をゾクゾクとした感覚が撫でる。
 ミラーで確認するが、誰ひとりとして空中まで追い掛けて来る者はいない。狭い屋上だ。そこにバイクが3台。Uターンするのも一苦労だろう。

『いい眺め』
「キャーーーッ」
『着地しますよ』
「…………ッ」

 飛び出したビルの向かい側には、そのビルよりも低い廃ビル。シエナは思わずアイリスにしがみつく。屋上に柵はなかったため、難無く後輪から着地した。

『階段です』

 宣言通り、階段を下って行く。出ていく入口を同じ様に破壊して表へと出た。
 近くで響くバイクのエンジン音はひとつになったが、これはほんの時間稼ぎにしかならない。アイリスはその場を後にした。



 しばらく走り、表通りが近くなった頃、アイリスはバイクを停めた。ゴーグルを下ろす。

『降りてください』

 バイクをそのままに、シエナの手を取り足早に裏道を進む。

「ちょっと、アイリス!どこいくの?」
『いいから』

 ある建物の裏口で立ち止まり、アイリスは壁に寄り添った後、辺りを見回した。シエナも倣ったが、人っ子一人いなかった。
 アイリスが裏口をノックすると、中から「はーい」と返事が返ってきた。直後、素早く扉を開くとシエナを放り込み、扉を閉めた。

「わっ」
「ん?あれ、誰?」
「へ、あ、え~っと……」

 放り込まれた薄暗い部屋には、長髪で綺麗な女性が立っていた。

『私です。すぐ戻るので、その子をよろしくお願いします。……一般人なんで、余計なことは吹き込まないように』
「は~い」
「ちょっと!アリス?!」
『アイリスです』

 律儀に訂正すると、アイリスはその場を後にした。

「――――――ヘェ、"アリス"の事を知ってるんだ~」
「え?」

今、"アリスの事"って……。

「ほら、こんなところにいつまでも座ってないで、明るいところでお茶でもしましょ」

 女性は手を差し出した。



 遠くから聞こえるバイクの音が、まだ連中が自分達、というかシエナを諦めていない事を教えている。
 彼女から先程聞いた話によると、遠くから声をかけただけで何も見えなかったし、話していた様だが聞こえなかったと言っていた。何故そこまで執拗に追う必要があるのか。考えられるのは、ただひとつ。

『やましい事をしていた、からでしょうね』

 まったく、よく巻き込まれる人だ。
 愛車の後輪に取り付けられている鞄の中からポーチを取り出し、腰に巻いた。そしてゴーグルを上げ、愛車に跨がり、標的のバイクの音の方向を確認するとアクセルを開けた。



「くっそ!あのガキ共、どこ行きやがった!」
「屋上から屋上に飛び移るなんて馬鹿なことしやがって!」
「さっさと捜さねェと、俺達がヤバい!」
「判ってる!!」

 集まって相談している男たち。その内の一人の耳に、

「しっ!あの音は……」

 今まで聞こえなかったエンジン音が届いた。

「奴らか!」
「丁度いい。飛んで火に入る何とやら、だな」

 男たちは近付いて来る事実に喜び勇んだが、その人物がまさか自分たちの命を狩ろうとしているとは思いもしなかった。

「エンジン音はここら辺からしている」
「近くにいるはずだ。気を抜くだ」

 今まで口を開いていた男は、額に穴を開けられた。バイクごと倒れる仲間を横目に、残りの2人が自分達の背後を振り返った。

『一人』

 先程追い掛けていたバイクに跨がった運転者の手には、サイレンサー付きの拳銃が握られていた。
 それを見て、ようやく仲間が撃たれたことを認識した。

「テメェ!!」
「ッ、このガキ……!」

 仲間を殺されたことにより激情した男たちは、バイクの向きを変え、撃ってきたガキ-アイリスへと向かって行く。それぞれが拳銃を抜き、発砲。
 しかし、拳銃を抜いた時点でアイリスはエンジンを吹かしており、飛んで来る弾を避けながら走らせる。左手でポーチのポケットから小さい機械を握り、右手で拳銃を仕舞う代わりにナイフを引き抜いた。男たちの間を走り抜ける瞬間。ナイフが走り、左手が振るわれた。

『二人』
「な……ッ?!」

 声をあげたのは、右側にいた男だった。先程まで怒りをあらわにしていた隣を走っていた男は、首から血を吐いていおり。
 そのまま声をあげることも、バイクを止めることもなく。近くの壁に突っ込み、炎上した。

「チクショー……!」

 生き残った男は、服に何かを付けたままバイクを走らせて建物の角を曲がり、姿を消した。
 アイリスはそれを見送ると、一人目の男のバイクに近付いていった。




「何だと?!始末し損ねただと?!」
「すいません!しかしあの女を助けた奴がデキる奴で……!」

 前輪はパンクをし、前方の形が変わってしまっている黒い車。その前で高いスーツを着た男と、バイクに乗っていた男が話していた。高いスーツを着た男の回りには、黒いスーツにサングラスをかけた男が3人。

「くっそ!俺が薬の密売に手を染めてる事があの女から洩れればお終いだ!さっさと戻って殺して来い!その野郎もな!」
「は、はい!」

 次の選挙に差し支えたらどうするんだと、ヒステリックに怒鳴り散らす男。それに恐々とする男たち。
 その時。

バカン。

 という金属を何かが貫く音がしたと思った途端。
 前輪はパンクをし、前方の形が変わってしまっている黒い車は、炎を吐き出した。周りの男たちは、状況を理解する前に炎に消えた。




『なるほど、血眼になって探すはずですね』

 今を騒がす人気議員が犯罪に手を染めていることがバレれば、社会的に終わってしまうのだから。
 アイリスは覗いていたスコープから目を離し、傍らにある黒い小さな機械のボタンを押して、先程男に付けた盗聴器から拾った今の会話の録音を止めた。耳からイヤホンを外す。

『その前に、自意識過剰が仇となって終わってしまいましたが』

 先程、前輪はパンクをし、前方の形が変わってしまっている黒い車のガソリンタンクを撃ち抜いたライフルからスコープやバレルを取り、銃身を捩って分解。小さめのアタッシュケースの中に、いくつかの細い鉄の塊としてクッション材の上に並べていく。

『さてと。後は最後の仕上げだけ、ですね』

 パタンとアタッシュケースを閉じると、廃ビルの屋上を後にした。


*          *          *


「え~とぉ……ハジメマシテ!私はエリサ・キャロル!あなたは?」
「シ、シエナ・アトリーです」
「そ、ヨロシク!ささ、シエナ!こんな暗~い部屋からは退散して~」
「あ、あの……」

 シエナの背中をぐいぐい押して薄暗い部屋を進み、目の前に現れた扉を開けた。明暗のギャップに目が眩んだが、その部屋は、

「わあ……!」
「ようそこ!時計屋・マッドハッターへ!」

 時計が壁中に掛けられている部屋だった。

「"マッドハッター"って、『不思議の国のアリス』に出てくる帽子屋さんの?」
「そ、イカレ帽子屋なのに時計屋さんなの。洒落てるでしょ?」

 ウインクしてみせた女性・エリサと現在、

「ん~!美味しい、このケーキ!」
「でしょでしょ?こっちのケーキもどうかしら?」
「いいんですか?じゃあ一口頂きます!」
「どうぞ~」

 部屋の中心でお茶会をしていた。

「それにしても、素敵な時計に囲まれてするお茶会も素敵ですね」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない!……でもね、これ実は本職じゃないの」
「え、そうなんですか?」
「そうよ~。実はね~――――――」
『余計なことは言わないようにと、釘を刺したはずですが?』

 ちりりーんというドアに付いたベルの音とともに声が入って来た。

「あら、帰って来ちゃった。おかえりなさい」
「おかえり、アリ、アイリス」
『……ただいまです』
「野暮用は終わった?」
『はい、お待たせしました。シエナも、もう大丈夫ですよ。安心して外に――――――』
「ねぇ、生きてるよね?あの人たち」

 机に近寄ったアイリスの袖をちょい、と摘んで窺って来るシエナ。瞳が不安に揺れている。
 その色が理解できなくて。何て返せばいいのかわからなくて。でも。

『関係、ないでしょう』

 ただ、"殺したかもしれない"と言ってはいけないような気がした。

「アイリス……!私のために、したの……?!」
『何を馬鹿なことを。私はあなたの依頼を受けた覚えはありません。襲ってきたから、それを排除した。ただそれだけのことです』

 アイリスは素っ気ない態度で、やんわりと摘まれていた指を解くと、シエナたちがこの店に入って来た扉の前に来た。

『今から私の用事を済ませます。そこでおとなしく待っててください』
「ちょ、アイリス!」

 シエナが音をたてて立ち上がったが、アイリスは変わらない。

『行きますよ、エリサさん』
「……はいはい」

 溜息を吐きながらエリサも立ち上がり、扉へ向かう。アイリスは扉を開けた。

「……ッアリス!!」
『……アイリス、です』

 バタンと、扉は音をたてて二人の世界を隔てた。



「よかったの?」
『……生きてる世界が違いますからね。はじめから、理解されるとは思ってません』
「だったら嘘でもつけばよかったのに~」
『バレますよ、すぐに。相手は人気政治家・ロルト氏だったんですから』
「そんな大物、殺っちゃったの!?」
『詳しくはテレビで。さっさと本題に入りますよ』

 暗い部屋、ごちゃごちゃとした作業机の上に、SDチップを置いた。

「ありがとー!!どうだった?威力の程は」
『言われていた部屋と同じぐらいの所で使いましたが、数人生きていました』
「そっかー。どれどれ」

 棚を漁り出してきた機械にSDチップを入れ、機械から伸びるイヤホンを耳に入れた。

「ん~!いい音!いつ聞いても最高ね、この重低音!でも、やっぱりもう少し殺傷能力を上げるた方がいいわね。……あ、アイリスの声。可愛い~!ほら!」
『…………』
「アイリス?」
『――――――あ、すみません。何ですか?』
「アイリスの可愛い声聞く~?って言ったの。どうかした?」
『ベルが鳴ったので……。いえ、それより私の声はいいですから』

 耳に近付けられたイヤホンからは、いつかのグリーブスファミリーでの仕事の時の音が流れている。

『でも、流石ですね。音だけで性能が判るなんて』
「ま、自慢の作品ですからね!アイリスこそ、なかなかの仕事っぷりじゃない、聞いてる限り。ライルも喜ぶんじゃない?弟子の成長を」
『そうだと、嬉しいです』
「名前で呼び合える友達ができたって言えば、もっと喜びそうだけど?」
『……』

 少し嬉しそうにした色は、あっという間に複雑な色に変わった。

「珍しいじゃない。"アリス"の名前を知っている、しかも普通の女の子。……どういう心境の変化かしら」
『……成り行きで、自分でも、よく、判りません』
「ふ~ん……?」

 アイリスの顔を窺うが、本当に判っていない、けど、どこか悪戯が見つかった子どものような顔をしていた。
 きっとアリス自身、罪悪感や迷いがあるのだろう。同じ年頃の普通に接して。

「ま、喧嘩と仲直りも友達がいて出来ること。大切にしてあげなさい」
『……はい』
「今のところ試したい爆弾もないけど、アイリスはいる?」
『いえ、私も今はいりません』
「そ。また入り用になったらいらっしゃい。友達と遊びに来てもいいけどね。ケーキ用意して待ってるわ」

 悪戯っ子のような笑みを浮かべウインクをしてみせる。そんなエリサにアイリスは、

『はい』

 苦笑で応えた。

 時計屋の方に戻ると、シエナはいなかった。


*          *          *


 夕暮れに染まった街。
 時計屋・マッドハッターから何とか家路に着いたシエナは、昼間買い物に訪れた商店街までたどり着いた。

「あら、シエナちゃん!こんな時間にどうしたの?」
「いえ、ちょっと……」

 苦笑で返したシエナは、先程買い物の時に話していたおばさんに再び遭遇した。

「ねぇねぇ、シエナちゃん。さっき話してたロルトさん、シエナちゃんと別れた後に事故に遭ったって知ってた?」
「え、事故、ですか?」
「そう!でも驚くのはそこじゃなくて!あの人、麻薬の密売に手を出してたらしいのよー!」
「ま、やく?」
「そう!しかも、取引を誰かに見られたみたいでね?その人まで口封じに殺そうとしてたらしいのよ~」

 ……あれ?なんかそんな話し、ついさっき経験した気がするのは気のせいだろうか。

「あ、あの!それって目撃者の人が警察の人に言ったんですか?」
「それがね~。事故現場に消防とかが着いた時に、現場の傍にあったらしいのよ。テープが!そこにロルトさんたちの会話が録音されていて、真実が明るみになったみたいよ?テープと一緒に麻薬も置いてあったみたい」

 誰がやったのかしら?というおばさんの問答に出た答えは、

「アリス……」
「え?」
「あの、ロルトさんって、亡くなったん、ですか……?」

 恐る恐る尋ねるシエナ。

「何とかギリギリ一命は取り留めたみたいよ?意識が戻ったら事情聴取が始まるって言ってたから、まだ意識は戻ってないみたいだけど」
「そう、ですか」
「選挙前に判ってよかったものの、あんなにいい人だと思ってたのにねー。裏では何してるか判ったもんじゃないっていうのも恐いわよね~。……あれ、シエナちゃん?」

 シエナは心ここに在らずといった感じで歩みを再開していた。

「殺して、なかったんだ、アリスは……」

 教会に帰ると、シエナがアイリスに預けていた買った荷物が届けられていた。

 私は、アリスのことを判ろうとしていなかった。
 何も知らずに、決め付けて。
 だから彼女を傷つけてしまった。
 知りたい、

あなたのことが知りたいよ……


「アリス……」

 だから、私は会いに行くよ。
 あなたの、お師匠さんに。





+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++





こんばんは、渡月です。
今回は『血塗れアリス』です。
何がしたかったのかよくわからないorz←


あまり詳しく書かなかったところを補足させていただきます。
事故現場にあったという麻薬ですが、後ろから撃たれた人のバイクに近付いた時に
漁って、もとい、調べて、その時に回収済みです。
そしてアリスが『最後の仕上げ』と言った後で現場に向かい、
会話を録音したテープと麻薬をそっと置いてきました。

そして、車爆発によって数名が死亡、数名が重症になっております。
アリスにとっては、連中が死のうが生きようがどうでもよかったので、
生きたか死んだか判らない状態だったため"殺したかもしれない"となっています。

新キャラであるエリサ・キャロルについては、もう少し話が進んでから
設定の方にあげようと思います。


取り敢えず、「バイクでビルからビルに飛び移る」というのをやらせたかったんですorz
でも、これでようやく過去編へと向かうことができました。

今度は『study!』の過去編にしようかと思っていたんですが、
ここはやはり順番に、『モノ彩』をやってからにしようと思います。



それでは、本編の方も長くなってしまいましたが、
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
またのお越しをお待ちしております。
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